林 過雲 (リン・グゥォユン 香港)
【1955 ~ 】
1955年5月22日、林國裕 (リン・グゥォユー) として香港で生まれた (当時の香港はまだイギリス統治下であり、林の香港名はラム・コールワイ) 。
林は小学校を卒業後、香港・深水埗区にある利瑪竇中学に入学し、同中学校理工夜学部でクーラーの手入れを勉強した。
中学校卒業後、林は父親が経営していた自転車屋に就職し、後に親戚のクーラー技師に弟子入りした。
1973年、林は鶴園街を歩いていた女子をナイフで脅し、公衆便所に入るよう脅した。
そして、便所に入ると女子の局部を無理やり手で撫でた。
その後、女子を解放したが、この件で林は逮捕される。
林は精神科医により「精神異常」と診断され、裁判で刑務所行きは適さないと判断された。
その為、林は青山精神病院に収容される事となった。
精神病院に入院して102日後、林は退院を許され、林友強 (リン・ヨウジィァン) に改名した。
1978年、林はタクシー営業許可証を取得し、正式にタクシー運転手として働き始める。
この時に名前を林過雲に改名した。
1980年、この年から林は夜間タクシードライバーとして勤務するようになる。
1981年、林は突然、写真を撮る事に興味を抱き、写真の撮影技術を研究した。
そして、林は殺人を始める。
1982年2月3日午前4時、踊り子である陳鳳蘭 (チェン・フォンラン 21歳♀) が仕事を終え、友人と軽くお酒を飲んだ。
そして、陳は帰る際にタクシーに乗車するのだが、このタクシーが林の運転するタクシーであった。
林は陳を自宅には送らず、酒に酔って目覚めない陳の首を電話線で絞めて殺害する。
自宅に戻った林は、陳の死体を応接間の床下に隠した。
翌日、林は陳の死体を床下から引きずり出すと、全裸にして撮影した。
そして、陳の財布に入っている500元 (約6万5000円) を盗み、そのお金で街へ出掛けて電気鋸を購入する。
そして、買ってきた電気鋸で陳の死体を7つに解体した。
その解体の様子を林は撮影し、切り取った生殖器はゴム容器に収納し、防腐剤を入れて腐敗を防いだ。
解体した陳の死体は家の近くの橋の下に燃やして捨てた。
同年5月29日午前5時20分頃、レジ係として働いていた陳雲潔 (チェン・ユンジェ 31歳♀) が仕事を終え、大雨の中、帰宅の為にタクシーを拾う。
運転手は林であり、陳の家に着くと林はナイフで脅して陳に手錠を掛けた。
そして、林は陳を手で絞殺する。
陳の死体を自宅に運ぶと、林は外科用メスで陳の解体を始める。
林は陳の乳房と生殖器を切り取り、同じく防腐処理をして容器に収納した。
他の死体は新聞に包み、麻袋に入れて砕いた。
陳の死体解体の様子も写真に収めた。
その後、自身のタクシーに死体を積み、山の斜面の草むらに捨てた。
同年6月17日午前4時、掃除婦の梁秀雲 (リィァン・シゥユン 29歳♀) が仕事を終え、雨の降る中、帰宅の為にタクシーを拾った。
タクシーの運転手は林であり、林は梁を殺害し、死体を家に運んだ。
林は梁の死体の解体作業を始め、1度作業を終えるが再び細かく切り刻んだ。
林は梁の腹部を切り開き、腸や内蔵を引きずり出し、それを口に含んだ。
しかし、味が合わなかったのか、食べるのを止めて死体を坑道の山の斜面の草むらに捨てた。
同年7月2日、学生であった梁恵心 (リィァン・フゥイシン 17歳♀) は宴会に参加し、午後11時頃、帰る為にホテルから外に出ると、停めてあった林のタクシーに乗車した。
林は梁をタクシーに乗せると、脅して手錠を掛けた。
梁は学校の事や将来の事、家庭の事などあらゆる事を林に話して命乞いをした。
しかし、梁の命乞い虚しく、林は梁の首を絞めて殺害する。
だが、林は梁の話を聞いた為に少しためらいがあったのか、梁はこれまでの被害者の4人の中で殺害されるまで最も長い時間生かされた。
そして、梁の死体を家に運ぶと、林は初めて屍姦を試み、その後、解体の様子を撮影した。
梁の死体は坑道の山の斜面の草むらに捨てた。
同年8月17日、林は私服警官によって逮捕される。
逮捕された理由は、林が解体作業を撮影した写真を現像の為に店に出した為、店のマネージャーが警察に通報したのだった。
林の家を捜索した警察は、生殖器や乳房などが入れられたゴム容器と、数々の写真、ビデオテープにポルノ雑誌を見つけた。
林の犯行が公になると、そのあまりの異常さから香港中を震撼させた。
また、犯行日に雨が降っていた事から林は『雨夜屠夫 (雨の夜の屠殺者) 』と呼ばれた。
1983年4月8日、林には死刑が言い渡された。
1984年8月29日、林は死刑から仮釈放のない終身刑に変更点された。
余談だが、この林の事件は1992年に映画化され上映されている。
また、この林の事件は『香港で最も衝撃的な事件』というアンケートで1位となっている。
最後に死体解体の様子を撮影し記録した事について警察に話した林の言葉で終わりたいと思います。
「厳粛な秘密」
∽ 総評 ∽
『雨夜屠夫』と呼ばれ、雨の夜に自身のタクシーに乗車した女性を次々と殺害し、解体して遺棄した林。
林はタクシーという仕事をいかし、利用客を殺害して解体するという鬼畜ぶりを発揮した。
乗ったが最後、生きては降りられない林のタクシーは、まさに『殺人タクシー』の様相を呈していた。
犠牲者もまさか夜中に安心して乗ったタクシーで殺されるのは夢にも思わなかったであろう。
林のように死体の一部を切り刻んで保存するシリアルキラーは多いが、そういうシリアルキラーの場合は食人や屍姦を得意とするが、林は一部を除きほとんどそれらを行わなかった。
林は1度死刑判決が出ているにもかかわらず、後に終身刑に変更された。
香港は1993年に死刑が廃止されたが、林が終身刑に変更されたのは1984年で、当時は死刑は普通に存置されており、これだけの事をやっておきながら終身刑に変更される理由が理解出来ない。
こんな異常者はさっさと処刑するにこしたことはない。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★☆☆
・残虐度 ★★★★★★★★☆☆
・異常性 ★★★★★★★★★☆
・特異性 ★★★★★★☆☆☆☆
・殺人数 4人
《犯行期間:1982年2月3日~同年7月2日》
コメント
コメント一覧 (19)
シリアルキラーの所持する地図の独白という形で進行する面白い小説なのですが、似たような事件が実際に起きていたとは驚きです。
実際する連続殺人犯に関する本を出版なされている平山先生の事ですから、この事件を知っていてもおかしくは無いですが。
それはさて置き、警察官やタクシードライバーなど、仕事の中に自らの犯行をカムフラージュ出来る人物が犯罪を犯すと非常に厄介な事になるんですね。
被告人が犯罪に慣れすぎて油断したのか、妙なドジさえ踏まなければ被害者がどんどん増えていた可能性があると思うと恐ろしい限りです。
情報はあまりないですが、家庭環境などには特に問題無さそうなので
平山夢明氏の作品はいくつか読んだ事ありますが、これは読んでないですね。
仰る通りこの林の事件はまさにその通りですね。
多分、平山氏も知っていたと思います。
そうなんですよ、生活の一部の中に殺人を取り入れられるとかなり厄介で、発見が遅れ被害者が増えてしまいます。
本当に捕まって良かったと思います。
>あすくさん
幼少の詳細があまりなかったので、記載出来ませんでしたが、家庭環境にはさほど問題はなさそうです。
仰る通り女性に振られたりといったトラブルが原因だと思われますね。
主人公の淡々とした静かな語り口が原因で、よく考えると残虐非道な事が起こっているにもかかわらず抵抗なくスラスラと読めてしまうという怪作でもあります。
興味と機会があれば是非。
そうですね。
今度時間がある時に読んでみます。
写真を現像に出して捕まるとか……ギャグですかね?
内容的には残忍で、タクシーに乗るのを躊躇いそうな事件なのに。
オマヌケキラーですね
さすが精神病患者です
私も記事を作っていて思わずツッコミましたね。
「写真現像したらそりゃバレるでしょ」て誰でも思いますよね。
まあ何か間抜けな所があるから発覚するので、それは良い事ですが。
タクシーというのは基本的に運転手と客2人の密閉空間なので、何が起きても不思議でないですね。
確かに普段にタクシーに乗っていますが、同様な事件が絶対起きないとも言えません。
こういう事件を知ると、タクシーに乗るのが少し怖くなりますね。
イギリス支配の時代であればまだ理解できるのですが、以前紹介されていた「ハローキティ」も確か香港でしたよね。
世界最大の死刑大国に帰属してて、何か矛盾を感じてしまいます。
もし中国本土ならこの事件は死刑確定でしょう。
仰る通りですね。
現代中国なら即死刑、しかも半年以内に執行でしょうね。
こんな人間、生かしていても何の意味もないと思うにで、さっさと処刑するにこしたことはないと思います。
撮った写真を後々眺めて悦に入る。
そう言った喜びがあったのだと思います。
もしくは衝撃的な写真を撮りたいが為に殺人を始めたという可能性すらありますね。
まあ恐ろしいという他ありませんが、日本ではまず大丈夫だと思います。
仰る通り、現代ならもしかして捕まらなかった可能性はありますね。
スマートフォンで写真撮れば現像する必要ないですし、パソコンに何枚も保存出来ますし。
記事の画像はサイモン・ヤムでは?
多分、ダニー・リーが製作した「羔羊醫生」(「八仙飯店之人肉饅頭」の前作にあたる)のカットかと。
ちなみに、サイモン・ヤムはこの事件の犯人最低二回演じているみたいです(二度めは確か、TV作品だったような)。
乱文失礼いたしました。
早速訂正させて頂きました。
実は当時、記事を作っていて異なる顔が2人いて、「角度とかで違うだけだろう」と思っていました。
やはりもう1人の方だったんですね。
非常にお恥ずかしい。
言って頂きありがとうございます。
日本語でテレビよりももっと詳しくせつめいされているものがないかなと探していたらこちらのブログに行き当たりました。
なんとも恐ろしい事件ですね。しかしなんどか死刑になりかけてもそれを運よくすり抜けて終身刑として死ぬまで生活保障されているというのはいつも思うのですが、なんだかなあと思います。死刑に出来ないのであれば自分で自分を始末するように仕向けて自殺しやすい環境にしてさっさと自分で自分を殺してしまうようにすればいいのにといつも思います。
だから収監された犯罪者が自殺したというニュースをみるといつも反射的にやったあという気分になります。
ヒストリーチャンネルで紹介されていたんですね。
恐らく番組の方が詳しく紹介されていたでしょうね。
私もそう思いますね。
殺された犠牲者は突然無惨に人生を奪われたのに、その加害者はのうのうと生きている。
私も自殺や他の囚人に殺されたと聞くと嬉しいですね。
「ひ・みつっ」
ですか!
こんなふざけたことしか言えないのに終身刑は軽すぎると思わない?
私はさんざん苦しませてから処刑するしかないと思うけどな?
軽過ぎますがどうしようもないですね。
まあ最近の風潮を考えればどうしようもないです。