image









マーカス・ウェッソン (アメリカ)
【1947~ 】



1947年生まれのアフリカ系アメリカ人のウェッソンは、身長わずか155cmしかない小男で、狂信的なキリスト教徒だった。


ウェッソンがどのような幼少を過ごしたかよくわかってないが、裕福で恵まれた家庭環境ではなかっただろう。

身長も低かった事から、コンプレックスも人一倍強かったと思われ、いじめなど受けていたとすれば、偏屈な性格になってもおかしくはない。


ウェッソンは『聖書』を独自に解釈し、奇怪なミサを行った。

また、吸血鬼をこよなく愛した。


24歳で最初の結婚をしたが、結婚相手の連れ子の姉妹とも奇怪なミサにより結婚。

その姉妹の姉との間に9人もの子供を作った。

また、姉妹の妹とも7人もの子供を作った。


その後、ウェッソンは妻たちを捨て、16人の子供たちを引き連れ、ウェストコーストを移動しながら生活した。


子供たちを学校には行かせず、『聖書』だけを読ませ、自分で考察したミサを執り行い、終末思想を刷り込んで子供たちを洗脳。

娘たちと近親相姦を繰り返し、16人の子供のうち、更に5人が父親の子を産んだ。


よくこういう話しを聞くと、
「なんでおかしいと思わないんだ」
と思うかもしれないが、以前の某芸人のように、普通の人でも心の隙をつかれると、誰でも簡単に洗脳されるのである。

まして、今回のウェッソンの子供の場合、生まれてからそれが当たり前という生活をしていれば、何の疑問を抱かなくて当然であろう。


ウェッソンは子の5人の娘に、

「児童相談所などが子供を保護しに来た時は、子供を殺して自殺しろ」

と命じた。

また、ウェッソンは娘たちに自分のことを

「ご主人様」

と呼ばせていた。


男の子供たちは空手道場に無理矢理行かされ、

「黒帯を取るまで帰ってくるな」

と言われていた。


1999年、ウェッソンは謎の行動を見せる。

フレズノに住居を構えた後、棺を10個買ったのだ。


また、ウェッソンは娘たちが成人した場合、子供を置いていけば、ウェッソン家から出てもいいという掟を作っていた。

その為、娘のうち2人は父との間に出来た子供を置いて、外の世界に飛び出した。

すると、出て行った娘たちは、
「自分たちがいかに異常だったか」
思い知る。


2004年3月12日、2人は子供を取り戻そうとウェッソンの家に押し掛けたが、娘の1人で特に狂信的なセブリナ (25歳) が強硬に反対し、ドアを閉めた上、内側にバリケードを築いた。


娘たちは警察に通報したが、警察は親権争い程度で私有地に立ち入ることはできなかった。


警察はウェッソンに外に出て話し合うよう説得を続けたが、2時間以上におよぶ説得の後、開いたドアから現れたウェッソンは血塗れであった。

警察がベッドルームに踏み込むと、セブリナをはじめ、17歳の女の子、7人の子供たちが、片目を撃たれて死んでいた。


その惨劇はあまりにすごく、ベテラン刑事でも目を覆いたくなるほどで、精神を病んで心療内科に通う警官もいたほどであった (この点はエド・ゲインの家に踏み込んだ警官と同じであるが、ゲインの部屋に入った警官はその後、精神的に立ち直ることができず神経衰弱で亡くなっている) 。


逮捕されたウェッソンは、

「子供を殺したのはセブリナで、彼女は殺した後、自殺したのだ」

と言って、自分は無罪だと主張した。

仮にそうだったとしても、セブリナはウェッソンの命令で子供たちを殺した可能性は高く、ウェッソンが無実というはまず考えられない。


結局、ウェッソンの主張は認めらず、9人の殺害とその他33件の罪で、2005年に死刑が言い渡され、現在も服役中である。

また、生き残ったウェッソンの娘にして妻たちや息子たちは、相変わらずウェッソンへの忠誠心を持ち続けているという。



∽ 総評 ∽

ウェッソンの事を猟奇殺人者と呼ぶのは、多少違和感があるかもしれない。

確かに家族を殺した可能性は高いが、それは身内だけの話しであり、赤の他人を殺して回ったわけでなく、家族殺しということになる。

ただ、やっていたことは猟奇的であり、生まれもっての天才的洗脳者であった。


人によっては本件のウェッソンのような事件を考えられないと思うかもしれないが、日本は基本無宗教な国柄なので、アメリカのようにキリスト教といった宗教が地盤として根付いている国の状況は到底理解できるものではない。

ウェッソンの事件のみならず、有名な『マンソン・ファミリー』や『KKK (クー・クラックス・クラン) 』もそうだが、海外ではこういった宗教絡みの犯罪が少なくない。


ウェッソンの失敗は、最初の時もそうだが、子供を置いていく代わりに母親達を解放したことである。

解放すれば世間とのギャップに嫌でも気付いてしまう。

もし、未来永劫家庭内での『王』に君臨し続けていたかったのなら、誰1人解放したりせず、常に監視の目を向けていればよかったのである。

ただ、ウェッソンの場合は、前述した『マンソン・ファミリー』や『KKK』』のような他人を傷付けるような事はなかったので、もしかしたらウェッソンは、小心者だったのかもしれない。



【評価】※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★☆☆
・残虐度 ★★★★★★★★★☆
・異常性 ★★★★★★★★★★
・特異性 ★★★★★★★★★★
・殺人数 9人
(家族全員)
《犯行期間:2004年3月12日》