image

















ステファニア・フォリーニ (アメリカ)
【1961 ~ 】



ステファニア・フォリーニは、1961年8月16日、イタリア・アンコーナで生まれた。


アメリカ・ニューメキシコ州で画期的な実験が行われる事となる。

それは、
「光や音の届かない空間で人間が1人で何日も過ごした場合どうなるのか?」
というものであった。

この実験は『PFE (Pioneer Frontier Explorations) 』と『NASA』の共同主催により行われ、この実験で得られたデータを火星探査に活かすのが目的であった。

この実験には候補者が20人いた。

その1人がフォリーニだったのだが、フォリーニはこの時、インテリアデコレーターとして働く27歳の女性であった。

フォリーニは科学の進歩に役立ちたいと考え、また、自身の限界を試してみたいと思い自ら志願したのだった。

そして、「内観的性質」と「精神的規律」を持っているという事で候補者の中でフォリーニが選ばれる事となった。


1989年1月12日、実験が開始された。

光も音もない地下150mの洞窟の中にフォリーニは笑顔で入って行った。

フォリーニには事前に何日間洞窟の中に入っているか知らされなかった。

洞窟の中に作られた生活スペースには十分な食料が用意され、テーブルや椅子、蛍光灯等も整備され、普通の生活空間と何ら変わりはなかった。

また、400冊の本やギター、絵画用具、外部との連絡を取り合う為のコンピューターもあり、時間を潰すには十分であったのだが、唯一存在しないのは「時計」であった。

通常、人間の脳は24時間周期で睡眠と覚醒を繰り返し、日の出日の入りで時間を感じる。

この実験が光の無い洞窟で行われたのは、日の出日の入りの無い宇宙空間において、人はいかにして1日の周期を決定するのか。

洞窟の中という疑似宇宙空間で時間感覚の変化を調査するのがこの実験の大きな目的であった。

そんな空間で過ごすフォリーニは、時間の感覚が全くわからず、その為、顕著に反応が現れる。

フォリーニは日に日に眠る時間が遅くなり、30時間起き続けたり、1日の感覚が42時間になった。

14時間睡眠をとったにも関わらず、たった2時間と感じたり、7時間半のインタビューをわずか1時間と感じるなど、完全に時間感覚が失われていた。

また、フォリーニの精神状態にも変化が見られ、コンピューターの2つのマウスを「ジュゼッペとニコレッタ」と名付け、友達として話し掛けたりした。

コンピューターを通じて外部の人と通じる事が出来たが、暇を潰す為に段ボールを切り抜いてそれをあちこちに飾ったりした。

更に、フォリーニは強固な精神と体の柔軟性を維持する為に定期的に柔道を行った。


同年5月22日、実験から131日が経過したこの日、ついに実験が終了した。

実験が終わり地上に上がって来たフォリーニに、
「今、何月何日?」
と聞くと、フォリーニは

「3月14日、または15日でしょ?」

と答えた。

フォリーニは4ヶ月以上も過ごしていたにも関わらず、2ヶ月の感覚しかなかったのだった。

診断を受けたフォリーニの健康状態は良好だったが、体重が17ポンド (約7.7kg) 減少し、ビタミンDが不足していた。

また、ある時点から月経周期が止まった事もわかった。

このフォリーニの実験は、その後の宇宙空間に大いに役立っている。

余談だが、このフォリーニが孤立した洞窟で過ごした131日というのは、ギネス記録である。


最後に地上に上がって来た際のフォリーニの言葉で終わりたいと思います。

「青白くそして細く見える」



《実験期間》
1989年1月12日~同年5月22日




∽ 総評 ∽

131日もの間、光や音の届かない空間で過ごしたフォリーニ。

フォリーニの実験は洞窟という光や音の届かない空間を疑似宇宙空間とし、今後の宇宙開発に大いに役に立てるというものであった。

フォリーニ自身は被験者側ではあるが、こんな実験に積極的に参加するというのは、いくら役に立ちたいと考えてたとしても少し異常な気がする。

この実験でわかる事は、人間というのは外界から全てを遮断されると、次第に時間の感覚が遅くなっていくという事だ。

しかも、その遅さはどんどん広がっていくのである。

多少の誤差ならもちろんわかるが、7時間半をわずか1時間にしか感じないというのはいくら何でも普通の感覚では考えられない。

私達は太陽から光を感じ、太陽が沈み夜を迎え1日を終える。

人間というのはそんな当たり前の事を遮断すると、時間の感覚を完全に見失ってしまうのである。

この実験をこのままずっと続けた場合、どうなったか気になる所だが、それと同時に非常に恐ろしさも感じてならない。