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メルビン・イグナトウ (アメリカ)
【 1938 ~ 2008 】



メルビン・ヘンリー・イグナトウ (1938年3月26日生) は、ブレンダ・スー・シェーファーと1986年から交際していた。

しかし、シェーファーは日頃からイグナトウに虐待されている事に嫌気がさし、関係を終わらせようと考える。

その事を知ったイグナトウは元ガールフレンドのメアリー・アン・ショアにシェーファー殺害を手伝って欲しいと頼んだ。

2人はショアの家にシェーファーを誘い殺害する計画を立て、その為の準備を数週間に渡って行う。

ショアの家が悲鳴や絶叫によって音が漏れないのか、また、家の背後にある森で穴を掘った。


1988年9月23日、イグナトウはシェーファーに会うと、宝石を返す代わりにショアの家に誘った。

そこで、シェーファーに銃を向け、家の中に閉じ込めると、目隠しして猿轡を填めた。

そして、シェーファーにストリップを強要し、卑猥なポーズをとらせショアが撮影した。

その後、シェーファーを強姦し、肛門姦も行った。

強姦が終わるとシェーファーを殴り、最後はクロロホルムで殺害した。

2人はシェーファーの遺体を事前に掘っていた穴に埋めた。

イグナトウはショアからシェーファーを撮影したフィルムを受け取った。

警察はすぐにイグナトウを疑ったが、シェーファーの失踪に結び付ける目撃者や物的証拠を見つける事が出来なかった。

また、シェーファーの遺体すら発見する事が出来なかった。

警察はイグナトウに事情聴取を行うが、イグナトウは何も知らないと述べた。

ただ、イグナトウはショアの名前を出した為、警察はショアの事情聴取を行った。

ショアは最初は何も知らないと話したが、最終的にシェーファー殺害計画を手伝った事を認めた。

ショアはシェーファーを拷問しているイグナトウを写真に撮ったと述べた。


1989年1月10日、ショアは捜査員をシェーファーを埋めた場所へ案内すると、酷く腐敗が進んだシェーファーの遺体が見つかった。

警察は遺体が見つかった事でイグナトウを逮捕した。

早速シェーファーの遺体の剖検を行い、拷問を受けていた痕跡は見つかったが、腐敗が進み過ぎて血や精液といったDNAの証拠を発見出来なかった。


1991年、検察はイグナトウを殺人罪で起訴するが、相変わらず証拠は何もなかった。

その為、記録されたイグナトウとショアの会話に頼る事となるのだが、イグナトウの弁護士はショアが法廷にミニスカート姿で現れ、証言中に笑った様子を見てシェーファー殺害はイグナトウではなくショアであると主張した。

しかし、陪審員はイグナトウを無罪とし、判事は判決に対してシェーファーの家族に謝罪の手紙を書くという異例の措置をとった。

シェーファーの両親は裁判が始まる前に死亡しており、家族や友人によるとシェーファーの死によるショックやストレスで寿命が縮まったと話していた。

イグナトウの無罪判決から6ヶ月後、イグナトウの弁護の為に売却された古い家で作業にあたっていたカーペット敷きの職人が、廊下にある長いカーペットを引き上げた。

すると、その下にあった通気孔からビニール袋を見つけた。

ビニール袋は通気孔にテープで留めてあり、中には宝石と3本の未現像のフィルムが入っていた。

フィルムを現像すると、ショアが説明した通りシェーファーが拷問・強姦される様子がはっきりと写し出されていた。

イグナトウの顔は写真には写されてなかったが、体毛のパターンと黒子の位置が完全に一致した。

だが、アメリカの法律では1度判決が確定した場合、同じ犯罪において裁判で裁く事が出来ないと決められていた。

そこで、イグナトウを殺人の裁判の際に虚偽を行った偽証罪で起訴した。

裁判でイグナトウは殺人の裁判でもう裁かれない事を承知していた為、シェーファー殺害について詳細を語った。

イグナトウは法廷にいたシェーファーの兄弟たちに向き直り、殺人について述べたが彼女は安らかに亡くなったと主張した。

イグナトウには懲役8年が言い渡され、5年間服役した後、釈放された。

その後、イグナトウは別の偽証罪で再び起訴され、懲役9年が言い渡された。


2006年12月、イグナトウは仮釈放となった。

釈放後、イグナトウはケンタッキー州ルイビルに戻り、シェーファーを殺害した家から4マイル (約6km) 離れた家に住んだ。


2008年9月1日、イグナトウが自宅で死亡しているのを発見される。

享年70歳。

検死の結果、偶然に頭や腕を切った事による失血死と判明した (おそらく転んだか何かが落下して切ったと思われる) 。

遺体の様子を見た息子は、
「転んでしまったように見えた。彼は台所に行こうとし、そこに血痕があった。その後、自分の部屋に入ろうとしたようだった。しかし、その前に力尽きていた
と話し、また、
「彼はおそらくルイビルで最も嫌われている男の1人であろう。彼は人目を気にして静かに暮らしていた」
と語っている。

遺体を発見したのは隣人だが、発見する前夜に声を聞いており、
「一晩中助けを求める声が聞こえた。彼はイエスに迎えに来て欲しいと頼んでいた」
と述べている。

偽証罪で裁かれたイグナトウに対し、ショアは証拠改竄の罪で起訴され、短い刑を言い渡されている。

この事件は2000年3月15日に放送されたテレビシリーズ「American Justis」のシーズン9、エピソード7「Getting Away with Murder (殺人で逃げる) 」で紹介されている。


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                      ブレンダ・シェーファー



《殺人数》
1人

《犯行期間》
1988年9月23日



∽ 総評 ∽

アメリカの法律では1度無罪判決が確定した場合、その後、どんな証拠が出ても同じ裁判で裁かれる事はない。

今回は殺人を犯していた事について裁判で嘘をついていた事になる為、偽証罪で裁かれる事となった。

イグナトウもその事を知っており、偽証罪の裁判でわざわざシェーファー殺害を認め告白している。

この法律自体の存在は以前より知っていたが、こんな制度が何故存在しているのか理解出来ない。

1度、無罪となった後に有罪となるとショックを受けるからだろうか。

仮にそうなら犯罪者にそんな気をつかう必要もないし、むしろ絶望を味わす事の出来るチャンスである。

私が犠牲者の遺族なら当然納得出来るわけがなく、裁判でイグナトウに告白された遺族の絶望と怒りは想像に難くない。

証拠が何も出なかったのなら致し方ないが、しっかり出て来たのなら普通に裁判をやればいいではないか。

その事の何がいけないのか。

リンチにでも遭って殺されれば少しは気が収まると思うのは私だけだろうか。