
トーマス・モンゴメリー (アメリカ)
【1960 ~ 】
トーマス・モンゴメリーは、アメリカ・ニューヨーク州クラレンスで、電動工具を製作する会社で働いていた。
勤続は12年になり、モンゴメリーの勤務態度は良好であった。
モンゴメリーは仕事をする前はアメリカ海兵隊に所属しており、除隊後、この仕事に就いた。
モンゴメリーはシンディーという名の妻がおり、結婚生活は16年に及び、シンディーとの間に2人の娘がいた。
モンゴメリーは愛犬を散歩させたり娘たちを通っているスイミング・クラブに送るという典型的なアメリカの父親であった。
幸せだが平凡な生活に飽きていたモンゴメリーは、40を過ぎ、太って腹も出ており、そんな自分に嫌気がさしていた。
そこで、モンゴメリーは別の自分を妄想し始める。
それはトミーという名前の18歳の海兵隊員であった。
トミーは身長188cmの長身で、空手の有段者であり、立派な体躯をしていた (ちなみに陰茎の長さは23cm) 。
2005年春、モンゴメリーはトミーになりすまし、ウェストバージニア州に住むジェシーという17歳の少女とネットで知り合う。
そして、モンゴメリーはジェシーとインスタント・メッセージを始める。
モンゴメリーはジェシーに妄想の経歴を書き、それには父親は軍人で、12歳の時に母を癌で亡くし、17歳の時にチアリーダーを強姦して人生に絶望し、海兵隊に入隊した。
そして、狙撃兵として訓練を終えるとイラクに派遣され、左肩と右肩に銃痕があるという内容であった。
更にモンゴメリーはトミーという存在に父親を登場させる。
また、モンゴメリーはトミーは軍人である為、軍務についていてネットへのアクセスが制限されているとジェシーに嘘をつき、父親がトミーとの中継をする役割にした。
ジェシーは全てを信じており、郵便や小包をトミーの父親に送っていたが、もちろん実際受け取っていたのはモンゴメリーであった。
ジェシーはそんなトミーに惹かれていく。
トミーの不幸な生い立ちに同情し、過去の過ちに関してはそれを反省して海兵隊員として一生懸命頑張っているトミーを応援した。
モンゴメリーも
「ジェシーに出会えた事がこれまでの人生で最良の出来事だ」
とジェシーに返答する。
モンゴメリーとジェシーは親しくなるにつれ、互いに写真を交換したり、電話で話すようになる。
モンゴメリーは別人の若い海兵隊員の写真をトミーだとして送りジェシーを騙した。
一方、ジェシーから送られた写真は金髪のスレンダーな女性が写っていた。
そして、トミーとジェシーは互いに惹かれ合い、恋に落ちていく。
モンゴメリーは腕に「いつもそして永遠に」という海兵隊で有名な金言と、ジェシーの名前をハートで囲んだ刺青を彫ったとジェシーに話した。
これに喜んだジェシーは、エアロスミスやローンスター等のバラードに合わせた自身のモンタージュ・ビデオを作成し、トミーに送った。
2人は1日2回も電話をするようになっており、トミーはまだ1度も会っていないジェシーに結婚を申し込んだ。
ジェシーもその申し入れを快諾し、2人は婚約した。
モンゴメリーはジェシーに観賞用の植物を送り、「トミーとジェシー、いつもそして永遠に」というメッセージを刻んだドッグタグを送った。
モンゴメリーは家のパソコンを使ってジェシーとやり取りしていたが、娘たちを追い払い、夜な夜なジェシーとやり取りしていた。
家族はもちろんモンゴメリーとジェシーのやり取りを一切知らなかったが、職場では同僚に妻と別れてウェストバージニア州に引っ越すと話しており、誰もが知っていた。
モンゴメリーは
「2006年1月2日、トム・モンゴメリーは消え去り、18歳の歴戦の海兵隊員に生まれ変わる。彼は最愛の人と一所になる為にウェストバージニア州に引っ越す予定だ」
と新年の豊富を語った。
ただ、そうは言っても簡単には思っていた生活を送れるわけでもなく、モンゴメリーはそのジレンマに苦しんだ。
しかし、2006年2月、夜な夜なモンゴメリーがジェシーとやり取りしている事が妻のシンディーの知れる所となり、喧嘩となる。
モンゴメリーは家の地下室で寝る事となり、モンゴメリーの娘はジェシーに本当の事を教えて上げようと、家族の写真を添付したメールを送る。
ジェシーは何を信じていいかわからなくなる。
そこでジェシーはモンゴメリーとのやり取りで1度名前が出てきたブライアン・バレットの事を思い出す。
バレットはモンゴメリーの勤める工場でパートタイムで働きながら大学に通う22歳の学生であった。
そのバレットも同じネットに出入りしており、ジェシーは直接バレットに質問する。
すると、トミーがモンゴメリーだという事実を知る。
あまりのショックにジェシーは落胆する。
だが、そんなジェシーをブライアンが励ます。
すると、ジェシーとブライアンはネット上で一緒にゲームをしたり、メッセージをやり取りするなど、急接近する。
そして、2人はモンゴメリーの事を女性を食い物にする人間とネット上で非難した。
また、ブライアンはジェシーの振りをしてモンゴメリーと接し、からかったりした。
ブライアンは職場でモンゴメリーの前で彼女が出来たと自慢した。
これに腹を立てたモンゴメリーは、ジェシーに
「同僚のほとんどはブライアンが負け犬のペドフィリアだ」
というメッセージを送る。
だが、モンゴメリーのやってきた事は周囲に知れ渡り、モンゴメリーを冷ややかな目で見るようになり、精神的に追い詰められる。
そして、モンゴメリーはジェシーに
「永久にさよならしてもいい」
とメッセージを送る。
ジェシーは騙されていた事に腹を立てながらも、モンゴメリーに対してまだ気持ちが残っていた。
ジェシーはモンゴメリーをなだめ、
「もう1度トミーに会いたい」
とモンゴメリーに話し、ブライアンと仲良くしたのは仕返ししたかっただけだと述べた。
また、ブライアンとはいつでも別れる事が出来ると述べ、別れる事をモンゴメリーに約束する。
だが、ジェシーはブライアンとの交流も続けた。
ジェシーはブライアンとの関係をモンゴメリーに隠そうとしたが、ブライアンがジェシーを説得し、2人はオンライン上の互いのプロフィールに関係を公にした。
しかし、ジェシーはモンゴメリーにブライアンとは別れるつもりだと伝える。
モンゴメリーはジェシーの事を激しく罵倒するが、今度は約束を守るというジェシーの言葉で本人を許した。
モンゴメリーはジェシーと再びやり取りを開始し、眠る時間を惜しんでのめり込んだ。
だが、この頃にはモンゴメリーの精神状態は不安定になっており、ジェシーを精一杯誉めたと思えばジェシーのネットでの男友達に嫉妬し、ジェシーを罵倒する事もあった。
同年夏の暮れ、モンゴメリーはジェシーとブライアンの関係が戻った事を知ってしまう。
モンゴメリーはジェシーを罵倒し、ジェシーはモンゴメリーの怒りを収めようとなだめるが、今度ばかりはモンゴメリーの怒りは収まらなかった。
ジェシーはモンゴメリーの怒りを収める事を諦めた。
同年9月15日、モンゴメリーは朝早くにジェシーに電話し、その怒りをぶつけた。
その日の夜、ブライアンは仕事を終え、午後10時16分頃に工場を出た。
そして、駐車場に停めてあった車のドアを開け、乗ろうとした。
すると、運転席側の窓を突き破り、3発の銃弾がブライアンに命中する。
ブライアンは衝撃で地面に倒れ込んだ。
ブライアンは即死であった。
ブライアンの死体が発見され、警察がすぐに捜査を始めた。
警察は勤務先の聞き込みを始めると、すぐにモンゴメリーが容疑者として名前が上がる。
そして、犯行現場から次々とモンゴメリーが犯人だとする証拠が見つかった。
警察はすぐにモンゴメリーとジェシーの関係を掴み、ジェシーに連絡を取りブライアンが殺害された事と、ジェシー自身もモンゴメリーの標的となる可能性がある事を告げた。
翌朝、警察がジェシーの家に向かうと、家にはジェシーはおらず、母親を名乗るメアリー・シャイラーがいた。
シャイラーはジェシーは不在で、連絡が取れないと警察に話した。
だが、シャイラーの挙動不審な対応に疑問を感じた警察は、シャイラーにジェシーの事を追及すると、シャイラーは自分が「ジェシー」だと白状した。
シャイラーは小太りで2人の子供がいる45歳の既婚者であった。
その子供の1人がジェシーであり、シャイラーは実の娘になりすましてモンゴメリーとやり取りしていたのだった。
別人を装っていたのはモンゴメリーだけではなくシャイラーもそうだった。
シャイラーは退屈しのぎにたまたま始めたネットでたまたま適当に娘の名前で登録した。
後に娘の名前だった事に気付いたが、訂正せずそのままでいた。
シャイラーは結婚生活に不満は一切なく、途中からブライアンやモンゴメリーとどう対応すれば終わらせる事が出来るか悩んでいた。
警察はシャイラーにトミーが実在しないと知った時に何故、縁を切らなかったのかと問われると、
「娘に手を出すのではないかと心配だった。けど、今思えば放っておけば良かった」
と述べた。
また、トミーについては
「子供なような人でした」
と印象を語った。
同年11月27日、モンゴメリーはブライアン殺害容疑で逮捕された。
逮捕後、モンゴメリーは妻や子供に絶縁された。
モンゴメリーは最終的にはトミーはイラクで戦死し、手を引こうと想っていたと話した。
だが、途中、妻が介入した事で、引くに引けなくなったとも話した。
2007年4月、モンゴメリーは自殺を謀るも未遂に終わった。
同年11月27日、モンゴメリーには懲役20年が言い渡された。
シャイラーは証人として法廷に呼ばれたが、法に触れる行為はしていないとして、処罰される事はなかった。
最後にジェシーがブライアンと別れると最後に約束した際のモンゴメリーの返答で終わりたいと思います。
「もし今度また嘘をついたらお前のそばにいる大切なものを失う事になるぜ」
《殺人数》
1人
《犯行期間》
2006年9月15日
∽ 総評 ∽
ネット上で架空の人物を作り上げた挙げ句、嫉妬に狂い殺人に至ったモンゴメリー。
この事件の珍しい所は、通常、こういった場合はやり取りしていた同士でもめて殺害に至る事がほとんどだ。
しかし、今回殺害されたのは同僚の男性であった。
だが、モンゴメリーがジェシーとのやりとりでブライアンの名前を出す事がなければ、ブライアンは事件に巻き込まれ殺害される事はなかった。
ブライアンもジェシーを好きになり、結託してモンゴメリーを貶めているので、ブライアンに100%非がないとは思わないが、何とも悲しい巡り合わせであった。
互いが他人になりすましてやり取りしていたというのはかなり衝撃的であり、そんな2人に翻弄されたブライアンが殺された。
ただ、モンゴメリーはトミーというのは完全に想像で作り上げた人物だが、ジェシーは実在し、シャイラーの娘であった。
現在、ネット全盛の時代であり、このモンゴメリーのような事件は世界各国少なからず発生している。
だが、規制や取り締まりで防ぐ事には限界があり、結局は個々の人間性に委ねるしかない。
コメント
コメント一覧 (13)
このウソの代償は懲役20年では足りない。
みせしめのためにモンゴメリーは拷問の末処刑されるべきなのだ。
そしてウソついたら針1000本飲ませるの事例を司法はもっと導入すべきだと思うが、司法はウソつきな弁護士や凶悪犯にすごく甘すぎるのが情けない。
おそらく相手にも少なからず非があるとの判断でこの程度の懲役になったのでしょう。
ただ、仰る通りそれではあまりに軽過ぎですね。
これが相手が明らかに男性を騙したりしたのなら別ですが、結婚してそれなりの生活を送っていた男が生活の退屈さや不満から始めた結末なのでとても弁護出来ません。
他のネットにかかわる事件もそうですし、もっと厳しくすべきですね。
他に被害が及ばないのであれば、勝手にやってくれという感じだったのですが。会った事もない人の為、脅迫めいた文面を送ったり嫉妬に狂った上に殺人なんて馬鹿らしいですよ。
相手がよくわからなかったり、簡単に接する事が出来ない事が普通の恋愛とかよりも余計に燃え上がらせるのでしょう。
個人で楽しんで腹を立てたり喜んだりするのは自由ですが、傷害や殺人に至るのは論外ですね。
空想の世界にだけ浸っていれば良いものを、ソレを口に出してネットに登場した辞典で"相手を騙す気が満々"な虚言です!
嘘に整合性を求めると更に嘘をつかねばならず泥沼は必至となり、溢れた嘘が決壊した喜劇(ブライアン・バレットにとっては悲劇)に至った印象です。
シャイラーは「法律を犯していない」として無罪と云う判断はオカシイと思われます。
シャイラーは事件後に判明する迄は"ジェシー"を演じており、モンゴメリーとブライアン・バレット双方に気がある素振りを続けるばかりか双方に片方と「別れたい」意思を伝えているので双方共互いに嫉妬や敵愾心を醸成したのです!
つまり"ジェシー"ことシャイラーが、この滑稽極まる殺人事件を誘発させたと考えます!
因みに自らを偽る二人が膨大なネット上で邂逅したのは「過剰に虚飾した己に陶酔した人間」同士が「類(馬鹿)は共(同類)を呼ぶ」の如く必然的に出逢ったのだと思います。
※常人は「あり得ない」プロフィールに胡散臭さを感じて忌避したのではないでしょうか?
働きながら大学に通う前途ある若者が、虚飾に彩られた喜劇の犠牲者となったのは非常に痛ましい事件ですね。
シャイラーが捲き込まなければ死なずに済んだと思われ、遺族はシャイラーに莫大な慰謝料請求すべきだと思いました。
※刑事で無罪でも民事訴訟は有罪と判断されると思いますね。
最初は小さな嘘が取り返しのつかない所まできてしまう。
「嘘は雪だるまの様なものだ。転がせば転がすほど大きくなる」というのはかのルターの言葉ですが、まさにその通り引くに引けなくなったのでしょう。
確かにそうとも言えますが、残念ながら法律上は彼女は無実になってしまうでしょう。
この事件は3人共どこかで少し冷静になればこんな結末にならなかったと思います。
いつもだったら生粋の異常者たちが覚せい要因もほとんどわからぬまま凶悪な事件を起こし、事件の概要と判決だけが書かれている記事だらけでした。
しかし、今日の事件はまったく先の読めぬ結末、普通の人間が殺人犯になっていく要因などが事細かに書かれてあったので戦慄が走りました。
しかも、今回の話は異常者が勝手に暴走しているわけではなく、小さなウソが日に日に大きくなっていき、暴走してしまうところが怖かったです。
いつもならひとごとのように見れる話ばかりなのであまり怖くはありませんが、今日の話はいつも以上に精神を律しなければ自分もこの悲劇の主人公になりうる話だったのが驚きでした。
今日は人の身、明日は我が身と思う記事で、勉強になりました。
明日もよろしくお願いします。
衝撃度はかなりのものですね。
確かにこれまで掲載してきた殺人鬼はそもそも精神が破綻して犯罪を犯すべくして犯していますが、モンゴメリーはよくいるアメリカの一家の父親です。
仰る通りこの事件は決して他人事ではないですね。
モンゴメリーは贔屓目に見ても元々殺人を犯すような人物ではなかった。
それが日頃の怒りや嫉妬の積み重ねで殺人にまで至ってしまう。
ある意味自分の身近に最も感じる事件ですね。
ブライアンがモンゴメリーを侮辱するようなことをせず、関わらないでおけば殺されることはなかったかもしれませんね
そうですね。
全く犯罪に縁もゆかりもない人が人殺しにまで発展するんですから。
ブライアンもおそらくここまでなるとは思ってもみなかったのでしょう。
ただ、人間どこでどうなるかわからないものなので、慎重さが大切ですね。
よっぽど見た目に自信がなかったのでしょうね。