マイケル・キング (アメリカ)
【1971 ~ 】
2008年1月17日、アメリカ・フロリダ州サラソタ郡に住むデニス・アンバー・リー (1986年8月6日生まれ) は、幼い子供たちと家にいた。
午前11時21分、デニスは仕事中の夫ネイサンに電話を掛ける。
会話を交わした後、デニスは天気が良いので窓を開けた。
午後3時半頃、ネイサンが家に帰ると、窓が開いていたので閉めた。
だが、子供たちはベビーベッドで寝ていたが、デニスはいなかった。
デニスが幼い子供たちを置いて家を出るはずもなく、何か事件に巻き込まれたと考え、ネイサンは911に連絡した。
ネイサンが911に連絡したのは午後3時29分であり、その後、デニスに関する目撃情報が午後6時30分までに5件入る。
しかし、この5件は911のそれぞれ別の人間が受け取り、同じ事件と思わなかった為、意思疏通がスムーズにいかず、連携が上手くいかなった。
その内、午後6時14分にかかってきたものはデニス本人からであり、犯人の携帯電話からかけたものだった (後にこの電話が裁判の重要な証拠の1つとなった) 。
午後6時半にジェーン・コワルスキー (♀) の携帯電話から911に連絡が入る。
コワルスキーは、道を歩いていると、男性の車に女の子が引っ張り込まれているのを目撃する。
コワルスキーは女の子が今まで聞いた事もない恐ろしい叫び声を上げていたと述べた。
実はこの女の子というのはデニスであり、コワルスキーはこの時、子供の誘拐を目撃したと思って連絡したのだった。
男性がデニスを車に乗せると走り出したが、車は青色のカマロだと述べた (恐らく一瞬だった事と光の加減などで青色に見えたのだと思われる) 。
走り出した際、男性がデニスを窓にぶつけていた姿をコワルスキーは最後に確認した。
コワルスキーの911は、車がシャーロット郡へ走り、郡をまたいでしまった為、フロリダ州の911コールセンターへ回された。
その為、再び連絡が遅れる結果となった。
コワルスキーがデニスの事件の事を知ったのは翌日の18日であり、ニュースを見た事でわかった。
コワルスキーは警察にデニスの件について前日911に連絡した事を告げるが、その連絡が当局に正しく転送されていなかった事が判明する。
正しく転送されなかったのは、職員の怠慢が原因というのも判明した。
同日9時15分、デニスが行方不明となったと初めて連絡があってから約6時間後、デニス誘拐容疑でマイケル・キングが逮捕される。
隣人は午後2時頃、デニスの家に見知らぬ1台の深緑色のシボレーカマロが停まっていたのを確認していた。
キングは目撃情報と同じ深緑色のカマロに乗っていた。
逮捕されたキングはデニス殺害を認めた。
キングはデニスを誘拐した後、縛って車の中に連れ込んだ。
そして、しばらく車を走らせ、この時、キングの車を何人も目撃した。
その後、キングは従兄弟のハロルド・マクスロー (♂) の家を訪ね、マクスローからシャベルにガス缶、懐中電灯を借りた。
この時、隙を見てデニスはキングの携帯電話を取り、車から911に連絡した (6時14分に掛かってきたもので、この時のデニスの絶望的で悲痛なコールは、後に公開され多くの反響を呼んだ) 。
キングはフロリダ州ノースポートにある自宅にデニスを連れ込むと、強姦して殺害し、死体を浅く埋めた。
キングは犯行の数ヶ月前に配管工の仕事をしていたが、失業し、犯行時は無職であった。
結婚もしていたが離婚し、借金の為、家を差し押さえられそうになっていた。
同年1月19日、デニスの死体が発見される。
2009年8月24日、裁判が行われると、検察が数々の証拠を提出し、キングによる犯行が揺るぎないものだとした。
キングはデニスを強姦して殺害した自宅の部屋を「強姦室」と呼び、部屋にはダクトテープが常備されており、警察によって押収されていた。
弁護側はデニスは子供の頃に事故に遭い、頭を打った事で脳の障害に悩まされていた事が判明し、情状酌量を求めた。
同年9月4日、陪審員はキングに対する死刑の投票を行い、12対0で死刑を支持した。
同年12月4日、キングには死刑が言い渡された。
このデニス殺害事件は、911の連絡系統の不備を露にした。
もしかしたら助かる可能性があったデニスが、数々のミスが重なり最悪の結果を招く事となった。
その為、2008年4月24日、フロリダ州議会により『デニス・アンバー・リー法』が満場一致で可決され、911の連絡系統の見直しと、オペレーターの訓練と資格が必須となっている。
《殺人数》
1人
《犯行期間》
2008年1月17日
∽ 総評 ∽
何度も911に連絡があったにも関わらず、連絡系統の不備により殺害されたキング。
デニスは隙を見て911に連絡し、その様子は後に公開されており、その時のキングの悲痛な叫びを聞いたわけではないが、想像に難くない。
デニスはしばらくの間、キングの車にたらい回しにされ、その間、何人もの人が911に連絡し、デニス自らも隙を見て連絡した。
しかし、郡が違う為に管轄違いで時間が掛かったり、連絡のミスや5人の異なるオペレーターへの通報など、最悪な事が重なって殺害されてしまった。
きっちりと連絡が成されたら必ず助かったかと言われれば何とも言えないが、助かる可能性は十分にあった。
このデニスの死によりフロリダ州では新たな法案が通り、よりスムーズに事が進むようになった。
その事自体はとても素晴らしい事だが、出来ればもっと早くに気づいて行動を起こして欲しいものだと思う。
コメント
コメント一覧 (8)
不幸な偶然も勿論あったでしょうが、組織の連携が上手く取れていれば助かる可能性は大きかったのでは。
そうですね。
どこの国でも似たような事は大なり小なりあると思いますが、被害者が出てから初めてわかる事が多いですね。
しょうがないのかもしれませんが、そういう事なしで上手く機能して欲しいものです。
誘拐と云う緊急事態なのに職務怠慢で居られる神経が判りません!
この職務怠慢の職員はキングのデニス誘拐・強姦・殺人を幇助したようなモノです。
それと加害者弁護士は「脳に障害」で情状酌量狙い・・・・・
彼ら弁護士は脳障害が誘拐・強姦・殺人を誘発すると考えているのですかね・・・・・もし、そうだとしたら脳障害を抱えつつも真っ当に生きている人達に対する最大の侮辱です。
キングがデニスを誘拐・強姦・殺人に至ったのは自らの欲望であり、「強姦室」と呼称する部屋があったと云うのは誘拐・強姦を計画的に行っていたと考えられます。
凶悪犯罪者を擁護する人達(弁護士&支援者)にはリスクを負わせるべきです。
緊急機関には常に訓練を行い、緊急即応体制を維持して欲しいモノですね。
職務怠慢というのは人の生き死にが掛かっている仕事では勘弁して欲しいですよ。
人間なのでその時の気分や精神状態で適当になったのかもしれませんが、もっと真剣に対応しなけれはならないです。
仰る通り幇助に近いですよね。
仮に本当に脳障害があったとして、それが100%強姦や殺人を行うわけではなく、せめてその因果関係を証明してから意見を言って欲しいと思います。
「強姦室」と呼んでる自体ですでに異常者で計画的なのは明白。
何の酌量の余地もないと思います。
そうですね。
被害が出て初めて気付く。
しょうがないのかもしれませんが、本人からすればたまったものではありません。
仰る通り法律が出来て今後、こういったミスが減る事がせめてもの救いです。
唯一の救いはこいつに死刑判決が出たことくらいでしょうか?
おそらくいるでしょうね。
そうですね、こんな鬼畜外に出したらダメですよ。