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ダニエル・ペトリック (アメリカ)
【1991 ~ 】



ダニエル・ペトリックは、1991年8月24日、アメリカ・オハイオ州ウェリントンで生まれた。

父親をマーク、母親をスーザンといった。


ある日、ダニエルは水上バイクで事故を起こし、怪我を負ってしまう。

そして、その怪我の傷口からブドウ球菌による感染症を引き起こし、家で療養する事となる。

療養中、ダニエルは友人の家に行き、そこで『Halo』というゲームに出会う (主人公がエイリアンと人類の存続をかけて戦うシューティングゲーム) 。

ダニエルは元々ゲームをやった事がほとんどなかったが、『Halo』をプレイするとその魅力に取り憑かれ、自分もゲームを買いたいと思い始める。

ダニエルは両親に『Halo 3』を買ってくれるよう懇願するが、両親は過激な描写が目立つ成人向けのゲーム (『Halo 3』には年齢制限があり17歳以下はプレイ不可) に対してダニエルには相応しくないと考え、ゲームを買わなかった。

ある夜、ダニエルは家を抜け出し、こっそり『Halo 3』を購入した。

ダニエルは『Halo 3』に没頭し、休みなしでプレイし続けた。

それは18時間ぶっ続けてプレイした事もあった程であった。


2007年10月、スーザンが『Halo 3』に熱中しているダニエルを問い詰め、その事をマークに告げると、両親は勝手にゲームを買った事に怒り、ダニエルから『Halo 3』を取り上げた。

マークはダニエルが勝手にゲームをやれないよう『Halo 3』を金庫に仕舞い鍵を掛けた。


それから約1週間経った同年10月20日、ダニエルは金庫の鍵をこっそり奪い、金庫を開けた。

すると、金庫には『Halo 3』の他に9mm口径の銃が置いてあり、一緒に持ち出した。

そして、リビングでくつろいでいる両親に背後から近づき、2人に向かって発砲した。

マークは頭部を撃たれ、スーザンは頭部と腕、胸を撃たれて即死した。

ダニエルは両親を撃った後、無理心中に見せ掛ける為、銃をマークに握らせた。

しかし、少しするとダニエルの姉ヘイディが夫のアンドリュー・アーチャーと両親を訪ね家に来る。

慌てたダニエルはヘイディに

「両親が喧嘩しているから家に入らないで!」

と言って家に入らせなかった。

だが、家の中から呻き声が聞こえた為、ヘイディとアーチャーが家に入りその様子に驚きすぐに警察に通報した。

ダニエルは『Halo3』を手に取り、家のバンで逃走しようと試みるが、到着した警察に阻まれ車から引きずり下ろされるとその場で逮捕された。

その時、ダニエルは

「親父がお袋を撃ったんだ!」

と叫んだ。

マークは病院に運ばれ、治療の末、一命を取り留めた。


2008年12月15日、ダニエルの裁判が始まったが、陪審のいない裁判となった。

ダニエルの弁護士は
「彼はブドウ球菌の感染症を患い、ストレスによりゲームの影響を受け易い状態にあった」
と述べた。

また、
「長時間ゲームを行う事によって現実とゲームの境が曖昧となった」
と語り弁護した。

検察はこれに対し、擬装を試みている点を挙げ、狡猾でずる賢い犯罪者と反論した。

父親であるマークは証言台に立ち、
「撃たれた時、頭が麻痺し、自分の頭から血が吹き出るのが見えた」
と撃たれた時の様子を語り、その後、銃を握らせられ
「ねえ父さん、ここに父さんの銃があるよ、持って」
と語り掛けられたと述べた。


2009年1月12日、犯行当時、ダニエルはまだ16歳という事もあり、最低23年は仮釈放の可能性がない終身刑が言い渡された。

この判決は罪状の中ではもっとも軽いものであった。

この事件はゲームに対する依存症や暴力表現の強いゲーム等、様々な所で取り上げられた。

『Halo 3』を販売するマイクロソフト社は、事件を受けて
「この1件は悲劇的事件である」
と声明を述べるに留まり、事件やゲームについて詳細を触れる事はなかった。


最後に両親を撃つ直前に言ったダニエルの言葉で終わりたいと思います。

「目を閉じてみて。驚かせる事があるんだ」



《殺人数》
1人
(1人負傷)

《犯行期間》
2007年10月20日




∽ 総評 ∽

ゲームを取り上げられた事に怒り、両親を撃って母親を射殺したダニエル。

殺害動機はゲームを取り上げられた事によるものだが、これは以前紹介したケンダル・アンダーソンのプレイステーションを取り上げられた事で殺害に至ったのと酷似しており、動機としては安直で短絡的であり救いようがない。

未成年の少年にはゲームが全てであり、それを取り上げられた事で絶望に感じ、両親殺害に至ったのだろう。

ただ、ダニエルはゲームを金庫から回収し、それで終わればいいのにそれだけでは満足せず、一緒にあった銃をわざわざ持ち出し両親を撃つというのはいくらなんでも陰湿でやり過ぎだ。

弁護士は「ゲームのやり過ぎで現実と区別つかなくなった」と述べているが、そのゲームを好きでやっていたのはダニエル本人だ。

無理やりやらされていたわけでもなく、好き好んでやって現実と区別がつかなくなりませんでしたと言われても知った事ではない。

まともな人間は現実とゲームを完全に分けるのが普通であり、そんなのただの言い訳に過ぎないと思う。

こういった事件が起きると、必ずと言っていい程、ゲームや映画等が槍玉に挙がる。

実際、ゲームが元で口論となり殺人に至っているが、今回の場合はゲームの内容に影響されたとかではなく、取り上げられた事で殺害に至った (ただ、銃で撃つという所はゲームの影響が多少あるのかもしれないが) 。

私がわざわざ言う事ではないが、ゲームをプレイしたほとんどの人間が事件など起こさない。

事件を起こす起こさないは結局、その人物の人間性によるものであり、それでゲームを禁止したりするのは別の話しだ。

時間を忘れて没頭してくれるくらいプレイしてくれるというのは、販売会社からすればゲーム冥利に尽きるというものだが、販売元のマイクロソフト社は事件のコメントを控えた。

私もこれが正しい対応であると思う。

何か言うと非難を浴びるのは明白だし、事件でゲームを回収したり販売を止めるというのは違うと思う。

ただ、両親を撃った後、逃走を図る時に『Halo3』を持ち出している所をみるとよっぽど好きだったのは間違いないだろう。