
デッドリック・オーウェンズ (アメリカ)
【1993 ~ 】
デッドリック・ダーネル・オーウェンズは、両親が重度のアルコールとドラッグの依存症であった。
近所の人によるとオーウェンズの両親は
「毎日朝から庭先で酒を飲み、酔っ払ってはマリファナを吸っていた。しかも、それだけじゃなく大声で叫んで互いに罵り合って取っ組み合いの喧嘩をしていた。子供たちの世話をしている所なんて見たこともない」
と語っている。
オーウェンズ4歳の時、父親はコカインの運び屋をやっていたのだが、警察に捕まってしまい、刑務所に入る事となる。
また、同時に母親は行方をくらましてしまった為、オーウェンズは弟と共に伯父の家に住む事となった。
しかし、そこでの生活も決してまともな環境ではなく、伯父は密輸を目的とした大量のコカインを家に保有しており、また、多くの銃も家に置いていた。
しかも、コカインが外から見られないよう家の窓全てをブルーシートで覆い、どの部屋もゴミ等で汚れていた。
オーウェンズと弟の為の部屋は存在せず、それどころか部屋には机もベッドもなかった。
オーウェンズと弟はシングルソファーをベッドとして2人で共有し、窮屈な空間の中、寄り添うように生活していた。
更に、オーウェンズ兄弟は日常的に伯父に暴力を振るわれていた (ただ、このオーウェンズの住む地域は貧困層が多く、ほかの家庭も荒んでいる所は多かった) 。
そんな地獄のような生活の中、オーウェンズは地元ミシガン州の小学校に通うようになる。
学校には同級生のケイラ・ロランド (6歳♀) がいた。
ロランドの家は母親が自動車製造工場で働き、母親は再婚だった為、父親は本当の父親ではなかった。
しかし、その義父は優しい人物で、ロランドを毎日学校に送り届けていた。
ロランドの家庭はごく普通の家庭であったが、この程度の家庭ですら近所では最もまともな家庭であった。
ロランド自身も他の女の子と比べて少し変わっており、他の女の子たちがバービー人形で遊んでいる中、ロランドは何の関心も示さず、また、自身を着飾る事にも興味がなかった。
ロランドは読み書き大好きで勉強熱心であり、周囲の女の子達が物静かで大人しいのに対し、ロランドは利発で活発的な少女で、一際目立つ存在であった。
オーウェンズは自分のような荒んだ家庭に育ち、周囲もそうだが何かやる気のない子供ばかりの中、そんなロランドが眩しく見えた。
次第にオーウェンズはロランドに対して好意を抱くようになる。
自身の気持ちをロランドに伝えたいと思ったオーウェンズは、2000年に入り、ロランドに対して突然キスしようとする。
もちろん、このオーウェンズの行為をロランドは拒絶する。
当然と言えば当然だが、この拒絶された事でオーウェンズはロランドに対する愛情が憎悪に変わってしまう。
そして、日を重ねるにつれ、オーウェンズのロランドに対する憎悪は殺意へと変貌していく。
2000年2月29日、ロランドを殺そうと決めたオーウェンズはナイフと伯父の銃を持参して登校する。
しかし、クラスメイトにナイフを見つかってしまい、クラスメイトはすぐに担任の先生に告げ口した為、オーウェンズはナイフを没収されてしまう。
だが、担任の先生はオーウェンズからナイフを没収しただけで、他に何か持っているか身体検査をしなかった。
1時限目の授業が終わり、次の授業が始まる時、皆で別の教室に移動した (アメリカは小学校から授業毎にクラス移動をよくする) 。
ロランドがたまたまオーウェンズの側を通りかかる。
すると、オーウェンズは
「僕はお前を好きじゃない」
と言い放った。
ロランドは立ち止まりオーウェンズの方を振り返り、
「だから何よ」
と答えた。
その直後、クラスメイト22人と教師が教室にいる中、オーウェンズはロランドに向けて銃を発砲した。
この銃声を聞いた生徒は
「銃声が聞こえた時、一瞬何か大きな物が落ちた音だと思った。だけどすぐに校長先生が警報器を鳴らして先生たちに全ての教室のドアに鍵を掛けて教室の外に出ないよう校内放送で指示していた。なんか物凄い恐ろしい事が起こったんだと思い、僕はとても恐ろしくなったんだ」
と述べた。
ロランドを撃った後、血まみれの床下に倒れるロランドを尻目に、オーウェンズは涼しい表情で教室を後にした。
そして、トイレに向かいゴミ箱に銃を捨てた。
その後、オーウェンズは教師に取り押さえられたのだが、オーウェンズは一切抵抗する事なく素直に捕まった。
そのままオーウェンズは校長室に連れて行かれ、やって来た警官により連行された。
学校はすぐに閉鎖され、全校生徒は避難された。
ロランドは病院に搬送されるが、まもなく息を引き取った。
事件が公になると、わずか6歳の少年がわずか6歳の少女を銃で殺害した事実に、銃乱射事件が日常的なアメリカでも、その衝撃に全米が震撼した。
裁判が行われたが、オーウェンズがわずか6歳という事もあり、殺人罪で起訴される事はなかった。
アメリカの大半の州は、6歳に対する犯罪を問う法律が存在していなかった。
1893年に制定された法律では、アメリカ最高裁判所は
『7歳未満の子供は重罪の有罪または任意の死罪の為に処罰する事は出来ない』
とされており、7歳未満の子供が重罪を犯すはずかないという考えがあり、長年多くの州が従っていた。
結局、オーウェンズは起訴を見送られ、不起訴となった。
銃の所有者である伯父には、銃の管理不行き届きにより2年の禁錮刑が言い渡されている。
世間ではこのオーウェンズに対し、
「少年は以前から様々なサインを出していた。少年の家庭環境は悲惨で、伯父はどうしようもない男だというのはその地域の人は皆知っていた。少年は怒りっぽくよく他の男の子たちに喧嘩をふっかけ揉め事を起こす問題児であった。少年は苦しみもがき、救いを求めていた。その事に気付き見て見ぬ振りをしていた周りの大人にも問題がある事件だ」
という意見が多かった。
このオーウェンズによる射殺事件は、アメリカのみならず、これまで世界で起こった学校での最年少の加害者と被害者による銃撃事件であった。
また、犯行現場になった小学校はその後、閉校している。
余談だがこの事件はマイケル・ムーア監督のかの有名な映画『Bowling for Columbine (2002年) 』でも紹介されている。
∽ 総評 ∽
わずか6歳という年齢で同級生の少女を射殺したオーウェンズ。
前述した通り、この6歳で射殺というのは学校での銃撃事件としては世界最小年齢の記録であった (だが、誤射や暴発による射殺は学校外ではもっと幼い子供でも起きている) 。
ただ、アメリカで多発する銃乱射事件とは異なり、このオーウェンズの銃撃は特定の恨んでいる相手だけを撃っており、無差別発砲ではない。
オーウェンズの家庭は明らかに荒んでおり、とてもまともに育つとは思えず、その点は同情に値する。
しかし、だからと言って子供なら何をしてもいいとはもちろんならない。
確かに周りの人間が手を差し伸べる事も出来たかもしれないが、他人が出来る事には限界がある。
仮に少年の伯父が異常だとして警察に通報しても、上手くはぐらかされてしまえばそれまでだ。
結局は、親が子供をしっかりと見るしかなく、親が異常な時点でこういう結果を招くのは致し方ないのかもしれない。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★☆
・残虐度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★☆☆
・特異性 ★★★★★★★★☆☆
・殺人数 1人
《犯行期間:2000年2月29日》
コメント
コメント一覧 (9)
「僕はお前を好きじゃない」
拒絶されたのを受け入れられないのが分かる発言だと感じました
そうですね。
全てを否定されたような錯覚を抱いたのかもしれません。
>骸骨さん
そうですね。
それが普通で当たり前です。
まともな6歳で普通殺意なんて抱きません。
仰る通りこの少年に関しては家庭環境が悪過ぎたので、多少同情する余地はありますね。
6歳なんて、死んでしまうなんて理解出来ない年頃ですもんね。
ゲームのようにケアルをすれば回復するみたいな?
娘さんの親は、何処に怒りをぶつけたらいいんだろうか?と、可哀想ですね・゚゚(p>д<q)゚゚・
そうですね。
怒りを少年にぶつければ楽なんでしょうが、まだ6歳ですからね。
心底憎むというのもいまいちピンとこない気がします。
好きの裏返しだよな。好きだから苛めるみたいなもんだったんでしょう。
しかし、学校が金属探知機導入するのがよくわかる。こんなのが日常じゃー過敏になっても仕方がない。
そうですね。
好きなのに嫌いという子供にありがちな発言ですね。
確かにこんな事が起きるなら持ち物検査は非常に大事になりますね。
確かに誤射ならまだしも明確な殺意があった場合は同情の余地はないですね。