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シティ・アイシャ (北朝鮮)
【1992 ~ 】



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ドアン・ティ・フオン (北朝鮮)
【1987 ~ 】



2017年2月13日、マレーシアの首都クアラルンプールにあるホテルに滞在していた金正男は、午前8時頃にチェックアウトする。

そして、金は車に乗り、クアラルンプール国際空港に向かった。

金は10時50分のフライトでマカオに行く予定であった。

午前8時58分頃、金はクアラルンプール国際空港に着いた。

金は出発ロビーにある自動チェックイン機に向かった。

そして、自動チェックイン機の前に立つと、突如2人の女性に背後から襲われ、顔に液体を交互に塗られる。

その時間はわずか3秒足らずであった。

2人の女性は現場から走り去った。

午前9時6分頃、金は空港職員に自分がされた事を告げ、職員は金を医務室へ案内し、途中、警官を見かけた金は自分がされた事を説明した。

この時、金から強烈な化学薬品の臭いがした。

そして、
「具合が悪いので医務室へ行きたい」
と警官に3度告げ、警官は金を医務室へ連れて行った。

医務室に到着する頃にはすでに金の意識はなく、血と泡を吹いて倒れた。

すぐに金は市内の病院に搬送されるが、搬送中に死亡した。

金の死因は顔に塗られた液体であり、油に似たVXという最悪にして最凶の毒薬である事がわかった。


2日後の15日、犯人の女性が逮捕される。

1人はインドネシア国籍のシティ・アイシャ (25歳) 、もう1人はベトナム国籍のドアン・ティ・フオン (29歳) であった。

2人はそれぞれ別の薬剤を手に塗り、それを金の顔に塗る事で混ぜ、化学反応を起こさせたと言われている。

フオンは逃走前にトイレに行き、入念に手を洗った。

逮捕されたアイシャは

「殺人だなんて知らなかった」

と話し、フオンは

「いたずら動画の撮影だと思った」

と供述し、2人共殺意を否認する。

ただ、専門家によると殺害時の短時間での無駄のない動きは、とても素人とは思えず訓練されていると指摘している。


また、同年2月22日、警察はフオンがすぐにトイレに向かったのは、それを毒物だと認識していたからだと会見で発表した。

アイシャ本人の供述によると、同年1月初旬、当時、アイシャはマレーシアで出稼ぎの水商売をしていた。

そこに1人の男性がアイシャに声を掛けてきた。

その男性は
「日本のテレビ番組の撮影に来た」
とアイシャに話し、ジェームスと名乗り日本人だと話した。

ジェームスはアイシャに
「いたずら番組に出演しないか?1回で400リンギット (約1万円) 支払う」
と話した。

マレーシアの月収が約1万7000円といわれており、この400リンギットというのは大金であった。

だが、アイシャはジェームスが嘘をついていると思い、協力するかどうかすぐに決めなかった。

実はこのジェームスというのは本名リ・ジウという北朝鮮の工作員であった。

しかし、アイシャは翌日、ジェームスに協力を申し出、ローションを通行人の手や顔に塗る行為を繰り返した。

その度にアイシャはジェームスから報酬を受け取った。

結局、アイシャは金殺害まで13回このいたずらを行った。

その13回のいたずらの内、不思議な事に誰1人としてアイシャの後を追い掛けたり文句を言う人はいなかった。

フオンには別の北朝鮮工作員が接触し、アイシャ同様いたずら動画に参加を促し、フオンは快諾した。

フオンと接触したのはアイシャがいたずらで顔に液体を塗った被害者の1人であり、その為、いたずらされた人間の大半が北朝鮮関係者と言われている。

また、アイシャとフオンは互いに面識は全くなく、金殺害時に初めて知り合った。

アイシャとフオンを金殺害に導いたとされる4人の北朝鮮工作員は金殺害後に飛行機に乗り、北朝鮮に戻ったとされる。


同年10月2日、シャーアラム高等裁判所で初公判が行われるが、アイシャもフオンも尚、殺意を否認し続けている。


2019年3月11日、アイシャに対する起訴は取り下げられ、同日、釈放された。

釈放されたアイシャは会見で

「家族に会いたい」

と述べた。


同年5月3日、フオンは刑期を終え釈放された。



《殺害相手》
金正男


《犯行期間》
2017年2月13日




∽ 総評 ∽

金正男を殺害したアイシャとフオン。

北朝鮮側は金正男殺害を否認しているが、金正恩が目障りな金正男を殺害したのは明白なのでそこについては触れるまでもない。

気になるのは彼女たちが金正男とわかっていて殺害に至ったかどうかだ。

両者は「いたずら」動画の撮影と言われて事に及んだと主張している。

フオンは手にもVXは混ざり、すぐに手を洗いに行っているが、これは北朝鮮工作員に言われたのか自身でそうしようとしたのかわからない。

ただ、もし、自分でそうしようと考えての行動なら毒薬だとわかっていた事になるし、非情な工作員がわざわざフオンに「塗った後手を洗え」と言うだろうか。

工作員からしたらただ利用しただけの見知らぬ女性の命などどうでもよくないだろうか。

金殺害の防犯カメラの映像を見る限り、その手際の良さと素早い動きはとても素人には個人的には見えなかった。

だが、2人が単独で何の面識も恨みもない金を殺害するわけがなく (ただし、2人共元々北朝鮮工作員であった可能性も否定は出来ないが) 、殺意があったにしろなかったにしろ北朝鮮の工作員が殺害に導いたのは間違いないだろう。

裁判は先日始まったばかりであり、今後、事件について全貌が明らかになっていくと思われる。