ヤヒヤ・ジャメ (ガンビア)
【1965 ~ 】
ヤヒヤ・アブドゥル=アズィーズ・ジェムス・ジュンクング・ジャメは、1965年5月25日、ガンビア・カニライで生まれた (現ガンビア・イスラム共和国) 。
ガンビアはジャメが生まれた1965年に、イギリス女王を元首とする立憲君主国としてイギリスから独立した。
1970年、ガンビアは共和制へと移行し、ガンビア共和国となった。
初代大統領はダウダ・ジャワラであり、ジャワラはアフリカ周辺の国家が強固な独裁制を敷く中、イギリスの影響で民主的な政権を築いていた。
1981年2月、チャールズ皇太子とダイアナ妃が結婚し、ジャワラはその席に出席した。
すると、大統領不在のガンビアで、ガンビア軍副将軍クコイ・サニャンがクーデターを起こす。
クーデターはセネガル軍の助けもあって鎮圧されたが、これ以降、国内の情勢は不安定となる。
そんな中、1984年、ジャメはガンビア軍に入隊する。
ジャメは軍内で頭角を現し、1989年に中尉に昇進する。
1994年7月22日、ジャメはジャワラ政権の腐敗と民主主義の欠落を理由にクーデターを起こす。
ジャメは無血軍事クーデターを成功させ、ジャワラから政権を奪い、ジャワラを追放した。
ジャメは民主主義をやめ、すぐに軍事政権を敷き国境を封鎖し、戒厳令を布告した。
1996年、ジャメは第2代大統領に就任したが、この選挙のやり方に海外から非難が殺到した。
2006年3月21日、ジャメがモーリタニア訪問中に国内で軍事クーデターが発生する。
ジャメは訪問を中断、すぐに帰国してクーデターを鎮圧する。
同年9月22日、ジャメは大統領選挙で3選目を果たす。
2007年1月、国内にHIV患者があふれかえっている事を懸念したジャメは、治療薬を作ったと大々的に発表する。
しかし、実際はハーブにバナナをすり潰しただけという治療薬とは程遠いものであった。
その無意味な自称治療薬をHIV患者に飲むよう強制した。
この治療薬に関して
「治療薬は何の根拠もなく作られたものであり、患者に期待をもたせる事でかえって危険にさらし、更に蔓延させる恐れがある」
と世界各国から批難を受けた。
もちろん治療薬は効果はなく、HIV患者が増える一方であった。
そこで、ジャメはHIVが増えている原因が同性愛者であるとし同性愛者を「害虫」と呼び、徹底的な同性愛者弾圧を敢行する。
2008年5月15日、ジャメは同性愛を禁止する法律を作り、国内にいる同性愛者に対し
『国外に退去するか、処刑されるか』
を選ぶよう通告し、この法案も世界各国から非難された。
また、ジャメは同性愛者だけではなく、反対勢力にも容赦せず、多くの罪のない人間を投獄しては拷問の末、処刑した。
2009年、ジャメが愛していた叔母が死亡する。
この死に対しジャメは、魔女の仕業だと考え、魔女狩りを始める。
魔女と勝手に決めつけられた女性1000人以上が拉致され、施設に収容された。
そして、異臭を放つ秘薬を無理やり投与され、呪術師から強姦された。
秘薬を投与された女性たちは幻覚を起こし、壁によじ登ったり奇声を上げたり等の奇行をきたした。
魔女狩りを恐れ、セネガルに脱出する女性が相次ぎ、その為、ゴーストタウンとなった村もあった。
魔女狩りを批判した野党代表をジャメはスパイ容疑をかけ逮捕した。
2011年11月、ジャメは大統領選挙で勝利し、4期目となった。
2013年10月2日、セネガルはこれまでイギリス連邦に加盟していたが、イギリスを批判して連邦からの脱退を宣言した。
ジャメは
「イギリスは象牙欲しさにガンビアに現れ、その後、アフリカ人を売り始めた」
「奴隷制を確立したイギリスに人権を語る資格はない」
とイギリスの事を痛烈に批難した。
同年11月14日、ジャメは1995年以来、友好関係を築いてきた台湾と外交関係を解消すると発表する。
これを受けて台湾もガンビアとの国交断絶を宣言した。
2014年3月6日、ジャメは英語を公用語から外すと宣言した。
同年12月30日、ジャメはドバイを訪問している間、ガンビア国内でクーデターが発生する。
しかし、クーデターはその日の内に鎮圧された。
2016年12月1日、大統領選で野党代表のアダマ・バロウに敗れ、テレビで敗北宣言を行った。
だが、その後、ジャメは
「大統領選は不正があったので受け入れられない」
と敗北宣言から一転態度を一変させ、大統領職に無理やり留まった。
2017年1月19日、ジャメの大統領の任期が切れると、バロウが隣国のセネガルにあるガンビア大使館で大統領就任式を行ったが、それでもジャメは大統領職に居続けた。
その為、国際連合安全保障理事会が、バロウを支持する決議に基づき西アフリカ諸国経済共同加盟諸国による軍事介入が始まった。
翌日の20日、ギニアの大統領かジャメを訪問して説得した為、更に翌日の21日に退陣を正式に表明した。
その日の夜、ジャメはガンビアを出て赤道ギニア亡命した。
ジャメの側近によると、ジャメは亡命の際に国庫にあった5億ダラシ (約15億円) を持ち逃げしたという。
∽ 総評 ∽
魔女狩りを行い、数万人の国民を虐殺したジャメ。
ただ、ジャメが任期中に内戦が起こっており、内戦では約200万人が亡くなったとされている。
ジャメも最後は他国に亡命しているが、失脚した独裁者は国内には居られない為、国外に逃亡する。
そもそも独裁者が上手くいかないのは、トップとしての能力が備わっていない事と、私利私欲に走るからだ。
このジャメもそうだが、混沌とした国内情勢の中で他にいなかった為、たまたま頭角を表し、能力がないので力と暴力で無理やり抑えつけるしかなく、そうなると反発を生むのは当たり前だ。
中国歴史上屈指の名君と誉れ高い『唐』の太宗・李世民は、
「欲というのは自身の体を食べるようなものだ。最初はいいが気付いた時には手遅れとなる」
と言っているが、まさにその通りで、欲求に走ったものは必ずと言っていいほど破滅の道を歩んでいる。
ジャメは実際に大統領選挙で勝利し、4選している事から国民からの支持がある程度高いのだろうが、こんな自分勝手な人間が長らく政権を維持している事が不思議でならない。
ただジャメは歴代の独裁者に比べれば小物感は拭えないが、そのやり方は独裁者らしい国民の事を考えない身勝手はものばかりであった。
新たに就任したバロウがどれほどの人物か知らないが、今後、ガンビアが発展する事を切に願う。
【評価】※個人的見解
・独裁力 ★★★★★★☆☆☆☆
・政治力 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
・軍事力 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
・虐殺数 数万人
《就任期間:1994年7月22日~2017年1月21日》
コメント
コメント一覧 (22)
こんな無教養な人間が政権を握っていたという事実が恐ろしいです。
比例はしないですね。
トップの器というのはかなり特殊で、頭が良いとか行動力があるとかそう言った事だけでは務まりません。
まあだからほとんどの人が失敗するんだと思います。
日本人が起こした事件で世界的に有名な事件はいくつもあるのに、日本人の事件は何故載せてないのでしょうか?
以前、何人もの方に同じように言われた事があります。
「世界の猟奇殺人者」なので日本がないのはおかしいと言われました。
その通りなのですが、日本人は掲載しないようにしてます。
理由は色々な方が様々なサイトで掲載しているので、私がわざわざ掲載する必要がないという事が1つ。
もう1つの理由は犠牲者や遺族に配慮してという事ですね。
私の記事を読んで思い出したくない事を再び思い出したりしないようにと思い、掲載しないようにしています。
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
独裁者が片っ端から潰して回るせいで、対抗馬もなかなか出てこないし。
そうなのでしょうね。
安易な事を言ったら殺されると思えば従うしかないですよね。
恐怖で支配する、しかし、そういう政治は必ず限界をきたして破綻します。
ただ、破綻までの期間はまちまちなので、その間被害は増えますけど。
怪しい匂いの薬とかバナナハーブとか。
こんな独裁者に占拠された国って、本当に悲劇ですね。
悲し過ぎますね。
トップが愚かだと泣くのはいつも国民です。
今から何百年も昔の話ならともかく、これが現代というのが非常におそろしいですね。
彼も恐ろしい人物でしたが君主としては優れていました。しかし結局のところ、独裁という体制が上手く働くこと自体がレアケースですよね。トップに上り詰めた時点では有能な人間だとしてもその地位自体に狂わされることもあるかと思います。裁かれないことも多い分、シリアルキラーよりタチが悪いかも……。
独裁というのは上手くいくのは難しいですね。
ただ、国民に対する政策では良い場合は多いですね。
中国の女帝則天武后 (武則天) も国民に対しては優しい政治だったと言われているし、ヒトラーの政策も現在では見習うべき点が多いです。
独裁の場合は外にエネルギーを向けるので、それで破綻する事が多いですね。
仰る通りシリアルキラーより質が悪いですね。
政治は何が何だから出来ると言う訳では無いのが分かりますね。
政治というのは思った以上に難しいのは間違いないですね。
有権者として「なんでもっと良い政治しないんだ」て思っている方は沢山いるかもしれませんが、実際やってみると相当大変だと思います。
余談ですがトロピコ5というゲームをやってると国家を発展させるのって難しいです…
その通りですね。
独裁というのは悪いイメージしかないですが、仰る通りトップが優秀だと国が急激に豊に発展しますね。
民主主義は何やるにも時間がかかり過ぎてもどかしい部分はあります。
まあ一長一短でどちらが絶対良いとは言い切れませんね。
そのゲームは知りませんでした。
昔、国を作り上げるというゲームをやった事ありますが、今ほどリアルでも本格的でもなかったですが、その程度のゲームでも難しかったですね。
仲が良かったようですね。
スポーツ好きとか個人の自由ですが、そんな事よりもっと政治とか真面目にやって欲しいものです。
彼が独裁者になっていなければエチオピアはもっといい国になってたかもしれないと思い、掲載をお願いしました。
その独裁者は知らなかったですね。
なかなかの独裁者っぷりですね。
今度調べてみます。
いつの時代の話なのかな、と思い、年度を見たら
2009年とあり、はぁっっ!?
となりました
なんかアフリカの独裁者ってちょっと強権的っていうんじゃなく、ほんと〜うに独裁者なんですね( ;∀;)
ぶっ飛んでいますよね・・・そのぶっ飛び具合についていけないです(涙)
独裁者と呼ばれるからには・・
私が考える独裁者とは「レベル」がちがうんですよね
アフリカならあり得る話ですが、これが国のトップなのですからたち悪いです。
そうですね、典型的な独裁者って感じですね。
ヒトラーとかスターリンとか国に対する政治はある程度考えてやる人物は多いですが、アフリカの独裁者は自身の欲求を満たす事に全てを捧げます。
まあ権力を握った瞬間、何でも思い通りにしたいのでしょう。