エルフリード・ブラウンシュタイナー (オーストリア)
【1931 ~ 2003】
1996年1月、オーストリアの首都ウィーンで、1人の女性が逮捕される。
女性の名はエルフリード・マーサ・ブラウンシュタイナー (1931年1月22日生まれ) といい、60も半ばに差し掛かった老婆であった。
1995年、エルフリードは使用人として働きたいという広告を出し、働き先を募集していた。
それを見たアーロイス・ピヒラー (77歳♂) が、エルフリードを雇う。
ピヒラーはすでに一線から退き、余生を楽しんでいた裕福な老人で、身の回りの世話を頼む為にエルフリードを雇ったのだった。
しかし、エルフリードを雇って5週間後、ピヒラーは死亡する。
ピヒラーの死体は検死に回され、調べてみると大量の「Euglucon (血糖値を下げる薬) 」と「Anafranil (抗鬱剤) 」が検出される。
また、ピヒラーが残した19万ユーロ (約2500万円) という遺産が、本来相続されるはずのピヒラーの甥ではなく、相続人がエルフリードになっている事に疑問を抱いた。
甥は警察にその事を知らせ、結局、遺書はエルフリードが偽造していた事が判明した。
エルフリードはピヒラー殺害を認めた。
エルフリードは入浴しているピヒラーをバスタブから引き摺り出し、薬で朦朧としているピヒラーに冷水を浴びせた。
そして、窓を開け、冬の外の外気を室内に通し、ドアを閉めてピヒラーを閉じ込めた。
だが、驚く事にエルフリードによる殺人はピヒラーだけではない事が判明する。
1992年、当時、エルフリードが住んでいた家の隣人フランチェスカ・コバール (84歳♀) に言葉巧みに接近し、預金通帳をコバールから受け取る事に成功した。
通帳には17万ユーロ (約2000万円) が入っており、それを奪った後、コバールを殺害した。
しかし、エルフリードはそのお金をカジノで使い果たし、1年も持たず使い果たしてしまう。
エルフリードは以前からギャンブル依存症であり、殺して奪った財産をほとんどカジノに使った。
1994年、エルフリードはフリードリヒ・ドッカー (64歳♂) と出会い、結婚する。
ドッカーはすでに仕事を辞め、余生を過ごしていた。
その後、新婚旅行に出掛け、その旅行先でエルフリードはドッカーを殺害する。
また、エルフリードは初めて結婚した夫をルードルフと言ったが、ルードルフは早くに亡くなっていた。
ルードルフは当時は病死とされたが、エルフリードが殺害した可能性が極めて高かった。
結局、エルフリードがルードルフの件で裁かれる事はなかった。
エルフリードの裁判はこぞってメディアが大々的に取り上げ、メディアショーさながらの様相を呈した。
エルフリードは逮捕された際は犯行を認めていたが、裁判では犯行を否認した。
エルフリードは金の十字架を掲げ、
「私は無実です」
と声高らかに述べた。
エルフリードはジャーナリストに笑顔で手を振り、終始ユーモアを織り混ぜながら落ち着いた様子で裁判に臨んだ。
1997年、エルフリードはピヒラー殺害で終身刑が言い渡された。
2001年、エルフリードは2つ目の終身刑が言い渡された。
2003年11月16日、エルフリードは収容先のシュヴァルツァウ刑務所で、脳腫瘍により死去した。
享年72歳であった。
最後に、最初の夫ルードルフ殺害の様子を聞かされた際のエルフリードの言葉で終わりたいと思います。
「太っている彼の為に (Eugluconで) 実験した」
∽ 総評 ∽
『Black Widow (黒い未亡人) 』と呼ばれ、最低5人は殺害したとされるエルフリード。
エルフリードによる犠牲者は最初の夫、資産家の2人と元恋人の2人の計5人とされるが、証明されたのは3人であった。
恐らくもっと殺害している可能性は高い。
このエルフリードのように金品目当てに殺害する女性殺人鬼は非常に多いが、このエルフリードの凄いところは、言葉巧みに接近し、資産を奪いそれをギャンブルで使い果たすところだ。
しかも、金額も何千万という莫大な金額であった。
エルフリードのように金品に執着する女性は、幼少の頃に貧しい生活を送っていた人物が多い。
その為、貧しさに嫌気がさし、お金が全てという考えになってしまう傾向にある。
エルフリードの幼少の様子がわからないので何とも言えないが、エルフリードはどちらかというと貧しさに嫌気というよりギャンブル依存症だった為、お金を求めたのであろう。
日本でも同様な事件が多く起こっているが、本当に恐ろしい限りである。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★☆☆
・残虐度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★☆☆☆☆
・特異性 ★★★★★☆☆☆☆☆
・殺人数 5人?
《犯行期間:1981年~1995年》
コメント
コメント一覧 (7)
遺言を書き換えるのはともかく、通帳を渡されるのは余程信頼を得ていないと出来ませんよね。上手く言いくるめたのか、それとも表面上は献身的に尽くしていたのか。どちらにしても怖い話です。
ギャンブルというのは確かに珍しいですね。
ただ、パチンコ等の依存症な年配女性を見ていると、あながちおかしな話でもないのかと思えますね。
女性の場合、その立場を利用して相手の心の隙間に入り込むのが多いですね。
柔和な女性を誰も殺人鬼だとは思わないですからね。
実際犯罪の9割は男性によるものですし。
その能力だけは羨ましいです。
毎回興味深く拝見させてもらっています。
人の心に取り入るのが上手いと良く合いますが、彼らシリアルキラーにとっては獲物を捕食するための擬態のようなものですよね〜。
献身的に振舞って見えても、それは全てを手にするための作業をしているだけのように思えます。
もはや人のようで、人でないような…。
快楽殺人者たちは、本当に興味深いですね。
上手いですね。
特にサイコパスは上手いですね。
確かに私も下手なので羨ましいですね。
>ロバートTレスラーさん
初めまして。
興味深く読んで下っているという事で、誠にありがとうございます。
そうですね。
昆虫や動物の擬態なようなものかもしれませんね。
もはや人ではないと思いますね。
私もこんなブログを続けているくらいなので、非常に興味深いですね。
しかし、爺さん婆さんのパチンコ好きは凄い人数居ますね。昼過ぎの仙台の駅前のパチンコ屋にトイレを借りに入ったら、見事に60代以上しか居ませんでしたよ。暇なのは分かるけど、何だかなぁーと思いました。
なるほど。
男性のシリアルキラーは狩りで、女性の場合は相手から奪う、つまり搾取という事になりますね。
パチンコ好きですよね。
仰る通りやる事がないからでしょうね。
何かなりたくても体力がないからしょうがないのかもしれませんね。