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アイラ・アインホーン (アメリカ)
【 1940 ~ 2020 】



アイラ・サミュエル・アインホーンは、1940年5月15日、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれた。

家はユダヤ系の中流家庭で、アインホーンはペンシルベニア大学在学中から反体制・反戦活動の一環として「Green Politics (緑の政治) 」グループに参加した。

アインホーンには5年付き合っていたホリー・マダックスというガールフレンドがいた。


1977年、マダックスはアインホーンと別れニューヨークへ向かった。

そこでソウル・ラビダスという男性と知り合う。


同年9月9日、マダックスはアインホーンに私物を捨てられる前に取り戻そうと、以前、同居していたフィラデルフィアのアパートへ戻った。

しかし、以降マダックスは消息を絶ってしまう。

数週間後、フィラデルフィア警察がアインホーンを訪ね、マダックスの消息について質問した。

アインホーンは、

「近隣のスーパーに豆腐ともやしを買いに行ったまま帰って来なかった」

と話した。

しかし、アパートの近隣住民から腐敗臭がすると苦情が入る。

また、アインホーンのアリバイについて疑問が生じ、警察はアインホーンを徹底的に調査する事にした。


1979年3月28日、警察はアインホーンの自宅のクローゼットの中にあったトランクから腐敗したマダックスの遺体を発見する。

逮捕されたアインホーンは弁護士の申し立てにより保釈金は4万ドル (約800万円) に引き下げられた。

アインホーンは裁判に先駆け、保釈金の10%の4000ドル (約80万円) を支払い保釈された。


1981年、裁判を目前に控えたアインホーンは保釈されるとヨーロッパに逃亡した。

アインホーン不在のまま欠席裁判が行われ、仮釈放のない終身刑という判決となった。

ヨーロッパに逃亡したアインホーンは ″ユージン・マロン″ という偽名を名乗り、スウェーデン人女性アニカと結婚する。


17年経った1997年、フランス・シャンパーニュ=ムートンでアインホーンは逮捕された。

アメリカはアインホーンの引き渡しを要求するが、フランス当局は欠席裁判で終身刑が下されているといえど、引き渡した場合死刑になる可能性があると考える。

その為、死刑が廃止されたという保証がない限り引き渡しに応じないと述べた。

ペンシルベニア州は事件発生時は死刑を執行していないとし、アインホーンを死刑にする事はないと主張した (実際ペンシルベニア州はほとんど死刑を執行しておらず、1976年にアメリカで死刑が復活して以降、1995年に2人、1999年に1人執行されただけであった) 。

しかし、フランス当局や欧州人権裁判所が引き渡し要求を拒否した。

これを受け、アメリカ連邦政府は当時のフランス大統領ジャック・シラクに書簡を送る。


1998年、ペンシルベニア州議会で被告人が欠席した状態でも有罪に出来る法案 (通称、アインホーン法) が通過された。

アインホーンの身柄引き渡しを遅らせる為に弁護士は法案が違憲だと主張した。

しかし、フランスの裁判所が海外の法律に意義を申し立てる権利はないとしたが、フランスの政治家の多くがアインホーンをアメリカへ渡すべきではないと主張した。

結局、裁判所はアインホーンのアメリカへの引き渡しを命じた。

アインホーンはアメリカへの引き渡しを逃れる為に自らの喉を切り割こうとしたり、欧州人権裁判所に訴えたりするが全て失敗に終わる。


2001年7月20日、アインホーンの身柄はアメリカへ引き渡された。

アインホーンは、

「私はCIAの超常現象の軍事研究について知り過ぎた為、私を罠にはめる為に (CIAが) 彼女を殺害した」

と自己弁護を主張した。


2002年10月17日、2時間の審議の末、アインホーンは有罪となり仮釈放の可能性がない終身刑が言い渡された。


2020年4月3日、ペンシルベニア州のローレル・ハイランド矯正施設で死去した。

享年79歳。

死因は自然死であり、COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) によるものではないと発表された。

このアインホーンの事件は様々な書籍やテレビ等メディアで取り上げられている。



《殺人数》
1人

《犯行期間》
1977年9月9日



∽ 総評 ∽

『The Unicorn Killer (苗字のアインホーンをドイツ語訳が「Unicorn」) 』と呼ばれ、元恋人の女性を殺害したとされるアインホーン。

アインホーンは保釈中にヨーロッパへ逃亡し、15年以上経った後に逮捕されたが、フランス当局は引き渡しを拒否した。

これは現在でもある事だが、理由が「アメリカへ引き渡すと死刑になるかもしれないから」という信じられないものであった。

フランスで犯罪を犯したアメリカ人を引き渡せというのなら拒否するのもわかるが、アメリカで犯罪を犯した鬼畜を「引き渡せ」という事を拒否する理由は何一つない。

相変わらず人権という意味を履き違えた偽善大国といえるが、裁判所の「他国の司法に異議を唱える権利はない」という主張によりアメリカへ引き渡される結果となった。

裁判所はまだ機能しているといえる。

ただ、そもそも保釈しなければこんな事態になっていなかったわけであり、(凶悪犯罪に対する) 保釈という百害あって一利もない制度なんて廃止すべきである。