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ロス・ウルブリヒト (アメリカ)
【 1984 ~      】



ロス・ウィリアム・ウルブリヒトは、1984年3月27日、アメリカ・テキサス州オースティンで生まれた。

ウルブリヒトは元ボーイスカウトであり、中でも最高位の「イーグルスカウト」を獲得する程優秀であった (そう簡単に獲得出来ない) 。

ウルブリヒトはウェストリッジ中学校に通い、その後、ウェストレイク高校に進学した。


2002年、高校を卒業した後、テキサス大学ダラス校に全額給付の奨学金で入学した。


2006年、物理学の学士号を取得して卒業した。

その後、ペンシルベニア州立大学に進学し、卒業する時にはリバタリアニズム (個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する考え方) の経済理論に興味を持つ。

ウルブリヒトはルートヴィヒ・フォン・ミーゼス (1881~1973:オーストリア=ハンガリー帝国出身の経済学者。現代自由主義思想に多大な影響を与えた) の考えに共感し、ロン・ポール (1935~ :アメリカの政治家) を支持する。

また、自身の経済哲学について持論を展開し、大学の討論に参加する程であった。


2009年、ウルブリヒトはペンシルベニア州立大学を卒業すると、地元のオースティンへ戻った。

ウルブリヒトは会社に雇われ働く事に興味はなく、自身で起業する事を望んだ。

そして、実際に起業するも失敗に終わる。

その後、ウルブリヒトはデイトレードに挑戦し、ビデオゲーム企業を始めた。

オンライン中古販売「Good Wagon Books」を友人と協力して設立し、それなりの成功を収める。

また、ウルブリヒトは同時に「Tor (匿名化を実現する為の規格及びそのリファレンス実装であるソフトウェアの名称) 」や「ビットコイン」を使用するオンラインのブラックマーケットの設立を模索していた。

そして、TorのサイトとしてIPアドレスを隠す事に成功し、また、ビットコインに関してもやり方次第で高度な匿名性で取引を可能とする事がわかった。


2010年、「Good Wagon Books」のサイドプロジェクトとして自身のオンラインマーケットプレイスの開発に着手し、2011年2月、「シルクロード」という名のウェブサイトを開設する。

「シルクロード」は深層ウェブという隠されたインターネットに存在し、通常のインターネットからはアクセス出来ず、Torを通じてのみ利用できた。

ウルブリヒトは「Dread Pirate Roberts (ドレッド・パイレーツ・ロバート) 」という偽名のアカウントを使用した。

利用者の匿名性が高く、一般にはアクセス出来ない「シルクロード」は、マリファナやLSD、ヘロインやコカインといった禁止薬物、海賊版コンテンツ等、違法な物の売買に大いに利用された。

また、盗まれたクレジットカードやアカウント、ハッキング技術、殺人依頼といった物まで売買が行われ、闇サイトとして一部の者には有名であり、ウルブリヒトは月に約9万ドル (約1000万円) の売上を得ていた。


2013年7月にはユーザーが100万人近くまで増えていった。


しかし、アメリカ合衆国内国歳入庁 (IRS) が「シルクロード」の調査を始め、「ドレッド・パイレーツ・ロバート」がウルブリヒトである事を突き止め、同年10月1日、FBIによって逮捕された。

逮捕されたウルブリヒトは、資金洗浄、コンピューターハッキング、麻薬の不正取引、共謀や殺人の周旋等で起訴された。


2015年2月、ウルブリヒトは全ての罪で有罪判決が下され、同年5月29日、仮釈放の可能性がない終身刑が言い渡された。


2016年1月12日、ウルブリヒトの弁護士は検察側が「シルクロード」の捜査で、DEA捜査官の不正行為の証拠を不法に保留していると主張し、控訴した。

ウルブリヒトは2人の連邦捜査官の汚職は考慮されるべきであり、判決は厳し過ぎると主張した。


2017年5月31日、控訴裁判所はウルブリヒトの控訴を棄却し、終身刑を支持した。


最後に「シルクロード」の自身のリンクページに書かれていたウルブリヒトのコメントで終わりたいと思います。

「人類の弾圧政治と攻撃の利用を廃止する手段として経済理論を用いる。私は組織的な力の行使がない世界に住んでいるような直接的な経験を人々に与える為の経済的シミュレーションを作っている」



《闇サイト運営期間》
2011年2月~2013年10月



∽ 総評 ∽

闇サイト「シルクロード」を作り、莫大な収益を得ていたウルブリヒト。

麻薬取引はもちろん、盗まれた物や殺人の依頼等々、闇サイトらしい通常ではあり得ない商品の売買が行われた。

ウルブリヒトが直接殺害したりしたわけではないが、殺人依頼が行われる場を斡旋している時点で共犯者と言っても過言ではない。

ウルブリヒトは学生生活を送る上で経済に興味を抱き、その思考がウェブサイト作成に至った。

ウルブリヒトは機密性、匿名性を重視していた事から、初めから違法な物の取引を前提としていたのは疑いようがない。

その為、とても許される事ではないが、本人からしてみれば「取引の場を提供しているだけで後の事は知らない」と思っていたのかもしれない。

ただ、ここまでではなくとも、現在も同じような問題が起きている。

特にメルカリでは「電車の席の売買」「甲子園の土」等、数々の取引が問題となり、その度にニュースで取り上げられている。

メルカリ側からすれば「場の提供であって取引内容については自己責任」と思っている節があり、他人事と言いたげな雰囲気がある。

「甲子園の土」は厳密には違法ではないが、電車の席の売買は違法である。

確かに取引する側の質も問われるが、それで利益を上げている以上、「知らぬ存ぜぬ」は通用しない。

提供の場をしっかり管理するのは、運営側の当然の責務であり、犯罪に加担している時点で本来は即刻運営を止めさせるべきである。

ヤフオクやモバオクといった昔から行っているサイトも同じような問題があるのだろうが、メルカリ程問題を聞かないし酷い感じはせず (私が知らないだけかもしれないが) 、やはり管理側の質の問題といえる。

ただ、ウルブリヒトは頭が良く、エンジニアとして優秀な人物である事に疑いはない。

方向性を間違えていなければ、それなりに有能なエンジニアになった可能性があると考えると残念でならない。