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ブレントン・タラント (ニュージーランド)
【 1990 ~      】



2019年3月15日午後1時40分頃、ニュージーランド・クライスチャーチ中心部にあるアルヌール・モスクに、オーストラリア人のブレントン・ハリソン・タラントは車で到着する。

そして、銃で武装しタラントが建物の玄関に向かうと、それを出迎えに来た人を即座に射殺して中に侵入する。

当日は金曜日であり、モスク内は多くのイスラム教徒がいた。

タラントは老若男女問わず約5分間にわたり銃撃を続けた。

その後、1人がタラントから銃を奪った為、タラントは走って車に戻り、約5km離れたリンウッドのモスクへ移動し、そこでも再び銃撃を続けた。

警察はすぐに捜査を始め、その日の内にタラントを含む男性3人、女性1人の計4人が逮捕された。

警察は2ヶ所のモスクで複数の銃器を押収し、車の中から即席の爆発装置も発見した。

タラントは頭部にカメラを設置しており、銃撃の様子をライブ配信していた。

動画には車内で音楽が再生されていたが、これはボスニア戦争でセルビア国家主義の民兵組織が行進曲として使用していたものであった。

また、タラントが使用した銃には白文字でイスラム教徒や移民の殺害で有罪となった男性の名前がびっしりと書かれていた (他にイギリスで起きた児童虐待事件の場所を示す言葉や、欧州諸国とオスマントルコ帝国の歴史上の戦いを意味する言葉が書かれていた) 。

銃撃の際、窓から逃げ出して助かったモロッコ出身の男性は、
「皆走っていて突然次々と倒れ始めた。誰かが窓を割るのを見て自分もそうした。逃げるのが一番安全だった」
と銃撃の様子を語った。

実はタラントは銃撃前に、犯行を2年前から計画していたとする74ページに及ぶ「The Great Replacement (偉大なる置き換え) 」というタイトルの犯行声明をSNS上に投稿しており、それには白人至上主義、激しい反イスラムや移民排斥についての感情を剥き出しにしていた。

声明文の中にはかのアンネシュ・ブレイビクの事にも触れられており、

「ブレイビク氏との接触はごくわずかだったが、私の使命は祝福されている」

とその時の様子が書かれていた (会って話しをしたかのようだが、ブレイビクは厳重な管理下に置かれている為、弁護士は「あり得ない」と接触を否定している) 。

タラントは2017年にヨーロッパを訪れた際に目にした状況に怒りを覚え、銃撃を計画した事がわかった。

また、タラントはIS (イスラム国) 支持者がスウェーデンで起こしたトラック攻撃や、フランスで穏健派のエマニュエル・マクロンが大統領になった事、フランスの人種多様性等を強く非難していた。

タラントは犯行10分前までにジャシンダ・アーダーン首相など70人にこれらの内容が書かれた文書を送付していた。


同日の夜、アーダーン首相が会見を開き、記者団に対して
「テロ攻撃としか呼びようがない。犯人は暴力的な過激右派テロリストだ。このような極端で前代未聞の暴力行為は我が国にあってはならない
と述べた。

また、
「殺人容疑で訴追された容疑者は過激主義の要注意人物として情報当局は警察の捜査対象となっていなかった」
と述べた (当初、タラントの名前は伏せられた) 。

更に
「容疑者は銃砲所持免許を所持しており (ニュージーランドでは16歳から合法的に銃を所持でき、殺傷力の高い半自動小銃は18歳から所持出来る) 、2017年11月に取得していたと聞いている。今後、銃規制を強化していく事を約束する」
と述べた (ニュージーランドでは銃の所持については当然免許は必要だが、アメリカ等と異なりほとんどの銃器は個別に登録する必要がなかった。また、免許取得には犯罪歴や病歴、精神病や家庭内暴力も審査対象となるが、1度取得すると購入する銃器の数に制限はなかった) 。


翌日の16日朝、タラントは裁判所に出廷したが一言も発する事はなかった。

だが、出廷の際、右手と親指、人差し指で「OK」を示すような仕草を行った。

これに対して欧米メディアは、「これは白人至上主義がするホワイトパワージェスチャーだ」と伝えた。


同年3月17日午前9時、ニュージーランド警察は会見で
「今回の事件で起訴されるのは現時点で1人 (タラント) だけだ」
と述べ、タラントによる単独犯と見解を示し、1人は無関係と判断され、女性は釈放された。

現時点で犠牲者は50人 (3歳から77歳) であり、他に50人が負傷、その内、11人が入院し、2人が重体であった。

次回、タラントの裁判は4月5日に行われる予定である。



《殺人数》
50人 (他50人負傷)

《犯行期間》
2019年3月15日



∽ 総評 ∽

モスクに侵入し、イスラム教徒に向かって銃を乱射し、50人を射殺したタラント (2019年3月18日現在) 。

この50人というのはわかっている数としてはオセアニア史上最悪 (これまでの記録は1996年4月28日にマーティン・ブライアントが殺害した35人) 。

世界的にみても2016年6月12日にアメリカ・フロリダ州オーランドで49人殺害したオマル・マティーンの記録を抜き歴代4位であった。

個人的にはアンネシュ・ブレイビクが69人殺害して以降、2位禹範坤、3位マーティン・ブライアントの順位は長らく変動しないと思っていたが、10年も経たない内に大幅に塗り替えられた。

近年の銃乱射による犠牲者数は異常事態といえる。

まだ起こったばかりの事件であり、詳細は完全には伝わっていない。

ただ、動機はイスラム教徒を毛嫌いし、また、白人至上主義による差別的な犯行であり、こういった犯罪者にはよくある典型的な動機といえる。

犯行の一部始終をタラントは頭につけたカメラにより撮影されており、フェイスブック等でライブ配信された。

個人的にモスクに侵入する前の車内で音楽を流し、淡々と準備して犯行を行う様子に戦慄を覚えた。

声明文の中でブレイビクと会って話しをしたと書かれていたが、ブレイビクの弁護士はあり得ないと否定した。

基本的にはあり得ないと思うが、凶悪犯に激甘な北欧司法ではあり得なくもないように思えてしまう。

今後、重体の方も含め負傷者が多いので、もっと犠牲者は増えるかもしれない。