アイラ・デント (アメリカ)
【1948 ~ 1992】
アイラ・ファー・デントと夫ロバートには生まれて間もない子供がいた。
しかし、ロバートには定職がなく、アイラも家庭を顧みる事なく遊び歩いてばかりいた。
そんな2人の素行を問題視した当局は、夫妻から子供の養育権を取り上げた。
1969年、養育権はアイラの実母に渡る事となった。
この頃、ロバートは2度の窃盗により州立農場刑務所に収監されていたが、アイラはロバートに面会に行く。
そして、アイラはロバートに子供を取り戻すべく脱獄を促す。
アイラはロバートに私服を渡し、面会人の振りをしてアイラと共に刑務所から脱走に成功する。
そのまま車で子供のいるウィーロックを目指した。
途中、スピード違反を犯してしまい、警察に捕まりそうになるが、咄嗟に車を乗り捨てて危機を逃れた。
そして、ヒッチハイクを装い車を乗っ取ろうとする。
しかし、その時、先程スピード違反で捕まえようとしたハイウェイ警察に追いつかれてしまう。
すると、アイラとロバートは警官のケニス・クローン (27歳♂) を銃で脅して人質に取り、クローンにパトカーを運転させ実家に向かわせた。
だが、この頃にはロバートの脱獄と警官の誘拐事件として騒ぎは拡大し、周辺の警察署からパトカーが大挙して押し掛けた。
そして、クローンの乗るパトカーを追尾したが、クローンに銃が突き付けられている為、下手に手を出せない状況であった。
この事件にマスコミもすぐに飛び付き、2人が子供を取り戻す為にウィーロックを目指している事が新聞の1面にも大きく載った。
すると、世間の人々は夫妻に同情するようになり、市街地を通ると夫妻を応援する人が出て来た。
中にはビールを差し入れたり子供へのぬいぐるみをプレゼントする者も現れ、
「頑張れ!」
と書かれた横断幕まで用意する人も現れた。
また、長時間車内で共に過ごしたクローンと夫妻の間に奇妙な信頼関係が生まれ始めていた。
クローンは夫妻の話を聞き、大いに同情するようになったのであった。
車は子供のいるアイラの実家に到着した。
しかし、その瞬間、待ち構えていたFBIから放たれた銃弾によりロバートが射殺される。
そして、アイラもその場で逮捕された。
逮捕されたアイラは裁判で、アイラには懲役5年が言い渡された。
結局、アイラは念願の子供に会う事は叶わなかった。
刑期を終え出所したアイラは1992年、心不全にて死去した。
出所後、子供に会えたのかどのような生活を過ごしたのかはよくわかっていない。
余談だがこの事件は1974年『続・激突!カージャック』として映画化されている。
また、人質となったクローンは、映画のアドバイザーとして参加し、映画にも保安官役として出演している。
《殺人数》
0人
《犯行期間》
1969年
∽ 総評 ∽
子供を取り返すべく、警官を脅して実家に向かわせたアイラ夫妻。
アイラが暴挙に出た時、わずか21歳という年齢であった。
夫妻と警官のクローンは長時間車内で過ごす事により、クローンが夫妻に同情を抱き、奇妙な信頼関係を抱くようになった。
これは『ストックホルム症候群』と呼べるだろう。
夫妻の暴走が世間に知れると、少なからず夫妻に同情する者が現れ、応援する者も多くいた。
一見、親が子供を取り戻すというのは美談に見えるが、そもそも子供をほったらかして遊び歩いていたのはアイラ本人だ。
それが原因で子供を取り上げられ、納得がいかないと無理やり子供を取り返しに行くという行動は、自分勝手極まりなくとても擁護出来ない。
コメント
コメント一覧 (20)
そんな気はしますね。
育児放棄がなければ本当に悲劇の主人公でしょうから、その部分はマスコミにとっては必要ないですからね。
人質の警官は「子供を取り返す」という部分に同情したのでしょうが、今回は一般人ではなく警官というのが少し特殊ですね。
着替えて面会人のふりをしたくらいで脱獄できる刑務所にも問題あると思いますが……。
美談というのはさすがに無理ですね。
「子供を取り返す」という部分だけは良いのかもしれませんが、そもそも取り上げられたのは自分達のせいですからね。
仰る通りこんな簡単に脱獄出来る事に驚きを覚えますね。
育児放棄し、旦那は窃盗で刑務所。
本人は恐らく無職で金の工面も困り果てていた事でしょう。
私はヒネクレ者なので「母性に目覚めて」のような無償の愛情から"子供の奪還"を企てたとは思えないのです。
愛情からなら先ず"子供に逢いたい"が先立つと思うからです。
それなのに刑務所に収監中の旦那を脱獄させてまで"子供を奪還"を説いています。
管理者さまが「馬鹿な親でも愛情があった・・・・・・」一縷の光明で締め括るのとは真逆にゲスな考えしか思い浮かびませんでした。
マスコミの報道に問題があったとは思いますが前後の事情も知らずに犯罪者を応援してしまうアメリカの"幼稚な正義"には愕然とします。
※O.J.シンプソンの逃走劇でも同様の現象が発生しているので国民性でしょうか?
愚かな行動で結局、子供の親権は戻らないし旦那は射殺されてしまう。
別の意味で非常に憐れみを呼ぶ事件ですね。
真面目に働くというのは頭に毛頭なかったのでしょう。
理不尽さと手を離れて改めてやっぱり必要だと感じたのかよくわかりませんね。
>考える愚者さん
私も基本的には彼女らに同情の余地はないですね。
マスコミ報道はかなり問題ですね。
アメリカでは何故かこういう人間がヒーローみたいに扱われる事がありますが、全く理解出来ませんね。
出所後、犯罪を犯してないようなので、やっと自分のやってきた事に後悔と反省の念を抱いたのかもしれませんね。
テレビの廃墟特集で紹介されてました。
収監者は主に微罪の者で、共同生活をしながら農作業と聖書を中心とした教唆で、規則正しい生活と労働、健全な精神を身に付けさせるための矯正施設。だったかな。
後に、微罪以外の者も収監されたそうですが、能率が悪いので閉鎖されたそうです。
初期にはその性格から、他の刑務所より規律が緩めだったそうです。
日本で言うと、石川島人足寄場みたいなものですかね。
妻は、おままごとの様に子供を取り戻したあとの生活を語っていたそうで、事件後は何故こんな事になったのか分からない。酷い。と泣いてたらしいです。
逃走中も、マスコミや沿道の人に手を振ってたとか。
夫は、妻が子供を抱いて落ち着いたら刑務所に戻って残りの刑期を務めると言ってたそうですので、少しは現実を見れてた…のかなあ?
人質の警官は、子供を抱かせてもらう約束をしてたそうです。
2つに割ったホットドッグの大きい方を、今日は気分がいいという理由で妻から貰ったそうで、
無軌道で享楽的な何処にでもいるアメリカの若いカップルだった。と、元人質の警官がインタビューで話してたのを覚えています
詳細は知らなかったですが、そんな事になっていたんですね。
警官も相当2人に同情していたんですね。
唯一の救いは被害者がいなかった事くらいだと思います。
それにしても、簡単に脱獄出来ちゃう刑務所、人質にされてあっさり丸めこまれる警官、こんな毒親を美化して報道するマスコミ、乗せられて同情する民衆、みんなどうかしてますね。皆様の意見を見て考えが変わりました。
その可能性は非常に高かったでしょうね。
おそらく母親は孫を渡さないと思うので実力行使に出るのは間違いないと思います。
結構マスコミの罪は重い気がしますね。
ただ、もしかしたら世間の注目を集めてると途中でわかって警官を殺さなかったのかもしれませんが。
そこら辺のモヤモヤは巧く、映画にしてますね。監督の天才ぶりが判ります
映画のいくつかのシーン(夫妻のやり取りや警察官との下り、トイレの逸話)は、実話だそうです。
朝鮮戦争とベトナム戦争の端境期で、政府の各種統制が強化されていたことも、夫妻が妙に人気になった原因だと映画ではかかれていますね。
結構皆さんが『激突!2』を観ているのに驚きました。
かなり前の映画ですし。
私は『1』は好きで何回も観ましたが、『2』は昔に1度観ただけでほとんど記憶がないですね。
確かにアメリカはそんな感じですね。
子供の頃、『ダイハード2』という映画を観た時、最後、ブルース・ウィリスが奥さんをテロから守ってハッピーエンドになってましたが、その前にテロに飛行機墜落させられて何百人って死んでるんですよね。
「これって主人公はハッピーエンドかもしれないが、死んだ遺族はどうなんだ?」と子供ながらに思いました。
>タラさん
アメリカではそうなる事がありますね。
悲劇なのは子供でしょう。
この夫婦ではありませんよ。
仰る通り気になりますね。
お巡りさんは映画に出たくらいなのでそのまま普通の人生を送っていると思います。
※犯罪者として裁いておけばと思うのが唯一残念な点ですが...
仰る通り事件的にはそれほどでもないですね。
ただ「ストックホルム症候群」の例の1つとしてなかなか衝撃的ですね。