リチャード・チェイス (アメリカ)
【1950~1980】
1950年5月23日、カリフォルニア州サクラメントの中流家庭の家に生まれた。
少々内気ではあるが、ごく普通の子供だったが、12歳の頃に、母親の精神状態が不安定になる。
「浮気をしている」
「麻薬をやってる」
「私に毒を盛っている」
などと夫をなじった。
毎日のように続く両親のいさかいを聞き、チェイスの心は次第に蝕まれていく。
ハイスクール時代から酒を飲み、ドラッグを乱用する。
卒業後は一応、職についたが長続きしなかった。
大学に進学してみたが、それも続かず、既に離婚していた両親の家を行ったり来たりしてブラブラした生活を送る。
この頃のチェイスは、アルコール依存症と薬物中毒となっており、完全に社会からドロップアウトする。
更にチェイスは精神分裂症になり、精神病院に収容されるが、この院内でチェイスは異常な妄想を抱き始める。
それは、正体不明の何者かによって、自分の食べ物に毒物が混入され、その薬品が自分の血を粉状にする。
その薬物が投与され続ければ、自分の血はいずれ全て粉になり死んでしまう。
血が粉になる前に、新鮮な血液を補給すれば自分は助かる、という結論に至る。
このチェイスの発想は、 強烈な強迫観念に見舞われる典型的な精神分裂症の症状である。
精神分裂症の恐ろしい所は、重度の薬物依存症と同じで、自分にありもしない災難が降りかかると思い込み、自己防衛の為に、他人を傷付けたり、襲いかかったりすることである。
そんな重度の症状に冒されたチェイスは、まず、小鳥を噛み殺して血を啜ってみた。
その姿を再三目撃されたチェイスは、
『ドラキュラ』
という何のひねりもないニックネームが付けられた。
そして、次第に小鳥では足りないと思い、猫や犬を殺してバラバラにし、その血を飲むようになる。
しかも、この異常な息子を母親は見てみぬふりをしていただけでなく、犬を買うお金を工面するという有り様だった。
その後、ついにチェイスは人間を標的にすることを決める。
1977年12月29日、22口径のリボルバーを手に入れたチェイスは、車の中から男性を射殺する。
これは、いわば人を殺す為の予行練習だった。
1978年1月23日、女性宅に侵入し、その女性を射殺。
その女性は新婚の新妻で、妊娠中であったが、チェイスは腹部を切り裂き腸を引き出し、内蔵をめった刺しにした。
その後、ヨーグルトの空きパッケージで血をすくい飲んだ。
4日後の1月27日、チェイスは一軒の家に侵入し、3人を射殺。
その家の2歳にもならない子供を連れ去った。
翌日の1月28日、目撃者の通報を受け、チェイスのアパートに踏み込んだ警察は仰天した。
部屋中すべてが血みどろだったのだ。
冷蔵庫には、動物や人間の臓器が山ほど保存されていた。
生き血を飲むための道具も次々と見つかり、チェイスはミキサーで血と内蔵をミックスしたドリンクを作り飲んでいたのだ。
後で食べようと脳も取り出し、容器に保存しているという異常ぶりだった。
部屋に貼られたカレンダーには、犯行があった1月23日と27日の他に、その年だけで44日にマークがしてあり、チェイスは1年間で最低でも44人は殺すつもりだったのだ。
逮捕されたチェイスは、精神状態から責任能力の有無が問われたが、責任能力有りとされ、6人の殺害により、1979年、死刑判決を受ける。
1980年12月26日、死刑判決から1年後、チェイスはこっそりと溜めていた抗鬱剤を一気に飲み、死亡する。
明らかに致死量であったが、幻聴を抑える為なのか、自殺だったのかはわからない。
享年30歳。
『サクランメトの吸血鬼』と呼ばれた男のあっけない死であった。
∽ 総評 ∽
チェイスは酒とドラッグに依存したことにより精神分裂症になり、破滅の道を進んだのだが、チェイスの症状はその中でもかなり重症であった。
本人の談では、血が粉になるので、人を殺して血を飲むのはしょうがないと言っているが、では何故初めは小動物だったのか。
小動物を殺すこと自体も許される事ではないが、その血では飽き足らず、人間を殺して血を飲むようになったのは、明らかにチェイスの欲望が膨らみ、自らの欲求を満たしたいと思ったからに他ならない。
ただ、チェイスは真剣に血を飲むことだけに専念し、強姦もしなかったし、快楽で人を殺したわけでもなかった。
だからと言って許されるわけではないが、精神病での治療をもっとしっかりやっていれば、もしかしたらチェイスはこんな事件を起こさないですんだのかもしれない。
【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★☆☆☆☆
・残虐度 ★★★★★★★☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★☆☆
・特異性 ★★★★★★☆☆☆☆
・殺人数 6人
《犯行期間:1977年12月29日~1978年1月27日》
コメント
コメント一覧 (6)
ご忠告ありがとうございます。
確かに男性ですね。
単純なミスです。
ただ、殺害数は多分合っているかと思います。
ターゲットを決める時、玄関のドアに鍵が掛かっていたらやめるのもチェイスでしたっけ。
全てを把握しているわけではないので、足りなかったり、あえて省略したり、元々知らなかったりする部分はどうしても出てきます。
玄関の件は確かそうだったかもしれませんが、他のシリアルキラーだったかもしれませんね。
本当ですね。