エリック・アヤラ (アメリカ)
【1984 ~ 2009】
2000年9月、オレゴン州カイザーの警察署に電話が入る。
それは地元のマクナリー高校に通う1人の学生に対する連絡であった。
通報者はその学生が普段から
「金持ちのお坊っちゃん達がムカつく。今度学校に銃を持って来て撃つ」
と言っていたというのだった。
その発言を行っていたのはエリック・サルバドール・アヤラ (1984年3月10日生まれ) という16歳の少年だった。
通報を受け、警察はすぐにアヤラと接触し、話しを聞いた。
しかし、アヤラと話しをした警官は「特に問題点はない」として、特に何もしなかった。
アヤラと話した警官によると、アヤラは陰気な様子だったが、物静かな普通の年頃の少年に見えた。
しかし、それからわずか2ヶ月後の同年11月、アヤラは鎮痛剤を大量に飲み、自殺を図る。
アヤラは一命をとりとめるが、オレゴン州ポートランドにある民間の精神保険施設で検査を受ける事となり、そこで
「非常に多くの精神的な障害を抱えている」
との診断を下される。
2002年、アヤラはマクナリー高校を卒業する。
卒業後、アヤラはバーガーキングで働き始めるが、仕事を始めると薬を飲む事を止めるようになった。
2009年1月24日午後10時半頃、アヤラはポートランドのダウンタウンにあるナイトクラブへ向かった。
アヤラは半自動式ピストルと、9mmタンフォリオ (拳銃) で武装しており、パブの入口で待っている群衆に向かって銃を乱射する。
この銃撃でアシュリー・ローレン・ウィルクス (16歳♀) が死亡。
ペルー人のマーサ・パス・デ・ノボア (17歳♀) は撃たれた時は息があったが、病院に運ばれた後に死亡した。
その他、イタリア人のスザンナ・デ・スーザ (18歳♀) は、助かったものの、銃弾を胃と胸と首に受け、一時重体であった。
他に6人が負傷したが、負傷した6人の内、台湾人が1人、グアテマラ人が1人、エクアドル人が1人、フランス人が1人と、大部分が外国の交換留学生であった。
そして、一連の銃撃の後、アヤラは自らの頭を撃って自殺を図った。
アヤラはすぐに病院に搬送されるが、事件から2日後の26日に死亡した。
結局、アヤラの殺害動機は本人が死亡してしまった為、不明。
当局は突発的な暴力衝動によるものだと断定された。
余談だが、アメリカでの銃乱射事件というのは以前から何人も紹介している通り珍しくなく、また、被害者が2人というのもこの手の事件ではかなり少ない方である。
しかし、ポートランドは『全米で最も住みたい街』ランキングで1位に選ばれるほど、治安も良く非常に住み易い街として有名であった。
そんな平和な街では銃乱射事件自体珍しく、このアヤラの事件で『ポートランド史上最悪の銃乱射事件』と呼ばれる程であった。
∽ 総評 ∽
アメリカでの銃乱射事件は、前述した通り珍しくも何ともない。
ただ、アメリカでは2015年に至っては1年間で銃乱射事件が起きなかった州は、50州の内わずか5州しかなかったという異常事態である (日本で例えると、47都道府県の内4、5県だけという事になる) 。
ただ、上記のようにそれだけ起こっていればどこかしこで銃乱射事件が起きているイメージに思えるが、全米の広さと街単位で考えればもちろん起きてない場所の方が圧倒的に多い。
ポートランドはその中の1つであり、『環境に優しい都市』でも全米で1位、世界でも2位という素晴らしい街で有名であった。
アヤラは1度通報を受けたが、警察は問題なしとして何もしなかった。
もしこの時、何らかの対処をしていれば、もしかしたらこのような惨劇は起こらなかったかもしれない。
また、自殺を図った際も「多くの精神障害」を抱えていると診断されているにもかかわらず、その後、とくに何もしなかった。
今回の事件は、なるべくしてなった結果と言え、正直、周囲に責任があると思う。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★☆☆☆☆
・残虐度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★☆☆☆☆
・特異性 ★★★★☆☆☆☆☆☆
・殺人数 2人 (他負傷者7人)
《犯行期間:2009年1月24日》
コメント
コメント一覧 (8)
殺された人たちは何で殺されたかもわからない。死にきれないです。
ところで「罪を軽くするための精神鑑定」の存在意義ってなんなんでしょうね。
誰を救済するものなんでしょう。
被害者やご遺族になんの関係があるのでしょう。健常者と違って明らかに故意でない場合があるにしても常軌を逸した状況から精神鑑定につなげて減刑にする(求める)。
事故であることを除いて、加害者が健常者と精神異常者の違いで被害者側が救われるものってあるのかな?
っと皮肉めいた疑問をわざとらしくつぶやいてみました。
納得できないですよね
仰る通りですね。
犠牲者の遺族からしてみれば、相手が男だろうが女だろうが精神異常者だろうが子供だろうが全く関係ありません。
「な~んだ、精神病なんだ。なら殺してもしょうがないよね」なんてなるわけがない。
私も裁判に向けての精神鑑定は全く必要ないと思います。
それを利用して異常者っぽく振る舞う輩も現れるくらいなので、悪用される可能性があるのならなぜ止めないのか理解に苦しみます。
(それと殺人という行為は切り離して考えるべきだとは思いますが)
こういった人を単なる精神異常者ではなく、生きてきた環境、精神病の細かな症状、脳の異常の有無などをしっかり調べてデータとして残して彼のような人が行為に及ぶ前に適切な治療を受けられるよう役立てて欲しいですね
そうですね。
色々な因果関係が存在すると思うので、そのように活用するのは大事だと思います。
そうですね。
犠牲者にはご冥福を祈りたいです。
やはり、あの国は何がなんでも銃規制すべきですよ。
それがダメなら、心理検査を含めた運転免許の遥かに上をゆく厳格な試験を課してから入手できるようにするとか…。
貴ブログにも掲載されていたオマル・マティーンの事件が起きた際、某ニュース番組でここ数年におけるアメリカの銃による犯罪の発生件数を『事件の起きた場所をアメリカの地図に赤い点で表示する』という形で視覚化した事があったのですが、アメリカの地図が赤い点だらけになったのには目を剥きました。
全くその通りですね。
なんとしてでも銃規制すべきですが、100%不可能でしょうね。
銃の売上が財政に多大な貢献をしているのでまず、無理ですね。
仰る通り、せめてかなり厳しい免許にしたほうがいいですね。
けど、そうなると銃が売れなくなるのでどちらにせよ無理でしょうね。