
ジョン・グローバー (オーストラリア)
【1932 ~ 2005】
ジョン・ウェイン・グローバーは、1932年11月26日、イギリス・イングランド中部ミッドランドで生まれた。
グローバーの家は労働者階級の家庭で、元々はイングランドのウルヴァーハンプトンに住んでいた。
1947年、グローバーは服やハンドバッグを盗み、逮捕され有罪判決が下された。
グローバー14歳の時、学校を退学する。
学校を退学後、グローバーはイギリスの軍隊に入隊するが、過去の犯罪がばれてしまい軍隊を除隊させられてしまう。
その後、1956年、グローバーはオーストラリア・ビクトリア州の州都メルボルンに移住する。
しかし、この移住は無資格で違法滞在であった。
グローバーは多くの女性と交際したが、年上の女性を好んだ。
だが、交際した相手が他にもボーイフレンドがいたり結婚していたりと、グローバーは何度も裏切られる。
グローバーはビクトリア州とニューサウスウェールズ州で窃盗を働き、有罪判決が下された。
1962年、グローバーはメルボルンで女性に対しての暴行と強制猥褻の罪で逮捕され、有罪判決が下された。
グローバーは以後、3年間、まともな生活を行うよう裁判で告げられた。
1968年、グローバーはゲイ・ロールズと結婚し、ロールズの実家があるシドニーのモスマンに移住した。
グローバーは高齢者施設でボランティアをしており、友人たちには親しみ易く信頼出来る人物だと見られていた。
また、グローバーは『Four'N Twenty meat pie』というミートパイ会社の営業担当として働き、2人の娘にも恵まれていたグローバーは、端からみれば幸せな人生を送っているように見えた。
1976年、グローバーの母親がイギリスからオーストラリアに引っ越し、グローバーたちと一緒に住み始める。
1989年、グローバーの母が乳癌を患い死亡してしまう。
母の死に非常に強いショックを受けたグローバーは、自暴自棄となってしまう。
そんなグローバーに嫌気がさした妻はグローバーに離婚を突き付け、娘を連れてニュージーランドへ引っ越してしまった。
1989年1月11日、マーガレット・トッドハンター (84歳♀) が道を歩いていた。
すると、グローバーの乗る車が通りかかる。
グローバーはトッドハンターを見るなり車を駐車し、トッドハンターに歩いて近づいた。
そして、グローバーは躊躇もなくトッドハンターを殴り、その衝撃でトッドハンターは倒れると、所持していたバッグ (約2万8000円) を盗んで逃走した。
警察は強盗事件として捜査を開始した。
同年3月1日、グローバーは道を歩いていたグェンドリン・ルイーズ・ミッチェルヒル (82歳♀) を見ると、車に戻り、ハンマーを取り出した。
そして、ミッチェルヒルを付け回し、アパートの玄関のドアを開けた所を後ろからハンマーで襲い掛かった。
その後、倒れたミッチェルヒルの頭や体をハンマーで叩き続け、財布から100ドル (約1万4000円) を奪って逃走した。
ミッチェルヒルは肋骨が何本か折れ、瀕死の重傷であった。
そんなミッチェルヒルを2人の男子学生が発見し、警察に通報する。
男子学生が発見した時はミッチェルヒルはまだ生きていたが、警察と救急車が到着した直後にミッチェルヒルは死亡してしまった。
ミッチェルヒルは人に恨まれるような人間ではなく、また、目撃者もいなかった為、犯人を特定する事は出来なかった。
警察は同じく襲撃されたトッドハンターと手口は似ていたが、強盗という犯罪は日常茶飯事であり、別の強盗事件とした。
同年5月9日、グローバーはレディ・アシュトン (84歳♀) が道を歩いているのを目にする。
そして、アシュトンを尾行し、アパートの玄関に差し掛かる時に背後から襲い掛かった。
グローバーはハンマーでアシュトンの後頭部を殴った後、アシュトンを引きずり地面に投げ捨てた。
舗装された地面に頭を強打したアシュトンはその場で気絶した。
その後、グローバーはアシュトンのパンストを取り出し、首を絞めて殺害した。
グローバーはアシュトンの財布から100ドルを奪って逃走した。
警察はアシュトンが頭から血を流して倒れているのを発見したが、パンストが皮膚を切り裂く程強く絞められていた事に気づいた。
また、アシュトンは裸であり、足が交差され腕は脇に折り曲げられていた。
3人共に裕福な老婆で、郊外に住んでおり、ハンドバッグを奪われる前に襲われ、同様な方法で殺害されている事から、警察はこれまで3件の強盗事件が同一犯によるものと判断する。
同年6月6日、グローバーが老人ホームに侵入し、ウェスリー・ガーデン (77歳♀) に痴漢行為を行う。
施設の男性スタッフが事件に気付いた為、グローバーは逃走した。
男性スタッフはグローバーの顔をよく見ておらず、誰かわからなかった。
同年6月24日、グローバーはニューサウスウェールズ州レーンコーブにある老人ホームに侵入し、キャロライン・チザム (♀) の服を持ち上げ臀部を触った。
そして、隣の部屋に侵入し、別の老婆の服を下げ、胸を撫でた。
老婆が助けを求めた為、グローバーは慌てて逃走した。
同年8月8日、グローバーは家の裏通りでエフィー・カーニー (♀) に暴行を働いた。
同年10月6日、グローバーは医者のふりをしてノースショア郊外の老人ホームに侵入し、フィリス・マクニール (♀) を襲うが未遂に終わった。
同年10月18日、グローバーは人里離れた所に住んでいる未亡人のドリス・コックス (86歳♀) を家の前で襲い、レンガで殴り壁に顔を打ちつけた。
コックスは一命を取り留めたが、認知症であった為、犯人の顔を覚えていなかった。
同年11月2日、グローバーはレーンコーブの静かな裏通りを歩いているマーガレット・フランシス・パユ (78歳♀) に近づく。
パユは店で食料品を購入した帰りであり、グローバーは家に運ぶのを手伝うと言い、パユの家に侵入した。
パユは手伝ってくれた事に感謝し、グローバーの為にお茶を出した。
その隙をみてグローバーはパユを背後から鈍器で襲い掛かった。
パユはその衝撃で倒れるが、その後も殴り続け撲殺した。
その後、グローバーはパユの服や靴、杖を床に配置し、300ドル (約4万2000円) を盗んで逃走した。
パユは殺害される前、男性と歩いている姿を、女子高生が確認していた。
翌日の3日、オリーブ・クリーブランド (81歳♀) が殺害される。
クリーブランドは公園のベンチに座っていたが、そんなクリーブランドにグローバーは話し掛けた。
しかし、クリーブランドはグローバーの話に不快を抱き、立ち上がって帰ろうとした。
すると、グローバーはクリーブランドを襲い、人里離れた場所に連れて行った。
そして、クリーブランドの頭をコンクリートに何度も打ちつけ、最後はクリーブランドのパンストで首を絞めて殺害した。
最後はパユ同様、クリーブランドの服や靴、杖を床に配置し、ハンドバッグから60ドル (約8400円) を奪って逃走した。
このクリーブランド殺害も一連の強盗殺人事件とされ、この頃マスコミは『The Granny Killer (老婆殺人者) 』と呼び、大々的に報道した。
また、州政府は犯人逮捕の有力な情報提供者に20万ドル (約2800万円) の報酬を支払うと布告した。
同年11日23日、グローバーがモスマンにあるブエナビスタホテルにいる未亡人のミュリエル・ベリル・ファルコナー (93歳♀) を見つける。
すると、グローバーは手袋とハンマーを取りに車に戻った (この時、グローバーの車は警察署のすぐ前の駐車場に停めてあった) 。
その後、グローバーはファルコナーを尾行し、家のドアを開けた瞬間にファルコナーの口を手で塞いだ。
そして、ハンマーでファルコナーの頭と首を執拗に殴った。
ファルコナーは衝撃で床に倒れ、ファルコナーのパンストで首を絞めた。
ファルコナーは首を絞められ気絶したが、目を覚まして大声で助けを求めた為、グローバーはハンマーで何度も殴って撲殺した。
ファルコナー殺害後、ファルコナーの靴を並び替え、財布から100ドル (約1万4000円) を盗んで逃走した。
翌日、ファルコナーを訪ねて来た隣人によって死体が発見された。
同年のクリスマスまでに報酬金は25万ドル (約3500万円) まで上がった。
1990年1月11日、グローバーはグリニッジ病院に侵入し、癌患者のデイジー・ロバーツ (82歳♀) を含む4人の患者に対して猥褻行為を働いた。
ロバーツが叫んだ為、看護師が駆けつけグローバーは逃走した。
その後、グローバーは車で逃走したが、この時、看護師が車のナンバーを覚えており、警察に通報した。
警察は車の所有者をグローバーだと割り出し、顔写真を看護師に見せた。
看護師は
「間違いない」
と述べた。
警察はグローバーに会い、これまでの殺人を尋問した。
しかし、グローバーは否定した。
警察はグローバーに対してある程度の証拠があったが、決定的な証拠が無かった為、逮捕する事が出来ず、監視下に置いて釈放した。
同年3月19日、ジョアン・ヴィオレット・シンクレア (60歳♀) が殺害される。
シンクレアはグローバーの知り合いであり、グローバーはハンマーでシンクレアの頭を殴り、パンストで首を絞めて殺害した。
その後、死体をバスルームに運び、ドラッグを無理やり口の中に押し込み、左手首を切って自殺に見せ掛けた。
しかし、グローバーは警察の監視下にあり、シンクレアの家にいるグローバーがなかなか外に出て来ない事に業を煮やし、家の中に入った。
すると、バスタブには大量の血を流したシンクレアがおり、床にはハンマーが置いてあった。
警察は部屋にいたグローバーを逮捕した。
グローバーはこれまでの殺人を認め、犠牲者を強姦しなかった事には、興味がなかったと述べた。
また、グローバーはカジノのポーカーにはまっており、その資金を手っ取り早く得る為の方法として盗みを行った事がわかった。
首を絞めて殺害した事については、警察を騙す為、性的な動機で行われている連続犯の仕業に見せる為に行ったと述べた。
同年3月28日、グローバーの裁判が始まった。
グローバーを診察した精神科医ジョン・シャンドは、グローバーを重度の人格障害者と診断した。
その為、グローバーの弁護側は精神状態を理由に無実を主張した。
1991年、グローバーは6つの殺人で仮釈放の可能性がない終身刑が言い渡された。
2005年9月9日、グローバーは刑務所の独房で首を吊って自殺した。
享年72歳。
グローバーは自殺する数日前、最後にグローバーを訪ねて来た訪問者にスケッチを渡していた。
それには2本の松が描かれており、その松の間に数字の「9」が書かれていた。
その「9」というのが、グローバーがこれまで殺害した人数なのか (6人は確実に殺害しているので残り3人という意味) 、他に9人殺害したという意味なのか、本人が亡くなってしまったのでわからない。
ちなみにグローバーによって殺害されたと言われる未解決事件の犠牲者は、
1961年10月19日、メルボルンで殺害されたエミー・メイ・アンダーソン (78歳♀) 。
1963年3月22日、ビクトリア州セント・キルダで殺害されたアイリーン・キッダル (61歳♀) 。
1967年6月3日、ビクトリア州プラーンで殺害されたエルシー・ボーイズ (63歳♀) 。
1968年4月9日、ビクトリア州アルバートパークで殺害されたクリスティーナ・ヤンコス (63歳♀) 。
1977年10月16日、ニューサウスウェールズ州パディントンで殺害されたフローレンス・ブロードハースト (78歳♀) 。
1984年8月29日、ニューサウスウェールズ州エッタロングで殺害されたジョセフィーン・マクドナルド (72歳♀) 。
1986年11月21日、ニューサウスウェールズ州ウミーナで殺害されたワンダ・アムンゼン (83歳♀) 。
の7人はグローバーによるものだと思われた。
余談だが、このグローバーの連続殺人事件は2000年に映画『Terror Tract』として上映されている。
∽ 総評 ∽
『The Granny Killer』または『The Monster of Mosman (モスマンの怪物) 』等と呼ばれ、最低6人を殺害したグローバー。
グローバーは56歳になってから殺人を始めたが、これほどの年齢になってから殺人を行うというのは非常に珍しい。
やり口も標的を見つけると付け回して玄関先で襲ったり、言葉巧みに近づいて騙して襲ったりという用意周到で非情な狡猾振りを見せた。
しかも、グローバーは老人ホームに侵入し、次々と襲い掛かるという大胆さも披露した。
また、グローバーは老婆をばかりを襲ったが、通常、老婆ばかり襲うシリアルキラーは強姦が必須だが、グローバーは物を盗むだけで強姦を一切していない。
これも非常に珍しいが、グローバーは純粋に老婆を嫌っていたのだろう。
グローバーは自殺する間際に「9」という意味深な数字を書いているが、殺人を行った年齢を考えれば十分にあり得る数字ではある。
かのテッド・バンディも「30人殺害したのか?」と問われた際、バンディは「1足りない」とだけ答えた (この「1」というのが1人足した31人なのか、100の位の1足した130人なのか、1の位を足した301人なのかわからない) 。
実際、グローバーによる犠牲者と見られる7人は1961年以降であり、この時、グローバーは30手前なので50過ぎてからの殺人よりも現実味がある。
ただ、本人がすでに死んでいるので確かめようもないが。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★☆☆
・残虐度 ★★★★★★★☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★☆☆
・特異性 ★★★★★★★★☆☆
・殺人数 6人
《犯行期間:1989年1月11日~1990年3月19日》
コメント
コメント一覧 (8)
ご忠告ありがとうございます。
自分でもわかってたのですが、あえてそのように記載しました。
ただ、個人的にも少し納得いってなかったので、 変更したいと思います。
強姦殺人者の仕業に見せかけようとするなど、掲載されている殺人者の中でも狡猾で冷静な面が見えるので手慣れている感じがして気味が悪いです。
確かにその可能性は高そうですね。
母親の死はきっかけに過ぎなかったのかもしれません。
内容の長さに比例して異常性が露になり、仰る通り狡猾で陰湿、かなり気味の悪い殺人鬼ですね。
>1962年、グローバーはメルボルンで女性に対しての暴行と強制猥褻の罪で逮捕され、有罪判決が下された。
>>グローバーは以後、3年間、まともな生活を行うよう裁判で告げられた。
>>警察は同じく襲撃されたトッドハンターと手口は似ていたが、強盗という犯罪は日常茶飯事であり、別の強盗事件とした。
元から異常な傾向があったことが伺えます。
ただ下の2つの引用部分が気になりまして、
これって刑務所に閉じ込めてないんですよね。そしてたった3年。
そして最後の部分じゃ警察の態度からして普通にあるような、グローバーでないにしてもやりかねない、そしてレイプじゃないし。
全てがそうだとは思いませんが、環境もしくは治安は大事だなと思いました。
確かにまともな対応をしているようには思えないですよね。
明らかに放置したらダメでしょ、というのに簡単に外に出すし、死刑がないなら一生閉じ込めて欲しいものです。
虫やカエルを殺すかのごとく。
そういう点では本当に精神年齢がすごく幼いシリアルキラーだったのかな。
もしくは年配の女性にこっぴどく叱られたり、振られたことなどのの逆恨みが段々と快楽目的になっていって歯止めが利かなくなったのかもしれない。
どっちにしろこいつはもう死んでいるから憶測にすぎないけど。
快楽殺人鬼は理由は短絡的ですからね。
とにかく殺人のみに喜びを覚える。
殺人鬼の殺害理由なんて知りたくもないのでとにかく死んでくれればそれでいいですけど。