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至尊派事件 (韓国)
【 1993 ~ 1994 】



1992年末、キム・ギファンは高所得者を恐喝して金銭を奪って殺害する犯罪組織を結成する計画を立てる。

そこで炭鉱の仕事の時に知り合ったジョーという男性に殺人の事を伏せて計画を話した。

ギファンはジョーが日頃お金に困り、また、性欲が強い事を知っており、話に乗ってくるとふんで話したのだった。

案の定、ジョーは快諾し、ジョーがギャンブルで知り合った友人3人を呼び寄せ、犯罪組織が結成された (『至尊派』の前に1度組織が作られた事はあまり知られていない) 。

しかし、計画の中に殺人が含まれている事を知ったジョーたちが難色を示し、その為、組織は解体された。


1993年初め、行き場のなくなったギファンは放浪生活を送っていた。

そして、元組織の仲間の紹介で「歌姫山荘」という闇賭博場でギャンブルに興じた。

ギファンは犯罪組織を結成する意欲を失っていなかった。

そこで、ギファンは徹底した強固な犯罪組織を作る為に、犯罪関連の書籍を読み漁り、処世術、会話術関連の書籍も読んだ。


同年3月、ギファンは後輩のカン・トンハと接触し、自身の考えた犯罪計画を少しずつ話しながら説得を試みた。

そして、計画を話した後、自らの意思で参加するかどうか決めさせる為に1ヶ月の猶予を与えた。

トンハは積極的に参加し、ムン・サンロクを誘い、また、後輩のソン・ポンウン (18歳♂) も同意し、3人は組織に参加した。

ギファンと3人はチョンジュに移動し、そこで、今後の犯罪の具体的なやり方について議論を始めた。

そして、トンハが刑務所で一緒だったペク・ピョンオクを思い出し、声を掛けて加入させ、また、カン・ウンソプにも声を掛け、組織に参加した。


同年6月、ギファンがギム・ヒョンヤンを誘い参加すると、同年7月、ギファンがリーダー、トンハを副リーダー、ヒョンヤンを行動隊長とし、サンロク、ウンソプ、ピョンオク、ポンウンの7人による組織が結成される。

一般的には『至尊派』と知られる犯罪組織の誕生だが、本来の名称 (本人たちが名乗っていた) は『マスカン』である (『至尊派』というのは後に捜査課長が付けた名前で、組織が「至尊」と書かれたフードを被り犯罪訓練を行っていたという証言と、リーダーのギファンが「至尊」というニックネームで呼ばれていた事から命名した。ただ、マスコミが「香港映画からとった」と間違った情報を流した為、韓国の若者が一斉に香港映画を非難し、問題となっている) 。

1度失敗経験のあるギファンは、組織の鉄の掟を決める。

それは『多くの金持ちを憎む』『1人10億ウォン (約1億円) 集めるまで犯行を続ける』『裏切り者は殺す』『女は母親であっても信じない』というものであった。

組織の規律を守る事を最重要事項とし、参加した以上裏切る事は許されないと強調した。


同年7月初旬夜11時頃、ケリョンのケリョン駅付近で、トンハ、ピョンオク、ポンウンの3人は、仕事帰り1人で歩いていた銀行員チェ・ミジャ (23歳♀) を目撃する。

すると、ポンウンがミジャに襲い掛かり、橋の下に連れて行くと強姦した。

そして、トンハとピョンオクもミジャを強姦した。

だが、元々ミジャを襲う事は計画になく、犯行を反省したトンハはギファンに報告する。

すると、ギファンは顔を見られているから生かしておけないと告げる。

ギファンはヒョンヤンとウンソプと車で現場に行き、ミジャを車に乗せると宿に戻り、シャベルを持って再び車を走らせた。

そして、人気のない山奥に到着すると、ギファンはミジャを強姦する。

ギファンはヒョンヤンにも強姦するよう指示し、強姦した後、

「殺人の練習だ」

と言って首を絞めて殺害した。

その後、ギファンは証拠隠滅の方法を教え、遺体を埋葬させた。

しかし、実際に殺人を犯すと、組織内は動揺し、揺れ始めた。

特にミジャ殺害の要因となったポンウンは、組織で最年少で唯一の10代という事もあり、以降、罪悪感と悪夢にうなされるようになる。


そして、耐えられなくなったポンウンは組織からの離脱を決意し、同年8月、組織の資金を集めた通帳から300万ウォン (約30万円) を引き出して逃走する。

しかし、ギファンが2時間後に事態を把握し、他の組員に組織の規律の為、掟通りにポンウン殺害を指示する。

ポンウンの姉から居住先を聞き出すと、ポンウンを訪ね、今回の事は不問にするからまた組織に戻るよう説得する。

ポンウンは断り切れず、言葉を信じ戻る事に決める。

そして「犬を殺して皆で食べて組織の団結を高める」と言ってポンウンを山奥に連れて行った。

だが、連れて行かれた場所にはギファンが待機しており、ギファンがポンウンの責任を追及し、裏切り者がどうなるかを説いた。

ポンウンは命乞いをするが、ヒョンヤンが煉瓦でポンウンの後頭部を殴り気絶させると、残りの組員が事前に用意していたナイフやツルハシでポンウンを滅多打ちにした。

ただ、ギファンはポンウンへの暴行を指示しておらず、組員はギファンに良く思われる為に競うように暴行したのだった。

ポンウンが死亡すると、証拠隠滅の為に火を付けて燃やし埋めた。

このポンウン殺害により、組織離脱は死を意味し、決して裏切る事は出来ないという恐怖を植え付ける事に成功する。

だが、組員も初めのミジャ殺害には動揺を示したものの、次は裏切り者の殺害であり、殺人に対して罪悪感も抵抗力もなかった。

その後、本格的な犯行に着手する為に、当分の間、アジト建設を目標とし、その資金を集める事に専念する。

支出を減らし、組員全員で肉体労働によりお金を稼いだ。

この時、組員らと一緒に働いた同僚たちは「一生懸命働く好青年」だったと後に語っており、とてもおぞましい犯罪を行っているようには見えなかったという。

そして、ギファンは母親の家を殺人を効率良く行う為の家に改装する事にする。

ギファンは親戚や隣人には

「親孝行の為に家を新しくする」

と言って誤魔化していた。


1994年6月中旬、ヒョンヤンの誕生日の日にパーティーを開いた。

すると、ギファンは先輩からボイラーを直して欲しいと頼まれる。

家に行くと先輩の中学生の姪が寝ており、ギファンはその少女を強姦し、逮捕される。

その為、『至尊派』はギファンの指示の下、副リーダーのトンハが率いる事となった。


1994年7月末、アジトが完成する。

アジトは非常に緻密に設計され、監禁する為の鉄格子付きの地下檻や死体を燃やす焼却炉もあった。

これらには3000万ウォン (約300万円) かけて造られた。

また、疑いを避ける為、建物の外壁をピンクの塗料で塗り、一般家庭のように見せ掛けた。

裁判でギファンは懲役5年が言い渡された為、刑務所から組員に指示する事となった。

アジトが完成したと同時にヒョンヤンの中学校の後輩である武器ブローカーから武器を購入する。

また、現代百貨店のクレジットセールススタッフから高額購入者の顧客名簿を入手する。

当然、殺人に利用すると言えば教えてくれる情報ではなかったので、適当な理由をつけて情報を聞き出したのだった (現在も問題になっている個人情報の流出がどのような恐ろしい結果を招くのか示した最悪の事例と言える) 。

準備が整ったトンハは刑務所にいるギファンの面会に訪れる。

ギファンは

「ベンツやヒュンダイ・グレンジャー (高級セダン) 等に乗る金持ちを狙い、拉致して拷問し、金を奪って殺せ」

と指示する。


③に続く