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ヴェロニカ・コンプトン (アメリカ)
【1956~ 】



コンプトンはロサンゼルスで働くシナリオ・ライターであった。

シナリオ・ライターと言っても、無名で名が知られていないるわけではなかった。


そんなコンプトンに、ある大物俳優が主演する予定の、ミステリー映画の脚本が依頼される。

またとないチャンスにコンプトンは全力で執筆活動に取り組んだ。


しかし、そんなコンプトンの気持ちとは裏腹に、脚本は途中で行き詰まってしまう。

脚本の内容は連続殺人が次々と発生するというものだったのだが、殺人の感覚にリエリティーがもてなかった。


そんな時、とあるニュースがコンプトンの目に留まる。

それは、当時、ロサンゼルス近郊を震撼させていた「ヒルサイド・ストラングラー (ヒルサイドの絞殺魔) 」のアンジェロ・ブオーノとケネス・ビアンキが、とうとう逮捕されたというニュースであった。


コンプトンはこれはチャンスだと考え、脚本のネタになると拘置所に電話をかけた。

コンプトンはビアンキと電話で話す事ができ、殺人について聞いた。

そして、自分が書いている脚本の内容をビアンキに教えた。

すると、その内容を聞いたビアンキは子供騙しだと全てを否定した。

「私が書くのはあくまでフィクション。あんな男のことなんか忘れるべき」

そう思ったコンプトンは、連続殺人事件の資料を全て処分した。


しかし、コンプトンの心の中で、ビアンキの存在が大きなものになっていた。

ビアンキの事が気になってしょうがなくなっていた。


そして、コンプトンは再びビアンキに電話をかける。

すると、ビアンキは
「俺を感じるんだ。ケネス・ビアンキという人間をお前の全身でな。俺はお前を感じたぞ。お前、誰かに虐待されただろ」
とコンプトンに言い出した。

事実、コンプトンは幼い頃、実の兄に毎日のように虐待されていた。

12歳の時には売春組織に誘拐され、8ヶ月も監禁されるという経験もあった。


誰も知らないはずの自分の過去をビアンキに見抜かれたコンプトンは、心が揺さぶられてしまった。

そして、ヴェロニカはいつの間にか、ビアンキのことばかり考えるようになっていた。


ある日、コンプトンの脚本について、殺人の描写が子供騙しだと却下されてしまう。

コンプトンは良い脚本を書かないといけないという気持ちと、それが出来ない現実の辛さから逃げるように、ドラッグに手を出してしまう。


そんな精神的に追い詰めれたコンプトンは、頼れるのがビアンキしかいないことに気付く。


ビアンキと対面したコンプトンは、自分がドラッグに溺れている事を打ち明けた。

この時、コンプトンはビアンキに完全に支配されていた。

それからコンプトンは毎日欠かさずビアンキに会うようになった。


ビアンキはそんなコンプトンに
「一緒に住まないか?」
と言い出す。

コンプトンが

「どうすればいい?」

と聞くとビアンキは
「お前の脚本、あの通りに殺人を実行するんだ」
と言い出す。


コンプトンの書いていた脚本の内容は、若い女性が次々と殺害されるという内容であった。

遺体には男性の体液が残されており、犯人逮捕は時間の問題だと思われた。

だが、犯人は一向に捕まらない。

なぜなら、真犯人は女性だったからだ。


その内容を利用しようとしたビアンキは、コンプトンに、自分の体液を隠した本を渡した。

そして、コンプトンに女性を殺させ、その女性の膣内にビアンキが渡した精液を入れろと指示する。

ビアンキの狙いは、自分と同じ手口の殺人事件を世間に起こさせ、逮捕されたビアンキは実は「ヒルサイド・ストラングラー」ではないということで、警察を混乱させようとしたのだ。


そして、ビアンキはあわよくば犯人は他にいると、主張するつもりだったのだ。

そうすれば自分は釈放されるとコンプトンに命令する。


1980年、ワシントン州べリングハムという町のバーで、コンプトンは1人の女性に目をつける。

コンプトンはバーでその女性と一緒に酒を飲み、意気投合する。

そして、コンプトンはその女性にホテルで飲み直そうと告げ、用意していた部屋に女性を連れ込む。


部屋に連れ込むなり、コンプトンはその女性に飛び掛かり、一心不乱に女性の首を絞めた。

しかし、素手で絞め殺すにはコンプトンは非力すぎ、女性は逃げ、すぐに警察に駆け込み、コンプトンはあっさり逮捕されてしまう。


コンプトンは第一級殺人未遂で起訴され、裁判でコンプトンには終身刑が言い渡された。

しかし、コンプトンはこの判決を喜んだ。

これでビアンキと同じ人間になれると、純粋に喜んだのだ。


だが、ビアンキはコンプトンが逮捕された直後に、コンプトン同様、ビアンキのファンと獄中ながら婚約した。

ビアンキからしてみれば、コンプトンを「使えない女」程度しか思ってなかったのであろう。


2003年、コンプトンは仮釈放され、現在は人知れずひっそりと暮らしている。



∽ 総評 ∽

連続殺人鬼に憧れ、意のままに洗脳されて殺人まで犯そうとしたコンプトン。

ビアンキはコンプトンの幼少時の虐待を見抜いたが、たまたまだったのか、別に外れてもいいから適当に言ったのか、異常者だから解ったのかわからない。

ただ、コンプトンはその事で完全にビアンキの虜になってしまった。


コンプトンのような人間を「プリズン・グルーピー」と呼ぶ。

犯罪者、特にシリアルキラーのような異常者に惚れる女性は多く、それほど不思議なことではない。

ただ、殺したのならまだしも、未遂で終身刑というのは重いような気もする。



【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★☆☆
・残虐度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★☆☆☆☆☆
・特異性 ★★★★★★★☆☆☆
・殺人数 0人

《犯行期間:1980年》