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キャサリン・ナイト (オーストラリア)
【1955~ 】



1994年オーストラリア・アバディーンでの出来事である。


妻との離婚後、アバディーンに越してきたジョン・プライズは、ここでプライズの運命を大きく変える女性と出会う。


その女性の名はキャサリン・ナイト。


食肉工場で働くナイトは、美人で優しくとても気の利く女性であった。


プライズはすぐに恋に落ち、ナイトはプライズの前妻との間にできた子供達とも仲良くなり、2人は一緒に暮らし始めることになった。

理想の女性との生活だが、この時、プライズはこれから自分の身に降りかかる恐ろしい出来事などもちろん知る由もなかった。


一緒に暮らし始めると、次第にプライズはナイトの中にある「異常」な部分を知る事となる。


それはナイトの気性であった。


普段はおとなしいナイトだったが、些細なことで突然ヒステリックになり、プライズに暴力を振るった。

だがその後、冷静さを取り戻し、いつものおとなしいナイトに戻る。

プライズはこんなナイトにとまどいながらも生活を共にしていた。


そんな生活が3年続き、ナイトは結婚の約束をいつ果たすのかと常にプライズを責めるようになっていた。


プライズはナイトのこの異常性の為に、結婚を先伸ばしにしていた。

ナイトとの結婚について考え直していることがわかるとナイトはある行動に出る。


数日後、仕事を終えたプライズは上司に呼び出された。

ナイトから送られたビデオテープに映っていたのは救急箱。

実はそれは会社からこっそり持ち帰ったものだった。

この事件のおかげでなんとプライズは会社をクビになってしまう。


次第にエスカレートしていくナイトの行動に悩んだプライズは、ある人物に相談してみることにした。


その人物とはデイビット・ケレットという男性で、キャサリンの元夫であった。

デイビットもまたキャサリンの激しい気性の餌食となっていた。


1973年18歳で出会い結婚したナイトとデイビットだったが、すぐにケンカが絶えなくなっていた。

やがて2人の間に長女メリッサが誕生。

これでナイトも平穏になるかと期待したのだが、突然の逆上は続いた。


帰宅が30分遅れたデイビッドをアイロンで殴るなど、度重なる暴力に耐え切れなくなったデイビットは家を後にする。


だがその後、恐ろしいことが起きた。

なんとデイビットに捨てられた腹いせに、ナイトは自分の赤ん坊んを線路に置き去りにしたのだ。


更にデイビットの浮気相手だと思い込んだ女性に襲い掛かりもした。


デイビットはナイトも苦しんでいるんだろうと考え、ナイトともう一度やり直してみようと考えた。


やがて、2人の間には次女のナターシャが生まれた。

しかしナイトは全く変わっていなかった。

デイビットが外出すればすぐに浮気を疑う。

また、デイビットに捨てられるのではと考えると、もう感情は抑えられず、やはりうまくはいかなかった。


その後もナイトは恋人ができる度、相手に暴力を振るうということを繰り返し、誰とも上手くいく事はなかった。


そしてそんな時、出会ったナイトの「次の獲物」がジョン・プライズだというのだ。


プライズはデイビッドの話を聞き、ナイトとの別れを決意した。

家に帰るとプライズはナイトを家から追い出した。

だが、ナイトは諦めなかった。


何度もプライズの元を訪れ復縁を求めた。

これにはプライズの胸も痛んだ。

基本的に普段はやさしく気の利く女性であり、ナイトの暴力さえ無ければプライズにとってはナイトは最高の女性だった。

そして、そんなナイトの姿を見ていられなくなったプライズはナイトを受け入れてしまう。


プライズはとても良い男性だったのだろう。

だが、この情が後に自らを破滅に導いてしまう。


寄りを戻した2人だったが、その後もケンカが絶えることはなかった。


そして、とうとう事件が起こってしまう。

いつものようにヒステリーを起こしたナイトは、手に持ったハサミでプライズを一突きする。


この事でやはりナイトとはやっていけないとはっきりと認識したプライズは、今度こそナイトと別れることにした。


2000年3月1日、プライズの家の前に、ナイトの姿があった。

だがプライズの決意は固かった。

自分の荷物をまとめるナイトに復縁の可能性をはっきりと否定した。


その夜、寝室で先に眠ってしまったプライズの前にはナイトが佇んでいた。

そして、食肉用のナイフをおもむろにプライズに振り下ろしたのだった。


ナイトはプライズの皮をその場で剥ぐと、剥いだ皮を玄関の鉤に引っかけた。

また、肉はいくつかのブロックに分けて台所に運んだ。


その後、この肉と頭を野菜とグレービーソースで煮込み、スープをこしらえ、プライズの3人の子供たちにネームカードを添えて提供した。

そして、ナイトは子供たちに

「しっかりと記憶に刻むといいわ。これがあなたたちのお父さんの最期の姿よ」

と言ったという。


翌日、プライズが出勤しないことを心配した上司からの通報で、警官がプライズの家を訪ねる。

すると、プライズは全身37箇所も刺され、死亡していた。


稀に見る凶悪な殺人事件に、オーストラリア中が注目した。


公判では精神鑑定も問われたが、これまで4人の子供をきちんと育てていること、ナイトの家から殺害の模様を収めたビデオが見つかったことで、犯行は計画的かつ冷静な行動だったと判断された。

ナイトは事件の夜の記憶は全くないと主張したが、鑑定にあたった精神科医は
「被告は自分が何をしているかはっきり認識できる状態だった」
と判断した。


2001年1月18日、ナイトにはオーストラリアの最高刑である
「仮釈放なしの終身刑」
が下された。

実はナイトはオーストラリアにおいて、唯一の終身刑を下された女性である。


現在もナイトは刑務所で服役中である。



∽ 総評 ∽

ヒステリックな女性はもちろん沢山存在するし、嫉妬深い女性ももちろん世の中には沢山いる。

ただ、ナイトの場合は常軌を逸していた。


結婚生活中に、夫の義歯を粉々に砕いたり、生後8ヶ月の子犬の喉を切り裂いて夫の枕元に置いたりするなど、その行動は異常極まりない。

しかも、ナイトの酷い所は、その実の父親の肉を子供たちに食べさせた事だ (プライズの子供には提供したが、自分の子供に提供したかは不明。また、ナイト自身も食べたかはわからない) 。


以前も述べたが、女性は性別的には男よりもむしろ殺人に向いている。

生理現象により、日常的に血を見ることに慣れているし、逮捕後、男は狼狽するが、女性は肝が座っているようで、食事も睡眠も普通にとる人が多いらしい。

しかも、ナイトの場合は職業柄、余計に抵抗はなかったのかもしれず、解体もお手の物だったにちがいない。


以前掲載したローリー・ダンもそうだが、女性がひとたび猟奇性を発揮すると、想像以上に恐ろしい存在になると痛感させられる。



【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★☆
・残虐度 ★★★★★★★★☆☆
・異常性 ★★★★★★★★★☆
・特異性 ★★★★★★★★☆☆
・殺人数 1人

《犯行期間:2000年3月1日》