
経路の狂人 (アルゼンチン)
【 1995 〜 1999 】
1995年11月29日、アルゼンチン・ブエノスアイレス州マル・デル・プラタの州道55号線の脇で、マリア・エステル・アマロ (35歳♀) の遺体が発見される。
アマロは絞殺されており、背中には鋭利な物、おそらくナイフで『puta (″bitch(雌犬)″の意) 』という言葉が刻まれていた。
1996年12月1日、ウルグアイ出身の職人兼売春婦であったアドリアナ・ジャケリン・フェルナンデス (26歳♀) の裸の遺体が、国道226号線沿いの橋の下で発見された。
フェルナンデスも絞殺されており、当初、殺人罪で服役中であった元恋人が容疑をかけられたが証拠不十分だった為、起訴は見送られた。
1997年1月21日、警察が州道88号線沿いで人間の胴体と両腕を発見したが、その他の遺体は発見出来なかった。
遺体は最近行方不明になっていた地元の売春婦ビビアナ・グアダルーペ・エスピノサ・スピンドラ (26歳♀) と特定された。
同年5月13日、州道88号線沿いで売春婦マリエラ・エリザベス・ヒメネス (27歳♀) の遺体が発見される。
ヒメネスはスピンドラと同様に腕を切断されており、臀部にも切り傷があった。
死因は絞殺であったが素手で首を絞められていると判断された。
これまでの事件は同一犯による犯行とされ、遺体が州道沿いで見つかった事から『The Madman of the route (経路の狂人) 』と呼ばれるようになった。
1998年10月20日、『The Madman of the route』による最後の犯行が行われた。
被害者はマリア・デル・カルメン・レギサモン (25歳♀) で、バリオ・ラス・エラス近郊州道88号線で脚が見つかった。
ただ、残りの部位は発見されなかった。
『The Madman of the route』による犯行で間違いないとされるのは4件だが、1997年7月21日から1999年までの間、アナ・マリア・ノレス、パトリシア・アンジェリカ・プリエト、シルヴァーナ・パオラ・カラバニョ、クラウディア・ジャクリーン・ロメロ、ヴェロニカ・アンドレア・チャベス、ミルタ・ボルドン、サンドラ・ビジャヌエバ、メルセデス・アルマラス、フェルナンダ・ヴァロンの9人の売春婦が失踪しており (遺体は現在も発見されていない) 、この9件も『The Madman of the route』の犯行ではないかと考えられている。
これらの事件を受け、法務省は犯人逮捕に繋がる情報提供者に3万ペソ (約8万円) の報奨金を出すと発表した。
この報奨金は後に50万ペソ (約150万円) にまで増額された。
1997年にはブエノスアイレス警察は「連続殺人課」が創設され、FBIとフランス国家警察に助言を求めた。
最初の手がかりは被害者を最後に見た目撃者への聞き取り調査であった。
目撃者の中にはワインレッドのフォード・ギャラクシーが現場付近を走っていたという人が少なくとも2人おり、目撃者によると車を運転していた男は45歳くらいでがっしりとした体格、禿げ頭だが残った髪の毛は金髪であったという。
1997年6月26日、警察は州道88号線沿いにあるディスコのオーナー、ホセ・ルイス・アンドゥハルを容疑者と考え車を押収した。
警察は3日間車を徹底的に調査した結果、カーペットの上に血痕と黒っぽい毛髪が見つかった。
遺伝子検査の結果、これらは人間のものであったが、殺人や失踪とは関連がないと結論づけられた。
チャベスが失踪した日、チャベスはダンスクラブでレジ係として働いていたが、その姿が最後に目撃された姿であった。
数日後、チャベスの自宅で店の常連客の名前と電話番号が記された日記が見つかり、そこには警察官や検察官、政治家の名前があった。
これを受け、ペドロ・ホーフト判事は登録されている全ての番号の通話記録を調べるよう命じた。
同年8月9日、ホーフト判事はノレス、チャベス、カラバニョたちの失踪に関与したとして警察官10人と民間人4人を正式に告発した。
彼らはアルベルト・アドリアン・イトゥルブルに率いられ、「The Poilce Mafia」と呼ばれたギャングとして数々の犯罪を行い、売春婦に保護して働かせるという事を名目に100ペソ (約300円) を強要していた。
その際、支払いを拒んだり途中で契約を解除しようとする者は口封じの為に殺されているはずであった。
捜査員はこのギャングとチャベスら3件の殺人、また他の殺人や失踪との関連について懸命に捜査を行うが一切の関係がない事が確認された。
2004年、ギャングメンバーは全員無罪となった。
結局、事件は今日まで未解決のままとなっている。
「The Poilce Mafia」は現在でも最も有力な容疑者であるが、他にも容疑者は存在した。
〘主要な容疑者〙
✘「The Poilce Mafia」
✘エクトル・フリアン・バローゾ
食料品を経営するバローゾは、2003年と2004年に売春婦を2人殺害した罪で懲役30年の判決を受けていた。
売春婦を標的とした事からバローゾは疑われたが一連の事件と関連する証拠は立証されなかった。
✘ギジェルモ・モレノ
養豚業者のモレノは、アマロ失踪当時パートナーであった。
その為、2003年にアマロ殺人で起訴され裁判にかけられるが無罪となった。
✘マルガリータ・ディ・トゥリオ
トゥリオはブエノスアイレス州で2軒の売春宿を経営しており、窃盗犯、麻薬密売人、ポン引きとして何度も逮捕されていた。
1985年に彼女を強姦しようとした3人の男性を殺害した過去があり、この殺人は正当な殺人として起訴されなかった。
殺害・失踪した14人の内、5人が以前トゥリオの売春宿で働いていた事があり、その為容疑者となったが現在はほぼ無関係とされている。
✘セルソ・ルイス・アラスティア (後日掲載)
アラスティアは1988年に売春婦を2人殺害した罪で有罪判決となり懲役25年が言い渡されていた。
バローゾ同様売春婦を殺害している事と犯行の類似性から容疑者となったが証拠不十分として釈放されていた。
《殺人数》
14人 (失踪者を含む)
《犯行期間》
1995年11月29日〜1999年
∽ 総評 ∽
『The Madman of the route』と呼ばれ、現在も未解決となっている売春婦連続殺人事件。
犠牲者によっては体の一部しか見つかっていない人もあり、その残忍性はかなりのものである。
行方不明9人の売春婦もこの謎のシリアルキラーの手によるものでまず間違いないだろう。
遺体が見つかった犠牲者はほとんどがバラバラにされていたが、体を破壊する事に快感を見出すシリアルキラーも少なくない。
殺害場所で解体して一部を持ち帰ったのか、別の場所で解体してわざわざ持って来たのかわからないが、いずれにせよかなり残酷な犯行である。
売春婦はアメリカではシリアルキラーの標的にされる典型的な犠牲者であるが、接点のなさや売春婦が家族もいない孤独な事が多く、その為、犯人が見つからず未解決となったり犯人を捕まえるまで時間がかかってしまう事が多い。
残念ながら犯人はまだ見つかっていないが、早い解決を望む。
✽ 追伸 ✽
明けましておめでとうございます。
昨年、1年間で1件も未解決事件を投稿していない事に気付き、投稿する事にしました。
今日から数日間、投稿していきたいと思います。
今年もよろしくお願い致します。
コメント
コメント一覧 (6)
新年スペシャル記事は迷宮入り事件の特集ですね。
1発目はアルゼンチンの売春婦殺害事件ですか。
アルゼンチンは6割から7割がローマ・カトリック教の国。
売春に関しては法的には違法じゃないといえ、教義上はけしからんやつらしいですよ。
時代背景や環境等を考慮するとこの事件の犯人、集合体で1匹なのかなと思いますね。
1事件を解決できない間にまねっこの個体がが発生し、そのまねっこがさらにこいつをまねっこしていった可能性は否定できませんね。
ギャングがまねっこしてたりしてた可能性もあるのがなんともです。
パンパなどの大草原に遺体がすてられてたらキツネやピューマ、ヒメコンドル、カラカラ(猛禽の仲間)などの野生の肉食生物、雑食生物が遺体を食べていた可能性は否定できませんよね。
そう考えたら14人どころじゃないと私は思いますね。
明けましておめでとうございます。
こちらこそよろしくお願い致します。
売春をけしからんと思わない方が基本的におかしいですよ。
確かに複数の可能性も否定出来ませんね。
14人で済まないかもですね。
やっぱりこいつ(売春)はけしからんとおもうけど、こいつを理由に捜査がいい加減になっていた可能性はあるとおもいますね。
あと、この時代のアルゼンチンは新自由主義のメネム大統領が政権を握っていた時代。
経済こそ新自由主義で見た目だけは回復していったといえ、外資がどんどん来たせいでとんでもない借金地獄なのに金融緩和じゃぶじゃぶ。
借金地獄の借金は外資で返す様。
どんどん民営化しサービスはほとんど外資の子会社や下請け化。
とんでもないペソ安ドル高。
国内の経済格差も急拡大。
政権の内部はド腐れまくり。
外国の経済危機も相まって政権末期は経済や内政はどうしようもない状態だったそうです。
それゆえに売春婦殺害事件は後回しも後回しになっていたと思いますね。
あれ、わが国によく似ているやつもいっぱいあるなと思いました。
日本も高市さんが総理大臣になってから雰囲気が完全に変わりましたが、トップによって国は良い方にも悪い方にも変化しますね。
明けましておめでとうございます。
やる気出さない事は残念ながらありますね。
特に犯罪の多い国なら尚更だと思います。