ハリド・マスード (イギリス)
【1964 ~ 2017】
ハリド・マスード (出生名エイドリアン・ラッセル・エルムス) は、1964年12月25日、イギリス・ケント州ダートフォード地区で生まれた。
出生名のエルムスは母親の姓であったが、マスードが生まれて2年後、母親がアジャオという姓の男性と結婚した為、アジャオとなった (マスードは後にエルムスとアジャオの姓を使い分けるのだが、イスラム教に改宗した際にマスードと名乗るようになる) 。
マスードは母と継父と共にケント州タンブリッジウェルズで生活し、地元の男子校に通った。
マスードは学校のサッカーチームに加わり、明るく社交的で、周囲の友人達からはパーティー好きの人気者として通っており、当時の同級生によると、誰からも好かれる好青年であった。
その後、一家はウェールズ・カマーゼンシャーに引っ越すが、マスードは暴力事件等問題を起こすようになる。
その為、マスードは両親と疎遠になってしまう。
1983年11月、マスード18歳の時、器物損壊により逮捕される。
その後、出所したマスードは結婚し、イーストサセックス州ノージアムで住み始め、2人の子供にも恵まれた。
2000年、マスードは地元のパブで、ピアス・モット (♂) に対して怒りを露にし、刃物で切りつけ左頬に8cmもの傷を負わせる。
原因は人種差別を受けたとも、村の中でのけものにされたからとも言われているが、はっきりとしない。
ただ、モットの妻によると、モットは同僚をマスードから庇っただけだと述べている。
しかし、この暴行事件でマスードは逮捕され、刑務所に収監された。
2年後、出所したマスードは妻や子供を置いてノージアムを出ると、2度と戻る事はなかった。
そして、イーストボーンに移り住んだ。
マスードはイーストボーンでコカインやステロイド剤に溺れるようになる。
2001年頃からマスードは、急に怒り出したり人格が変わったりと情緒不安定になる。
ある晩、マスードはパブで当初は礼儀正しく過ごしていたが、ビリヤードをしていた2人の男性に因縁をつけ、キューで2人を叩きのめした。
2003年、マスードは男性の顔面を刺して逮捕され、6ヶ月もの間、刑務所に収監された。
その後、マスードは暴行や傷害等で何度も逮捕された。
マスードはイーストサセックス州ルースやノーフォーク州ウェイランド、ウェストサセックス州フォード3ヵ所で服役した。
2004年、この頃マスードはイスラム教に改宗した (と言われているが詳細は不明) 。
そして、ウェストサセックス州クローリーでパキスタン系ムスリムの女性と結婚した。
2005年11月、マスードはサウジアラビアへ移動し、民間航空総局で英語教師として働き始める。
2006年、再びクローリーに戻るが、2008年4月に再度サウジアラビアに移動した。
2010年、マスードはイギリスに戻り、首都ロンドン郊外のルートンでアフリカ系の女性と住み始める。
2016年、マスードは別のアフリカ系の女性とロンドンの東部に住み始める。
その後、マスードはバーミンガムに住んだ。
2017年3月、マスードはバーミンガムのレンタカー店で、ヒュンダイの車を借りた。
その後、ブライトンのホテルに泊まった。
同年3月22日14時40分頃、マスードはヒュンダイのレンタカーでロンドンのウェストミンスターへ向かった。
そして、ウェストミンスター橋南側の歩道へ突っ込んだ。
歩道には警察官3人を含む多くのの歩行者が歩いており、マスードは歩行者を次々とはねていった。
イギリス人女性エイシャ・フレイド (♀) は、子供を学校に迎えに行く為、歩道を歩いていた所を轢かれて死亡した。
アメリカ人のカート・コクラン (♂) は、結婚25年を記念してイギリスを訪れていた際に事件に巻き込まれ死亡した。
そして、少なくとも40人が負傷し、その内、数名が重傷や重態となった。
レズリー・ローズ (75歳♂) は、マスードの車に轢かれた事で重態となり、病院に運ばれるも翌日の23日に死亡した。
マスードはその後も車を走らせ、ウェストミンスター宮殿 (国会議事堂) 敷地外の柵に衝突し、止まった。
マスードは車から降りると、宮殿の敷地内に侵入し、たまたま居合わせたキース・パーマー巡査 (48歳♂) を刺殺した。
パーマーはこの日は非番であった為特に何も持っておらず武装していなかった。
マスードは駆けつけた私服警官2名に撃たれた。
マスードはすぐに救命処置が施されたが、撃たれた傷がもとで死亡する。
享年52歳であった。
事件後、イギリスはテロ警戒レベルを5段階の上から2番目まで引き上げた。
イギリス首相テリーザ・メイは、事件当時、議事堂内にいた為、すぐに車に乗り首相官邸に避難した。
議員や取材で来ていたジャーナリスト、遠足で訪れていた子供たち等、大勢が議事堂内に留まるよう指示が出た。
肝心のマスードの動機だが、本人が死亡した事もあり不明であった。
事件後、『IS (イスラム国) 』系通信社は、マスードのテロ行為を
「イスラム国の戦闘員が実行した」
伝えた上で
「有志連合の国を標的にせよ」
という指令に応じた結果だと主張した (ただし、イスラム国側がマスードに直接テロを行うよう指示したわけではない) 。
メイ首相は事件後、テロに屈しない姿勢を示す演説を行った。
このマスードによる事件は、ロンドンで発生したものとしては、2005年7月にロンドン同時爆破事件以来の大規模なテロ事件とされている。
《殺人数》
4人 (他負傷者40人)
《犯行期間》
2017年3月22日
∽ 総評 ∽
車で街中を走り、次々と人をはねたマスード。
マスードは車で次々と人を轢いたが、犠牲者のほとんどが車ではねられた事で負傷したというのはテロとしては非常に珍しい。
また、轢いた後に刺して回るというのが、日本で以前発生した『秋葉原殺傷事件』と非常に酷似している。
結局マスードの動機は不明だが、イスラム教に改宗している所をみると、自分勝手の正義を募らせ暴走したのだろう。
このマスードの犯行は、その後、イギリスで5月6月と立て続けに発生した連続テロ事件の口火を切った形となった。
マスードはイスラム国は声明を出したものの、直接の指示のもと動いたわけではない。
しかし、このマスードのように勝手に信奉してテロを単独で犯す人物が多く存在する。
そういう人物は『Lone Wolf Attacker (一匹狼の攻撃者) 』と呼ばれるが、近年増加傾向にある。
テロは今後も世界各国で発生し、無くなる事は決してないと思うので、未然に防ぐ方法に徹するしかなく、その対応を強化していくしかない。
コメント
コメント一覧 (29)
そうですね。
そういう部分でもかなりまともでないと言えます。
無闇に暴力を振るい、家族を捨てた身勝手なクズ男が起こした凶悪な事件。
自分が全ての元凶なのに自己批判できず。
「何故、俺の人生は上手くいかないんだ!!」「他者が自分(犯人)の幸福を邪魔しているぅっ!」
と何故か他人が悪い事に自動変換され
「俺の幸せを奪う奴(そんなモン居ない)は片っ端から殺してやるぅっ!」
と中二病のような幼稚で身勝手な怒りが炸裂しただけの事件に感じます。
サウジアラビアに行き、イスラム教に改宗までしたのに「一向に幸せになれない」事に業を煮やした情けない男の犯罪。
欧州ではテロが横行していますが、今回の事件は「秋葉原無差別殺傷事件」と同じ思考で実行された気がします。
そうですね。
クズな人間が起こした身勝手な事件に他ならないです。
衝動的犯罪者に多く見られる傾向ですね。
「自分は悪くない、他人や社会が悪い」と人のせいにします。
そのくせ自分の能力を過剰評価する。
私も犯行の類似性から『秋葉原無差別殺傷事件』に酷似していると思います。
そうとも言えるでしょうね。
これから増える可能性はありますね。
そうですね。
正義というのはかなり曖昧で、個々の判断考え方に委ねられる所は多いです。
ただ、正義をかざして他人を傷つけた時点でそれは正義でも何でもありません。
彼の場合は仰る通り正義かどうかも甚だ疑問ですが。
自分勝手で人のせいにする。
サイコパスの要素を大いに含んでいますね。
こんなやつに殺されたくないですね。
こういうテロリストは中々潰れにくく報復のためか、マス・マーダーが余計増える可能性もあるのです。 本当面倒くさい話ですよね? 後、ほかの記載を見たんですが、「北朝鮮ICBM」とか言うコメント本当に嫌な奴ですね? 荒らしたり何かして何がしたいのでしょうね?あのコメントで気分が悪くなる。
なかなか難しいと思いますが、ISを何とかしないとテロは減らないでしょう。
本人なりの考えがあるのでしょうが、私は人それぞれの考え方があると思います。
私のブログや他の方のコメントを読んでわざわざコメントを書くのにも労力が必要ですから。
この手合いはSOS を社会に発するのを恥ずかしがる傾向があるんですよね
亡くなりましたね。
トランプ大統領も相当怒りを露にしていましたが、日本も巻き込まれる可能性は残念ながら高いですね。
>RAさん
なるほど、その為にそれなりの仕事と給料を支払うのが最善の方法なのかもしれませんね。
帰って来るのは難しいでしょうね。
ただでさえ難しかったのに現在は更に難しいですね。
そうですね。
秋葉原の事件を思い出させますね。
彼の中で正義、完全に歪んだ正義ですね。
(以前)別の殺人者を調べていて辿り付いた人改め豚の川流れです。
>結婚しているのに他の女性と云々
記事を見ると2回目の結婚の前にイスラム教に改宗してますし、
そもそもイスラム教は一夫多妻を認めていて基本的には4人まで妻を持つことが出来るので、
同棲どころか4人までなら平行して結婚しても問題ないんですよね……
(※イスラム教が成立した時点では一夫多妻は珍しくないことと、
戦争によって寡婦になった女性の保護・男女比率の不均衡による女性余りを防ぐ等という事情はありますが)
ついでに、正当な理由があれば(イスラム法学者に申し出て正当な理由かどうかを判断してもらう必要がありますが)5人目以降の妻を持ってもOK。
もっとも、全ての妻を平等に扱わなくてはいけないので、実際にそれが出来るのはある程度資産がある人間だけですけど。
お久し振りです。
なるほど、そういった事情であれば問題ないのですね。
イスラム教というのは凄いですね。
多妻を普通に認めている。
ただ、イスラム圏ならばいいですが、イギリスでは流石にまずいでしょうね。
先進国は重婚を認めておらず、違反者にはそれなりの刑罰が科せられるようです。
しかし!抜け道があります・・・・・正妻を1人に絞り、残りの妻とは養子縁組をしてしまう事です。
※養子縁組した女性と夫婦間交渉が確認されると不適切な関係として養子縁組を解除されるようです。
「殺す」凶悪犯罪者や国も残虐ですが、凶悪犯罪者を助ける人権派団体=凶悪犯罪者擁護集団も殺された被害者や遺族の心情も省みない残酷ではないかと思います。
家族や愛する人を殺されても犯人を「許す」遺族が矮小ながら存在します。
人権派団体=凶悪犯罪者擁護集団はコレを美談として扱いますが私としては
「殺された家族に対する愛情が薄い」だけにしか映りません。
誰かを心の底から憎む感情を持てない人が、誰かを心から愛する事が出来るワケありません!!
※逆に許した遺族が家族の殺害を依頼したのでは?と勘繰りたくなります。
少ない事は少ないでしょうね。
人口が爆発的に増え続けている現代、一夫多妻の必要は全くない。
今の社会においてそれでも一夫多妻を推奨するのであれば、それはただ男の欲望に過ぎない。
養子縁組ですか、なるほど。
どうしても一夫多妻したいのであればそういう方法もあると。
仰る通り違うベクトルの残酷さはありますね。
確かに殺人犯を許す遺族はいます。
それはそれでいいと思いますが、他人がどうこう言う事ではありません。
私も仮に家族が殺されたらとても許せないですね。
以前掲載したロニー・ガードナーは、弁護士の男性を殺害したのですが、その弁護士が死刑反対派だったので、妻と娘がそれを尊重し、ガードナーの死刑に反対していました。
私にはとても真似出来ないですね。
とんでもないです。
また他にありましたらコメント下さい。
そうですね。
各地でテロが頻発するようになってますね。
パリの事件はいずれ掲載しようと考えていました。
しばらくお待ち下さい。
きのうの銃乱射事件のニュースを見てると地獄絵図ですごく具合が悪くなり、眠れなくなりました。しかも59人殺して歴代2位の記録を打ち出してしまいましたね。
話は変わりますが、パリ同時多発テロからもうすぐ2年たちますね。
そういうこともあって、パリの同時多発テロも掲載してください。
明日の記事も楽しみにしています。
季節の変わり目ですね
お体に気を付けて、これからも連載を続けてくださいね。
これからもよろしくお願いします。
こんばんは。
私も見ましたがまさに地獄絵図でしたね。
歴代2位になりましたね。
正直1位と2位の記録は今後抜かれないと思っていたのですが、こうもあっさり抜いてしまうとは。
パリ同時多発テロももう2年なんですね。
いずれ掲載しようと以前から思っていたのですが、延び延びになってしまいました。
今度改めて調べてみます。
気を使って頂き誠に恐縮です。
アナンシさんも体調にはくれぐれもお気をつけ下さい。