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陸 金鳳 (ルー・ジンフェン 中国)
【 1975 ~ 1995 】



陸金鳳は、1975年、中国・山西省運城市懐郷陸各荘で生まれた。

生まれて間もなく父と祖父が相次いで事故死してしまい、陸は村民から蔑ろにされてしまう。

当時の中国の特に田舎の村は、父親のいない家庭は疎まれ蔑まれた為、陸自身村民に生き埋めにされた事があった。

その時は母親によって助けられるが、その後も村民らに差別や虐待を受けた。


1988年、唯一の味方である母親が死ぬと、陸は継父と叔父に棒で殴られ家から追い出される。

この時、陸はまだ13歳であった。


陸は路上生活を始めるが、1989年、ホテルの警備員が飼っていた犬に咬まれ重傷を負い、激痛で苦しみもがいている所をその警備員によってゴミ捨て場に捨てられる。

陸は出血しながら歩いたが道端に倒れてしまう。

すると、ホテルの管理人・馬某 (某は本名を避ける際に使用される) に助けられ病院に連れて行かれる。

だが、治療が終わると馬は陸に治療費の請求と共に売春を強要した。


1991年、売春で陸は逮捕され、1年間の再教育が行われた。


1992年、釈放されると実家に戻るが、継父は陝西省西嶺村の李某という男性に陸を1000元 (約1万5000円) で売った。

李は障害を抱えており寝たきりであったが、陸を妻として迎え入れた。

李は優しく誠実であり、陸は人生で初めて静かで穏やかな生活を送る事が出来た。

だが、そんな生活は長続きせず、陸を見て気に入った胡某という男性が2000元 (約3万円) で陸を李から強引に奪った。

胡は地元では有名な悪党であった。

胡は陸を虐待し、また、性奴隷のように扱った。

耐えきれなくなった陸は何度も逃亡するがその都度捕まってしまう。

胡は陸の右足を折り、部屋に監禁した。

数週間経った後、胡が商売で長期間家を空ける事となり、陸の監視を従兄弟である唐某と関某の2人に任せた。

だが、唐と関は何度も陸を強姦し、その為、陸は妊娠してしまう。

唐は自分の子供だと思い、胡が戻った時に陸の自由と引き換えにお金を払い、自身の妻にしようと考える。


1994年の終わりに陸は男の子を出産した。


1995年春節、胡が戻ると、唐は胡を恐れ陸と子供を胡のもとに送り返した。

胡は激怒し、陸の服を脱がすと木に吊るして太腿や下半身をナイフで刺し「裏切り者!」と叫んで拷問を加えた。

その日の夜、唐と関が胡が陸を殺すのではないかと恐れ、家に向かった。

怒り狂った胡を説得しようするが、胡の怒りの矛先は唐と関に向けられ、胡はナイフで唐と関を滅多刺しにして殺害した。

その後、陸を意識がなくなるまで殴り、生まれたばかりの赤ん坊の首を絞めて殺害した。

激痛で意識を取り戻すと、陸は我が子の遺体を目にする。

絶望と怒りに満ちた陸は、眠っている胡を鎌で殺害し、その後、家に火を放った。

村人たちが駆けつけると、全身血まみれの陸が地面に座っているのを目撃する。

その後、村民らによる消火活動が行われたが、焼け跡から胡、唐、関の遺体が発見される。

男3人を陸に殺されたと考えた村民たちは怒り、陸を拘束すると散々殴り、最後は公安に身柄を引き渡した。


1995年、事件は特別事件に分類され、同年3月、陸は逮捕された。

尋問の末、陸は胡殺害を自白した。

西陽県の裁判所は、陸の悲惨な生い立ちに同情はしたものの、殺人の事実と特別に扱った場合全ての犯罪が悪化する事を考慮し、死刑を言い渡した。

陸は判決を不服として上訴するが、却下された。


同年12月24日、銃殺による死刑が執行された。

享年20歳。



《殺人数》
1人

《犯行期間》
1995年2月



∽ 総評 ∽

中国の厳罰については日頃から賛成で世界も見習って欲しいと思っている。

だが、今回の件に関しては流石に死刑は重過ぎる。

陸の人生は悲劇そのものであり一時として休まる事がなかった。

これ以上悲惨な人生を歩む事が出来るだろうかと思えるほどであった。

これが全く関係ない人を無差別に殺害したのならこれまでの凄惨な人生も関係ないが、殺害したのがほとんど殺されそうになった相手である。

むしろ執行猶予にして釈放してもいいくらいだ。

中国の厳罰もこういった場合はもっと柔軟に対応して欲しいものである。