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セイット・デミルチ (トルコ)
【 1966 ~     】



セイット・アフメット・デミルチは、1966年、トルコ・サムスン県ファタサで生まれた。

父親はパン屋であり、デミルチは4人兄弟の長男であった。


デミルチは親友のハビルと子供の頃から家具店で働いていたが、11歳の時、家具店の高齢の店主に強姦された。

また、ハビルも店主に強姦され、それをデミルチは目撃した。

デミルチとハビルは強姦された事を2人の秘密にし、隠し続けた。

しかし、この強姦された事が2人の心に深い傷として残った。

特にハビルのショックは大きく、結局立ち直れないまま、大学生の時に自殺してしまう。

周囲の人達はハビルが何故自殺したのか理解出来なかったが、デミルチだけは理由を知っていた。

その後、デミルチはトルコ最大の都市イスタンブールに移動し、そこでタクシー運転手として働き始めた。

この頃のデミルチは温厚で穏やかな性格だと周囲の人間は認識していた。

だが、デミルチの内心は過去にされた恨みから、家具ディーラーや地下がある家具店に対する憎しみに満ちていた。


1998年5月5日、デミルチはイスタンブールのレイス地区にある家具店に入店する。

家具店の店主アリ・オスマン・ベルデック (♂) が客だと思いデミルチに近付いた。 

そして、地下にも商品があるとデミルチに言うと、2人は地下に降りた。

そこで、デミルチは背後からベルデックの首を撃って射殺した。


同年6月4日、デミルチは家具店の地下で店主のメフメット・カヤツズ (♂) を殺害する。


同年6月6日、同じく家具店の地下で店主のジェラル・ピナーゴユー (♂) を殺害する。

警察は3人の店主には接点はなかったが、同様の方法で殺害している事から同一犯によ犯行だと考えた。

ただ、現場に指紋や証拠は見つからなかった。

この頃にはデミルチは『The Furniture dealers’ Killer (家具ディーラーズ・キラー) 』と呼ばれるようになっていた (トルコ語では『Mobilyacikatili』) 。

だが、最初の犠牲者ベルデックの携帯電話等から犯人はファタサの町に住んでいる事が判明し、そして、デミルチが逮捕された。

デミルチは自宅で逮捕されたのだが、抵抗せず非常に落ち着いていた。

デミルチはこれまで3件の殺人を認め、犯行に使用した銃を警察に渡した。

デミルチは自身が強姦された年齢 (11歳) の数だけ殺人を行う予定だったと述べた。


裁判でデミルチには死刑が言い渡されたが、後に終身刑に変更された (トルコはEUの加盟と共に2004年に死刑を廃止している) 



《殺人数》
3人

《犯行期間》
1998年5月5日~同年6月6日



∽ 総評 ∽

『The Furniture dealers’ Killer』と呼ばれ、3人の家具店店主を殺害したデミルチ。

デミルチは自身が11歳の時に家具店の店主に強姦され、その事が後の犯行へと繋がった。

その為、デミルチは標的を自分を強姦した相手と同じ家具店店主にしぼった。

強姦された事は悲劇であるし、それで恨む気持ちも十分理解出来る。

だが、強姦した相手を殺害するならまだしも (高齢者だった為復讐しようとしたがすでに死んでいたのかもしれないが) 、全く関係ない相手を殺害しており、全く同情出来ない。

また、自分が強姦された11歳の数と同じ数だけ殺人を行うという発想も理由も全く理解出来ない。

ただ、デミルチは同じく強姦されたハビルと互いに悲劇と秘密を共有し、絆は想像以上に強かったと思われる。

おそらく互いに唯一の心の支えであり、その唯一の存在が自殺してしまった事でギリギリの所で保たれた精神が破綻してしまったと思われる。

デミルチを擁護出来ないが、強姦した家具店店主も罪は深い (実際未成年に対する強姦なので犯罪ではあるが) 。