
アイリーン・ウォーノス (アメリカ)
【 1956 ~ 2002 】
本名アイリーン・キャロル・ピットマンは、1956年2月29日、アメリカ・ミシガン州ロチェスターで生まれた。
ウォーノスの出生は悲惨そのものだった。
ウォーノスの両親はティーンエイジャーで、母親に至ってはわずか15歳であった。
しかも父親は精神病の患者、母親はアルコール依存症というどうしようもない家庭に生まれた。
ウォーノスが生まれる2ヶ月前に両親は離婚し、母親はウォーノスが4歳の時に兄妹 (1つ上の兄がいた) を捨てて出て行ったので、兄妹は祖父母に引き取られた (ちなみにその父親は1969年に13歳の少女強姦で有罪となり、服役中に自殺している) 。
祖父母に引き取られ、大切に育てられるかと思いきやこの祖父母2人もまたアルコール依存症で、日頃からウォーノスを虐待した。
しかもその祖父は、虐待だけでなく、実の孫であるウォーノスをレイプした。
こんな環境下で、ウォーノスがまともに育つわけもなく、幼少の頃からその性格が歪み、わずか13歳から手当たり次第、性行為を行うようになるのだが、その中には実の兄も含まれているという異常さだった。
14歳の時、父親のわからない子供を妊娠し、その子供を1971年に私生児として出産する。
子供はすぐに養子に出された。
ウォーノスは森の中に放置された廃車の中で暮らし、後に未婚の母親たちの為の施設に送られる。
1971年、アルコール依存症の祖母が亡くなり、売春婦として生計を立てていたウォーノスは、1974年に飲酒運転中に車から銃を発射し、逮捕される。
その後、ミシガンに戻り、1976年にはバーでの暴力行為で再び逮捕されるが、ウォーノスはその時の罰金を、先日、喉頭がんによって21歳という若さで死去した兄の生命保険で払った。
同年、ヒッチハイク中にフロリダで69歳の裕福な男性と出会い、2人はすぐに結婚する。
この結婚は彼女の人生を変えるチャンスであったが、ウォーノスは夫に辛く当たり、バーで暴行事件に巻き込まれるなどした為、1ヶ月後に結婚無効を申し立てられてしまう。
1981年、ウォーノスはフロリダのコンビニに、ビキニ姿で強盗を働いた容疑で逮捕され、翌年刑務所に送られる。
そして、13ヵ月後に釈放された。
1984年には、銀行で偽造小切手を使用しようとした容疑で逮捕される。
1985年、12月には銃と弾薬を盗んだ疑いがかけられ、11日後には失効している運転免許で運転していた為、拘束された。
1986年1月、重窃盗罪で逮捕された。
マイアミ警察はウォーノスが運転していた盗難車からリボルバー銃と弾薬を発見した。
同年、ゲイバーで24歳の女性と出会う。
この出会いが、ウォーノスを更なる狂気に誘うことになる。
ウォーノスはその女性とすぐに恋人同士になり、その女性とのレズ行為に溺れ、一緒に暮らすようになった (それまでレズ行為に走ってなかったウォーノスが、急にレズ行為に走った理由はよくわからない) 。
ウォーノスの精神はすでに崩壊している為、レズ行為に抵抗がなかったのかもしれない。
この女性に、女性は差別され男に虐げられているという理屈を聞いたウォーノスは、自分がこんな境遇になったのは、全て男が悪いのだと考える。
そして、世の中の全ての男を殺し、復讐するのだと心に決める。
1988年3月、バスの運転手に暴行を働いたと訴えられた。
ウォーノスは運転手が口論の末に彼女をバスから押し出したと主張した。
同年7月、アパートで無許可でカーペットを剥がし、壁を塗り替えるなどの破壊行為により大家から訴えられた。
1989年頃、ウォーノスの行動が明らかに常軌を逸脱していく。
前にも増して好戦的になり、出かけるたびに誰かと口論を引き起こし、実弾を装填した銃を携帯するようになる。
売春と盗みで生計を立てていたが、娼婦としては高齢であったことなどから、なかなか客がつかなかった為、金銭的に非常にきつくなってくる。
同年、ついにウォーノスは初めての殺害を行う。
ウォーノスは売春としてやってきたTV修理業を営む男性客 (51歳) を射殺する。
その後、重機オペレーター (43歳) を射殺し、ロデオライダー (40歳) を射殺する。
キリスト教系新興宗教団体の伝道師 (65歳) を射殺し、車は発見されたが遺体は見つからなかった。
トラック運転手 (50歳) を射殺し、元警察署長 (56歳) を射殺。
最後にトラック運転手 (60歳) を射殺した。
ウォーノスは犠牲者の1人の車を奪い、その車を運転中に事故を起こしたことから捜査線上に浮かび、数ヶ月後に潜入捜査官の手により逮捕された。
ウォーノスはレイプされそうになった所を撃ったと言って、正当防衛を主張したが、1992年に有罪判決を受けた。
ウォーノス6つの殺人で死刑となった (1件は遺体が見つからなかった為、起訴されなかった) 。
ウォーノスは自分の犯した犯罪に関して、辻褄の合わない供述をした。
7人の男性を別々の機会に殺害したことを語っている。
ウォーノスは彼らにレイプされたと主張したが、後にその主張を撤回している。
最初の死刑判決後、それこそが自分が望んでいるものだと語った。
2001年になると、なるべく早く死刑が執行されるようにと働きかけだした。
ウォーノスは
「私はあの男達を殺して、冷酷に金品を奪った。そしてもう1度やるだろう。だから自分を生きたままにしておくのは何の益にもならない、また殺すと思うから。自分は法的能力があり正気で、真実を語ろうとしている。私は人間を憎み、また殺人を犯すだろう」
と語った。
2002年10月9日、薬物注射によって死刑が執行された。
享年46歳。
ウォーノスは1976年の最高裁による死刑解禁判決以来、アメリカで死刑になった10番目の女性であった。
∽ 総評 ∽
ウォーノスはアメリカはもとより、世界でも有名な女性シリアルキラーで、金銭や愛憎による殺人ではなく、快楽として人を殺した本格的な女性殺人鬼であった。
しかも、ウォーノスの凄いところは、相手がひ弱な女性や子供とかではなく、全て男性というところで、男性ばかり殺害した女性というのは極めて珍しい。
世界共通で男性の犯罪率が多い理由は、アンドロゲンの量が男性が女性の40倍多い事で説明がつく。
アンドロゲンとは、男声の思春期に多く分泌され、男性としての成長はもちろん、多いと攻撃性等も高くなることがわかっている。
その為、女性の犯罪は、特に殺人や強盗といった凶悪犯罪は少ないのだが、本件のウォーノスのように稀に凶暴な女性も存在する。
ウォーノスの場合、あまりに悲惨な幼少期を過ごした為、性格が歪み、殺人鬼になってしまったのだが、ウォーノスの場合、自ら進んで破滅の道を歩いていたように感じられてならない。
ウォーノスは幸せな生活を過ごしている自分を想像できなかったのではないだろうか。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★☆
・残虐度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★★☆
・特異性 ★★★★★★★★★★
・殺人数 7人
《犯行期間:1989年11月30日~1990年11月19日》
コメント
コメント一覧 (6)
下手なホラー映画より怖い。
子供はトラウマ必死でしょう。
これだけの異常者にも拘わらず、
死刑前に語った言葉が非常に冷静で客観的ですね。
己の行為を知りつつ、純粋に殺害という目的を遂行した、
ある意味本物の殺人鬼と言えるでしょう。
本当ですね。
典型的な破綻した異常者という面構えですよ。
女性のシリアルキラーは原則2種類とされていますが、このアイリーン・ウォーノスはその1つと言われています。
その犯行は「突発的で衝動的、容赦なく相手を殺す」そうです。
仰る通り生粋の殺人鬼だと思います。
、そしてこの女性は山小屋暮らしの時、指を1本か2本無くしてるみたいです、、私が彼女なら、、子供の時に死んでるなぁ、、悪い人、凶悪犯ですけど強い人だとおもいます。
『モンスター』という映画ですね。
ウォーノスをシャーリーズ・セロンが確か演じてたと思います。
個人的には子供や高齢者といった社会的弱者ではなく男性を標的としている所がまだましだと思いますね。
誰も信頼できなかったアイリーンの唯一の存在だったティリアの裏切りで全てを自白したと書かれていました。
壮絶な人生でまさにモンスターな彼女ですが、彼女から見た世界は自分の悲惨な人生を映画やコミック等金儲けに利用される狂った世界だったのでしょうね。
恋人いましたね。
私は「モンスター」というウォーノスを題材にした映画を観た時、恋人の存在の大きさがクローズアップされてましたね。
彼女の悲惨な生い立ちや生活の歩みを知れば成るべくして成った怪物ですね。