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ワシーム・デイカー (アメリカ)
【1977 ~ 】



ワシームは子供の頃から物静かな性格で、人付き合いが苦手であった。

その為、高校ではいじめを受けていた。

しかし、そんなワシームはIQ180もある天才で、わずか17歳にしてジョージア工科大学に飛び級した。

ワシームは大学では電気コンピュータ工学科に通った。

そんなワシームの趣味はペイントボール (アメリカで生まれたスポーツの一種で、参加者が炭酸ガスや窒素ガス、または圧縮空気などの圧縮ガスを利用した銃でペイントボールと呼ばれる小石サイズのペイント弾を対戦相手に向けて発射し勝敗を競うスポーツ) で、腕前はかなりのものであった。


1995年、ワシームは新たなペイントボールのチームに参加する事となる。

そして、そこにはロレッタ・スペンサー・ブラッツ (29歳♀) という名の女性がいた。

ロレッタは離婚歴のあるシングルマザーで、娘のクリスティーナ (10歳) を女手1つで育てており、ワシームとは12歳離れていた。

ロレッタはカウンセラーという職に就いている為か、気さくで誰にでも優しい性格であった。

そんなロレッタはワシームにも優しく接した。

女性に優しくされた事がないワシームにとって、ロレッタは特別な存在となっていく。


ある日、チームメイトとしてロレッタがワシームに
「私の事を守ってね」
と何気ない言葉をかける。

この言葉を歪んだ形にワシームは受け取ってしまう。


翌朝、ロレッタが職場に向かおうと家を出るとワシームが立っていた。

ロレッタが話し掛けると、ワシームは

「守るって約束したから」

と言った。

これにはロレッタは気味悪さを覚えたが、そのまま職場に向かった。

仕事を終え家に帰ると、タイミングを見計らったかのようにワシームから電話が来る。

「仕事場で溜め息ばかりしてはダメだよ。あと、昼に食べたハンバーガーはカロリーが高過ぎる」

という内容であった。

この日からワシームは一日中ロレッタの行動を監視するようになり、決まって夜には電話で1日の事を報告するようになる。

さすがにこれらのワシーム行為に嫌気がさしたロレッタは、ワシームを拒絶するようになる。

すると、ワシームのロレッタに対してのストーキング行為は過激さを増していき、1日のワシームからの電話は実に100回にも及んでいた。

困惑したロレッタはその事を上司の心理カウンセラーに相談し、電話の内容を録音するようにする。

ワシームは

「僕は何もしないよ。怖くないよ」

「僕は君を愛している」

など、常軌を逸した発言であった為、ロレッタは電話に出なくなる。

すると、それに怒ったワシームは直接ロレッタの家を訪ねるようになり、窓を叩いた。

「ここを開けろ!開けないと天罰を下さなければいけなくなるぞ!」

と叫んだ。

また、ロレッタの家の電話料金の請求書や郵便物のチェックは当然の事、事前にロレッタの家に侵入し、仕事で帰って来たロレッタを全裸で迎えた事すらあった。

ワシームはすでに完全に理性を失い、その言動行動は常軌を逸しており、典型的なストーカーとなっていた。

引っ越しも何度も行ったが、その都度ワシームは探り当て、どこまでも追い掛けてきた。


ある日、ワシームの電話にロレッタの娘クリスティーナが出た。

ワシームは

「お前なんかに用はない。母親を出せ!」

と言うと、クリスティーナはこれ以上電話をかけないようワシームに促す。

これに怒りを覚えたワシームは、ロレッタが仕事に行っていない時に家に侵入し、仕事中のロレッタに電話した。

驚いて家に戻ると、そこには銃をクリスティーナに突き付けているワシームが立っていた。

「君の娘は邪魔なんだ」

とロレッタに告げると、ロレッタはすぐに警察に電話した。

駆けつけた警官にワシームはその場で逮捕される。

逮捕されたワシームは、精神に異常をきたしていると診断され、精神病院に強制的に入院させられる事となる。


ワシーム逮捕に安心したロレッタだったが、住み慣れた街を離れ、30km離れた場所に移住し、カーメン・スミス (30歳) という名のシングルマザーと一緒に住む事となる。

スミスもロレッタ同様シングルマザーであり、ニック (5歳) という1人息子を育てていた。

スミスがワシームの事情を聞き、快く受け入れたのだった。


ワシームの魔の手から逃れ、新天地で幸せな生活が送れると思っていたロレッタだったが、ワシームは模範少年として過ごした為、完治したとされ、わずか半年で退院してしまう。

そして、ワシームはすぐにロレッタの居所を探し始める。

ロレッタは住む場所は変えたものの、職場は変えておらず (30歳のシングルマザーの再就職は難しい為) 、表面上は解雇された事になっていた。

ワシームはロレッタの職場に児童福祉局の局員を装い

「シングルマザーのロレッタさんに支援サービスをお薦めしたい」

と話し、電話を受けた同僚が、大事な話だと感じ、ロレッタが在籍している事を告げてしまう。

ワシームは早速ロレッタの職場に向かい、駐車場に停めてあったロレッタの車を荒らし、手帳から現住所と電話番号を入手する。

電話をすると、カーメンの息子ニックが出た。

ロレッタはニックからワシームがすでに外に出て来ている事を知る。

ワシームは再び邪魔な存在に気付き、排除しなければと考えるようになる。

そこでワシームは、検視官事務局のインターンという仕事を活かし、殺人の方法について掲載されている殺人マニュアルを熟読する。


同年10月23日、ワシームはロレッタが家に不在と知りながら侵入する。

すると、家にはスミスがおり、背後から忍び寄ると、首を絞めて殺害した。

その後、ニックが帰宅し、以前の電話で怒りを覚えていたワシームは、ニックをアイスピックで18回も刺した。

殺したと思っていたワシームだったが、ニックは奇跡的に助かった。


同年10月27日、ワシームは逮捕された。

しかし、この逮捕は、スミス殺害ではなく、ロレッタに対するストーカー行為のみであった。

警察も犯行はワシームで間違いないと踏んでいたのだが、決定的証拠が一切出なかったのだ。

結局、ワシームに下されたのは懲役10年が精一杯だった。


2009年、ついに決定的な証拠が見つかる。

犯行現場に残されていた体毛のDNA鑑定を行った所、ワシームのものと一致したのだ。


2010年1月、すでに出所していたワシームは、15年が経ち、スミス殺害容疑で再び逮捕された。


裁判が開かれると、ワシームはスーツに身を包み、弁護人を伴わずに法廷に現れた。

実はワシームは刑務所にいる間、持ち前の天才的頭脳で図書室にある法律に関する書物を読破しており、それを活かして自分で自分を弁護するつもりだった。

ワシームは体毛を採取する際、捜査員の冒したミスを指摘し、信用性に欠け、無効な捜査であると訴えた。

そして、検察側も数々の主張をワシームにぶつけるが、ワシームはそれを巧みな弁舌で全て論破していく。

裁判はワシーム優勢に進められるが、検察側は最後の切り札として被害者で生存者であるニック (この時22歳になっていた) を証言台に立たせる。

しかし、ニックが現れてもワシームには動揺が一切なかった。

ニックは、
「犯人の目の色は青かった」
と述べるが、ワシームは

「私の目の色は何色に見える?一目でわかる通り茶色だ。彼の発言は信憑性に欠ける」

と一蹴する。

裁判が進むにつれ、裁判の行方に世間が注目するようになった。

法廷には何台ものカメラが入り、ワシームはカメラを意識するようになる。

すると、ワシームは証人としてロレッタを呼んだ。

ワシームは事件当時の2人の写真をモニターに映し、自分達の関係性や、仲良く付き合っていたこと等、言及し始めた。

そもそもワシームの目的は無罪を勝ち取る事ではなかった。

法廷では証人として出廷した場合、弁護人の質問に黙秘は出来ず、必ず答えなければいけなかった (日本も同様) 。

しかも、弁護人は証人を自由に呼ぶ事が出来る。

通常の裁判はとは異なり、この裁判の弁護人はワシームであり、その為、ワシームは合法的にロレッタと会って会話出来る方法を選んだのだった。

その様子に裁判官は
「自分で何をしているのかあなたは分かっていますか?この裁判は殺人事件を裁く法廷です。いい加減にしなさい」
と発言し、余りのワシームの常軌を逸した行動や言動に呆れる場面もあった。


結局、ワシームには有罪判決が下され、第一級謀殺で終身刑が言い渡された。

判決を言い渡した裁判官は
「あなたは決して刑務所から出ない事を望みます」
と最後に話した。


最後に、ワシームが日記に綴った言葉で終わりたいと思います。

「私はロレッタを決して許さない。復讐せざるを得ない。彼女を殺さずに人生を壊してやる」



∽ 総評 ∽

執拗なストーキングの末、ルームメイトの女性を殺害したワシーム。

有名なストーカー事件といえば、以前に掲載したリチャード・ファーリーの事件がある。

ファーリーは同僚を執拗にストーキングし、1988年に殺害したが、この事件のおかけでアメリカではストーカーに対する法律が作られた。

しかし、このワシームの事件の特殊な所は、殺害されたのがストーカーされていたロレッタではなく、ルームメイトの女性であった所だ。

本人も日記に殺さずに苦しませると書いているので、その通り実行したと思われる (ただ、それなら娘を殺害した方がもっと苦しめる事が出来そうな気がするが) 。

ワシームは賢いが社交性がなく内気で、そんな性格の為、学生時代は全く女性に相手にされなかった。

これは、ストーカーに多くみられる典型的な性格であり、そんな女性に相手にされない人生を送ってきたワシームに、たまたま優しく接したロレッタを一気に好きになってしまい、たがが外れてしまった。

ワシームは弁護人を雇わず、自分で自分を弁護したが、同じく自分で自分を弁護した人物といえば、かの有名なテッド・バンディがいる。

バンディもその頭脳を活かし、検察側の意見を爽やかな弁舌と立ち振舞いでかわし続け、その姿はワシーム同様華麗に見える程であった。

ただ、バンディと違う所は、ワシームが自分の弁護をした理由が、ロレッタと合法的に話をする為に、法廷に呼び寄せたという事だ (もちろん自身の弁護という意味もあるが) 。

その理由は異常という他なく、ここまでくるとどうしようもない絶望感しかない。

しかし、ワシームはIQが180もあり、紛れもない天才であった。

その頭脳をもっと他の事に利用すれば、それなりの名の知れた人物となれた可能性が高く、それだけは残念でならない。



【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★☆
・残虐度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★★☆
・特異性 ★★★★★★★☆☆☆
・殺人数 1人
(他負傷者ニック)
《犯行期間:1995年10月23日》