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レオン・モーザー (アメリカ)
【 1942 ~ 1995 】



1985年、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアで、元陸軍中尉レオン・ジェローム・モーザー (1942年9月15日生) は、元妻のリンダ (35歳) 、2人の娘ドナ (14歳) とジョアン (10歳) を殺害する。

モーザーは3人をフィラデルフィア郊外にあるセントジェームス教会の外で射殺した。

逮捕されたモーザーは3人の殺害を認めた。

実はリンダは殺害される前に何度も当局に助けを求めていた。

リンダと娘は結婚生活の時にモーザーから虐待を受けていた。

離婚した後、リンダは裁判所から保護命令を受け、また、モーザーに対して少なくとも2つの刑事訴訟を起こしていた。

裁判でモーザーは素直に罪を認めた為、有罪判決が下された。

そして、裁判官に対して死刑を求めた。

モーザーは望み通り死刑判決が言い渡され、その後、控訴はせず、刑を受け入れた。


1995年8月15日、致死量の注射による死刑が執行された。

享年42歳。


最後に法廷で裁判官に死刑を求めた際のモーザーの発言で終わりたいと思います。

「私は死刑を要求し、それが出来るだけ早く実行される事を望みます」



《殺人数》
3人

《犯行期間》
1985年



∽ 総評 ∽

妻や娘を射殺したモーザー。

モーザーについては生い立ちから犯行までの詳細がなく、どのような人生を送り犯行に至ったのかよくわからない。

ただ、保護命令や訴えられた事を考えると、おそらく離婚された事への怒りが動機だと推測される。

本人からすれば言い分があるのかもしれないが、暴力を振るっていた時点でとても許されない。

だが、モーザーは死刑を求め、控訴もせずその早期執行を求めた事から、家族が全てであり、生きていても意味がないと思ったのだろう (もしそうなら暴力を振るうなという話だが) 。

モーザーの死刑が執行されたペンシルベニア州だが、全米でも屈指の死刑執行を行わない州であった。

そもそも、モーザーの執行は1976年にアメリカで死刑が復活して以降、ペンシルベニア州では2人目であり、1人目のキース・ゼトルモイヤー (以前掲載) もモーザーが執行されるわずか3ヶ月前に執行されたばかりであった。

しかも、そのゼトルモイヤーの執行自体、ペンシルベニア州としては33年振りであった。

2018年時点で、ペンシルベニア州は1999年を最後に約20年間死刑を行っておらず、これまで執行されたのは (死刑復活以降) わずか3人であった (ただしペンシルベニア州は2015年に死刑を停止している) 

ただ、近年はヨーロッパ諸国を筆頭に世界的にみても死刑を廃止、停止している国が増え、アメリカも死刑の廃止や停止、死刑があっても執行しない州が増えている。

だが、問題なのはそこではない (問題ではあるが) 。

アメリカのほとんどの州は死刑判決と執行数が比例しており、判決が多ければ執行も多く、判決が少なければ執行も少ない、となっている。

しかし、ペンシルベニア州はカリフォルニア州と並び異常で、2018年時点で死刑復活以降、実はこれまで384人に死刑判決が下されている。

この384人というのは全米で5番目に多い数値であるが、384人に死刑判決を下しておいて執行はたったの3人である。

死刑囚に対する執行の割合はわずか「約0.8%」であり、次に少ない (執行0の州を除く) カリフォルニア州ですら976人に対して13人 (割合でいうと1.3%) であった。

ペンシルベニア州とカリフォルニア州という全米でも犯罪の多い州で死刑が執行されないというのは犯罪者からすれば天国としか言い様がなく、死刑囚をこの2州だけで1300人も税金で養っている事になる。

しかも、ペンシルベニア州で死刑が執行されたモーザーを含む3人は、全員が控訴をしなかった。

結局は控訴すれば執行されないというのは明確であり、死刑判決が下されるような凶悪犯罪者たちは「控訴していれば執行されない」という考え方になってしまう。

冤罪の控訴は別として、刑を軽くする為の控訴は控訴中でも容赦なく死刑を執行してもらいたいものである。