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ファントム・キラー (アメリカ)
【1946】



１９４６年２月２３日、満月の夜、アメリカ・テキサス州とアーカンソー州の州境にあるテキサカーナという町で事件が起こる。

ジミー・ホリス (２４歳) と、メアリー・レイリー (１９歳) のカップルは、町外れの道端に車を停め、車の中でことに及んでいた。

そんな時、車の窓をノックする音が聞こえる。

ジミーとメアリーは外を見ると、そこには目の部分を開けた小麦袋を被った男が立っていた。

「おい、表に出ろ」

そう言った小麦袋男の手には、銃が握りしめられていた。

小麦袋男はジミーを外に引きずり出すと、銃で何度もジミーを殴りつけた。

ジミーが気絶すると、小麦袋男はメアリーに銃を向け抵抗出来ないように脅し、銃身でメアリーを凌辱する。

そして、再びメアリーに銃を向けた直後、運良く他の車が通りがかった。

この時、メアリーは小麦袋男が

「チッ！」

と舌打ちしたのを聞いている。


同年３月２３日、再び満月の夜、町外れに車を停めていたリチャード・グリフィン (２９歳) と、ポリー・アン・ムーア (１７歳) が小麦袋男に襲われる。

２人はそれぞれ後頭部を銃で撃たれ死亡する。

翌朝、２人の遺体が車内で発見されるのだが、車から数メートル離れた場所に血痕があり、外で射殺された後、わざわざ車内に運んだ事が判明した。


同年４月１４日、満月の夜、テキサカーナでポール・マーティン (１７歳) と、ベティー・ジョー・ブーカー (１５歳) がデート中に行方不明となった。

翌朝、町外れでポールの遺体が発見され、ポールは４発も撃たれていた。

また、ベティーの遺体も町外れの荒野で発見され、顔面と心臓をそれぞれ１発ずつ撃たれていた。

テキサカーナの住民はこの小麦袋男の事を「ファントム」と呼び、その存在に恐怖で震え上がった。

また、満月の夜にはカップルで出掛けないよう夜間外出禁止令が敷かれるほどであった。

警察も大々的に捜査に乗り出し、テキサス・レンジャー部隊まで動員され、おとり捜査等も行うが、成果は全く得られなかった。

しかし、この頃になると、どんなに無謀な若者でも満月の夜にデートしなくなった。

その為、小麦袋男は殺害方法の変更を余儀なくされる。


同年５月４日、満月の夜、テキサカーナから１７キロ離れた農家に小麦袋男が現れる。

ヴァージル・スタークス (３６歳) は夕食を終え、ラジオを聴きながら新聞を読んでいた。

そんなヴァージルを小麦袋男は窓越しから銃を発砲し射殺。

銃声を聞いたヴァージルの妻ケイティーが、居間に向かうと、小麦袋男がケイティーに向かって発砲する。

ケイティーは血まみれになりながらも、隣人に助けを求めに行く。

ケイティーが助けを求めに行っている間、小麦袋男は家に上がり込み、血の足跡を残していた。

通報を受けて警官が駆けつけたが、小麦袋男はすでに車で逃走した後であった。

その後、必死の捜査を進めるも、小麦袋男に関する有力な情報を掴むことは出来なかった。

何故なら、このスタークス夫妻襲撃後、小麦袋男の犯行はピタリと終わってしまったのだ。


現在も犯人はわからないまま、アメリカのみならず、世界でも有名な未解決事件の１つとなっている。



∽ 総評 ∽

「ファントム・キラー」または「ムーンライト・マーダラー」等と呼ばれ、アメリカで最も有名な未解決事件の１つである。

小麦を入れる袋を被り、目の部分だけを開け、銃を持って襲う様は、それだけでも十分にインパクトがある。

この事件は「第二次世界大戦」後間もないアメリカ全土に衝撃を与え、映画『１３日の金曜日』や『落日を恐れた町』の題材にされたほどであった。

しかし、ポールとベティーに限っては両名とも殺され、しかも目撃者がいるわけではないので、実際小麦袋男が殺害した確証はない。

また、犯行を急に止めているが、その理由もわからない。

通常、シリアルキラーは殺人に快感を覚えるので、捜査が大々的になった程度では止めることはない。

ただ、この事件はあくまで生存者がいたから判明しているのであって、生存者がいなければその容姿が世間に知られることはなかった。

もしかしたら自分の存在を知らしめる為に、わざと生存者を残したのかもしれない。



【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★☆
・残虐度 ★★★★★☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★☆☆
・特異性 ★★★★★★★☆☆☆
・殺人数 ５人 (他負傷者４人)
《犯行期間：1946年2月23日～同年5月4日》