
バーナード・ゲッツ (アメリカ)
【 1947 ~ 】
1984年12月22日、アメリカ・ニューヨークで衝撃的な事件が起こる。
バーナード・ゲッツ (1947年11月7日生まれ) という男性が、地下鉄の車内で黒人少年4人に向かって発砲したのだ。
この少年4人は『サブウェイ・ヴィジランティ』というギャング集団のメンバーであった。
1980年代のニューヨークの地下鉄は治安悪化の一途を辿っていた。
当時、ニューヨークの地下鉄では『サブウェイ・ヴィジランティ』が幅を利かせていた。
『サブウェイ・ヴィジランティ』は弱々しい相手を物色すると、ナイフを見せて脅し、金品を奪ったり女性を強姦したりとやりたい放題であった。
その行状に逮捕の為の専用のホットラインが設置されるほど、彼らの存在は恐れられていたのだ。
そんな中、ゲッツによる発砲事件が起こったのだ。
この日、『サブウェイ・ヴィジランティ』の黒人少年4人が、獲物を物色していた。
4人の少年達は、眼鏡をかけた痩せた体型のいかにも弱そうなゲッツを見つける。
本日の獲物を見つけた少年達の内、2人がゲッツに近づき、
「おっさん、財布出しな」
とナイフをちらつかせ脅した。
ゲッツは少年2人を見ると、
「ああ、いいよ。皆で分けなさい」
と笑顔で話し、懐に手を入れた。
すると、ゲッツは財布ではなく38口径の銃を取り出し、少年4人に向かって1発ずつ発砲する。
弾は命中し、全員がその場に倒れた。
4人の内、当たり所がよく軽傷でただうずくまっているだけの少年が1人いた。
すると、ゲッツは
「なんだ、まだ生きてるじゃないか」
と言ってその少年の背中に更に一発撃ち込んだ。
その後、ゲッツは冷静にその場を後にした。
現場は他の乗客が多数いたが、余りの出来事に皆その場に呆然となった。
撃たれた少年達は奇跡的に一命をとりとめたが、追い撃ちされた少年は脊髄を損傷し、後に下半身不随になった。
事件が公になると、全米で注目を集め、ゲッツは逮捕されていないにもかかわらず、ゲッツを擁護する声があちこちで聞かれた。
1週間後の大晦日、ゲッツはニューハンプシャー州の警察署に出頭した。
ゲッツ逮捕後、ゲッツに対する称賛の声が衰える事はなく、ホットラインには数々の意見が寄せられた。
裁判が始まると、市民の声を反映してか、ゲッツは拳銃の不法所持による禁固1年だけという異例の判決となった。
暴行や殺人未遂などの罪には一切問われなかった。
ゲッツの判決が出た夜には、ゲッツを祝してアパートの前で祝賀会が開かれた。
余談だが、このゲッツの事件がきっかけで、ニューヨーク地下鉄の警備を行なっている自警団『ガーディアン・エンジェルズ』の成立に繋がった。
確かに1980年代のニューヨーク市では平均して年間2000件の殺人事件が起こり、60万件以上の重罪事件が発生していた。
これがいかに異常な数字かというと、1980年代10年間の日本の年間平均殺人件数は、約1000件。
日本で1年間に起こる殺人の件数の約倍が、ニューヨーク市のみで起こっているのである。
地下鉄では毎日どこかで火災が発生し、2週間に1回は脱線事故が起きるという異常さであった。
また、地下鉄の電車内はゴミが散乱し、不衛生極まりない状況であった。
無賃乗車は当たり前で、地下鉄公団は年間150万ドルもの損失を強いられていた。
地下鉄内での重罪事件は年間約15000件も発生し、物乞いによる乗客へのいやがらせや軽犯罪などは日常茶飯で、乗客数は史上最低に落ち込んでいた。
そんな中でのこのゲッツの事件は、その後の影響を考えると相当なものであった。
∽ 総評 ∽
ゲッツの犯行は前述したとおり、非難をほとんど受けることもなく、その影響からか4人の少年を撃ったにも関わらず、たった1年の罪で済んだ。
当時のギャングの横暴は凄まじく、ニューヨーク市民が恐怖に怯えていたのは事実だ。
市民も警察の不甲斐なさを嘆いていたのだろう、その中でのゲッツの犯行は称賛されたのだ。
個人的にはアメリカ市民同様、ゲッツに「よくやった」と言いたい所だが、果たして本当にゲッツの行いは「正義」なのだろうか?
確かにギャングの少年4人のやろうとしたことは許される事ではない。
ゲッツに絡む前にも散々悪さをしてきたことだろう。
だからといって公衆の面前で、銃を取り出し堂々と人を撃っていいという事にはならない。
現場に一緒に居合わせた乗客は、ギャング同様、銃を取り出したゲッツに驚いたことだろう。
しかも、ゲッツの場合は「財布を出せ」と言われただけで、この時点ではまだ暴行を受けていたわけではない。
もし、このゲッツの行動が「善」とされるなら、今後、ゲッツのように平時でも銃を持ち歩く人物が増えてもおかしくない (アメリカは銃社会ではあるが、銃を持ち歩くのは禁止されている) 。
公衆の面前で堂々と銃を抜いたゲッツも、ある意味猟奇的ではある。
ゲッツの事件以後、ニューヨークの地下鉄は安全となり、ニューヨーク市での殺人の発生件数は全盛期の64.3%も落ち、770件にまで激減した。
重罪事件も半数ほどの35万件に下落する。
徐々に減ったわけではなく、急に激減したのだった。
明らかにゲッツの起こした事件の影響であり、そう言った広い意味で捉えると、ゲッツの行動は価値が高い。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★★
・残虐度 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★☆☆☆☆☆
・特異性 ★★★★★★★★★★
・殺人数 0人 (負傷者4名)
《犯行期間:1984年12月22日》
コメント
コメント一覧 (37)
結果としては、悪くはならなかったと言うか良くなったんだろうけど、何かもにょもにょとした気分になりますね…
そうなんですよね。
仰る通り何か微妙に納得出来ない部分がありますね。
アメリカのギャングなんて捕まってないだけで人殺しなんて日常茶飯事なので。
ゲッツの事件で犯罪が減ったの事実ですし、確かにこれくらいしないとダメかもしれないですね。
多少致し方ない所はあると思いますが、少しやり過ぎな感は否めないなと個人的には思います。
彼がDQN小僧に発砲していなければNYは今でも治安が悪い都市になっていたかもしれない。何が正義で何が悪かわからないことをこの事件では見事に体現している。
私も他に紹介した復讐の件に比べて彼のはあまり擁護出来ないですね。
確かに当時、ギャングが地下鉄で横暴を繰り返していたとは思いますが、彼はこのギャング3人にまだお金を要求されただけなので、復讐とは言い難いと思います。
仰る通り彼がその後与えた影響はかなり大きいのは間違いないですね。
トドメの一発を撃ち込む当たりは最高です!!
これもひとつのアメリカの正義だと思いますよ。
私は断然支持します。
そういうご意見もわかりますね。
全く賛成出来ない人も出来る人もそれぞれだと思います。
けれど、自らが捕まって刑務所に入れられた際に、先に入っているギャング共にどんな残虐な仕返しをされるかっていうのは想像に難くない。
そういうのまで考慮すると、やはり称賛されるべきだろう。
基本的には称賛される存在なのでしょう。
私は正直何とも言えませんね。
普段当たり前の様にカモにしていたタイプが、淡々と銃をぶっ放す行為は、ハンパなガキ達にとって脅威に思えたのかも。
しかも軽傷で済んでいた奴に「まだ生きているのか」と平然と追加でもう一発撃ち込んでいるし、人は不気味な物を恐れるので、これがもし取っ組み合いの喧嘩の末に悪ガキ達が返り討ちに遭ったとしても、そこまでの抑止力にはならなかったと思う。
ゲッツはガキ達を精神分析し、あえて冷静沈着に事に及んだのだと。
それはあるかもしれませんね。
なめてかかった相手に逆襲される少年たち。
当時の治安の悪さはかなりのもので、このゲッツの逆襲により治安が改善されていったのは事実ですね。
不意討ちからの至近距離とはいえ、こんな落ち着き払って射撃出来る人もそうはいないのでは?
確かにそうですね。
もしかしたら普段から銃の扱いに慣れていたのかもしれませんね。
このクソムシ4匹は初めから強盗目的で絡んできたのですから射殺されるべきでした。
それに当時のギャングは半端ないほど凶悪で、日本の半グレやヤクザもビビるほど凶悪なクソムシの集まりなので退治した青年を褒めるのは当たり前でしょう。
強姦や強盗を起こしていたのならなおさら退治した青年に感謝したくなります。
ただ、それで減刑をしていい理由にはならないと思います。
せめて傷害罪で裁くべきでしょう。
罪をしっかり償ったら許してもいいと思いますが、償う前から許そうとかは私は思えません。
償う前から許しを請おうとするバカたちはおこがましいですね。
償えるまでは許さない。
それができないから死刑が廃止されたり、凶悪犯罪者になめられしまうんですよ!
内容だけみるとこんな事許せないという人もいるでしょう。
ただ、この時のニューヨークの地下鉄はそれは酷い状況で、日本ではとても考えられません。
普通に殺されてもおかしくないような場所だったので、このゲッツの対応は正当防衛ともいえます。
私もせめて多少の罪にはとうべきだったと思います。
そこから更にエキサイトしてエスカレートしていかなかったのは、現実とフィクションの差でしょうかね。
映画を知りませんがそうなんですね。
仰る通り映画と現実の違いでしょうね。
倒れた人間にさらに追い討ちで、撃つあたり個人的ですが、相当な怒りを感じていたのでは。
そう考えるとこれもある意味復讐なのかも。
その可能性はありますね。
ただ、その怒りを抑えて淡々と冷静に事を進めるのは凄いですね。
けどナイフを出して人を脅せば射殺されても仕方なし、ですね
当時ギャングは当然のように殺人を行う社会状況なので文字通り「やらなければやられる」で現在とは違うものと思います
中途半端に生かして帰したら仕返しに来ますし、身を守るためにはトドメを刺そうとするのも当然かと
結局司法や治安維持機構がまともに機能していないからそうなるわけで
やむなくやった事に無力な司法が文句をつけるのもおかしな話です
結果をみても彼がやったことは「社会的に正しい」となってしまいますね
「やり過ぎ」という意見も多いですが、私もこの場合はやむを得ないと思いますね。
そのままナイフで刺される可能性もあるわけですし。
やはりこの事件の後の世間の声が全てを物語っていると思います。
仰る通り警察や司法がまともに機能していないからこうなってる部分はありますね。
少年だからどうこうではなく、社会の秩序を乱し、不当かつ不条理に財産を奪い心身を傷つける連中に容赦はいらないと思います。
クズ連中は弱肉強食をモットーに好き勝手やってるんですから、お互い様です。
彼の行為でどれだけの人が起こりえた犯罪から逃れられたか、また、社会的にも大きな経済的利益を生じさせています。
確かにそうですね。
犯罪が減った事が全てでそうなったのなら良しですね。
私もお互い様で自業自得だと思うのですが「復讐は認められない」とか「こんな事が許されるのなとんでもない世界になる」とか言う人も多いんですよね。
あと被害者が少年というのも反対派の意見ですね。
仰る通り年齢なんて関係ないし結果論ですが効果は絶大ですね。
ドキュメンタリーでは四人の若者はとくに財布を出せといったことはなく、ゲッツが黒人の少年が向かいに座ってて、笑って目が光ったからこいつらには絶対襲われる。だから殺意をもってやった。みたいな描き方だったでした。
ゲッツの自白映像もどことなく不気味な感じでしたが。
民事裁判でゲッツは「ニガーとヒスパニックは一掃すべき」「僕がうった連中は社会の欠陥だ」「ダレル(うたれた黒人)の母親は流産すればよかった」などなどこの人もだいぶ問題児は気もします。
真実がどこにあるか混乱しますが、この事件で治安がよくなったのは結果としては良かったのかなと。
当然加害者家族には嫌がらせの手紙が多数ありましたが、最近の正義のためならなにしてもいいという風潮ふくめなくなりませんね。
こんにちわ。
なるほど、そのドキュメンタリーではそのようになってたんですね。
私もゲッツのしゃべっている映像を少し見た事ありますが、感情のない感じで不気味でした。
その発言はかなり問題ですね。
治安が良くなったという事実はあるので何かやるせない結果ともいえます。
残りの3人の脊髄損傷させなかったのは悔やまれます、明らかに失敗です
気が動転したんでしょう
ゴミどもにこんな身体で生きているなら死んだ方がマシだと後悔させるべきでしたね
まあそこは所詮素人ですからね。
確かに死んだ方がましだと思わせて一生後悔させたかったですね。
>読者さん
ゲッツの行動が100%正しく皆やるべきたとは思いません。
ただ仰る通り治安が良くなったのは事実なのでそこを考慮したのは良い事だと思います。
ゲッツの人となりが分からないのに、手放しで賞賛してる事は異常だと思う。これは、復讐ではなく無差別な制裁、見せしめではないでしょうか。
私的復讐とは一線を欠く物でしょう
賞賛というのは流石におかしいですね。
地下鉄という公共の場で銃を抜いて発砲しているわけですし。
ただ撃たれる側にも問題があるのは間違いなく、仰る通り復讐とは異なりますね。
検察側が「NYが嫌なら出ていけばいい」と言って住民から怒りをかったのと、陪審員が白人だから無罪、という印象です
ゲッツは以前ひったくりにあってからかなり警戒心が強くなったようです
殺すつもりだったとかなり過激な事も言っていました
政府は何もしない、ギャング達が犯罪を犯してもすぐに出てくると怒っていました。これはその通りだと思います
手放しで賞賛は出来ませんがゲッツがやらなくても同じような事件は起きたかと思います
個人的には治安を良くしたという点は称賛されてもいいと思いますが、それとゲッツの罪を天秤にかけてはいけないと思います。
流石に1年は舐めてますよ。
せめて10年程度は刑務所に入れるべきだと思います。
私もそう思います
犯罪件数が大幅に減った、ガーディアン・エンジェルズが出来たり良い影響がありますね
本当に1年は短すぎます。きちんと裁かれるべきでした
本人も殺すつもりだったと言い切っていたから殺人未遂ですよね
その映画は弱そうな壮年ビジネスマンの主人公が地下鉄や夜の路上で襲ってくる暴漢達を冷酷に撃ち殺す内容なのですが、地下鉄で絡まれるシーンでは倒れた相手の背中をダメ押しで撃つほぼそっくりな場面もありますし時期的にも2作目が公開されてブーム真っ只中なのでバーナードが少なからず影響を受けて行動したのではないかと思ってしまいました。