ハロルド・シップマン (イギリス)
【1946~2004】
1946年生まれのハロルド・フレデリック・シップマンは、ごく普通のサラリーマン家庭に生まれ、ごく普通の成長を遂げた。
成績優秀な学生であったが、17歳の時に母親が死去している。
1965年に医大に入学すると、同時期に17歳の彼女とできちゃった結婚し、その妻との間に4人の子供を作っている。
1970年に大学を卒業。
僻地での診療所勤務を経て、4年後に開業医となる。
ここまでは順風満帆な人生を送っているかに思えたシップマンだが、一時期的に意識を喪失するなどの異常が現れるようになる。
なぜそのような症状が現れたのかは不明だが、謎の症状を恐れたシップマンは、症状緩和の為、医師という立場を利用し、偽造処方箋で自らモルヒネを投与。
しかしその結果、重度の薬物依存症になってしまう。
これが発覚し、勤めていた病院を解雇されてしまうが、医師会はなぜかシップマンの医師免許を剥奪せず「厳重注意」とし、精神科でのドラッグ依存のリハビリを命じるに留まった。
シップマンは更正プログラムを終了すると「完治」したとされ、1977年、マンチェスターのハイドという町の病院で働き始める。
シップマンの医師としての信頼度は非常に高く、ハイドの住人たちからは
「性格が温厚な紳士」
「良心的な診察をする働き者」
「優しいホームドクター」
という高評価を得ていた。
1993年には自身の診療所も開業した。
しかし、実際のシップマンは相変わらずのヤク中であり、しかも、自分の患者たちにも大量のモルヒネを投与し殺し続けてる連続殺人鬼であった。
その連続殺人は1975年にはすでに始めていたと言われ、シップマンは患者のカルテを改竄して「死が間近」と記載。
そして、モルヒネの大量投与で殺害するのが、シップマンのやり方であった。
シップマンが診察するようになってから、直前まで元気だった患者が死亡することが頻発していたが、シップマンの医師としてのあまりの評判の良さから、警察もシップマンの前科をたいして調べず、死体も司法解剖されることもなかった。
しかし、1998年、シップマンが殺した81歳の老婆の娘が、母親の遺書が書き換えられ、遺産の全てがシップマンに贈与されていることに疑問を抱き、警察に捜査を依頼。
老婆の遺体から、大量のモルヒネが検出され、シップマンは逮捕される。
これはシップマンが金銭目的で行った唯一の殺人だった。
シップマンは、1975年から98年にかけて250人をモルヒネで殺したとされるが、2002年に警察が
「シップマンによって、少なくとも215人以上の患者が殺された」
と発表する。
本人は全ての容疑を否認したが、15件の殺人が立証され、終身刑の判決が下った(イギリスには死刑がない)。
この裁判でシップマンに終身刑を言い渡した裁判官は、シップマンに
「犠牲者は、あなたの治療に最後まで笑顔で感謝していたでしょう」
と言い、その行いを厳しく非難した。
その後、服役中であったが、2004年1月13日、独房内で裂いたシーツで首吊り自殺した。
享年57歳。
「死の医師」と呼ばれた男は、最後はその命を自らの手で終わらせた。
∽ 総評 ∽
実はこのシップマンによる連続殺人は、今もって動機が謎に包まれている。
本人は自殺してすでに死んでいる為、真相は永久にわかることなはない。
最後の犯行を除けば、金銭目当でもないし、多くのシリアルキラーにみられる、殺しを楽しんでいる様子もなかった。
シップマンは、最期まで無罪を主張し、しかも捜査に一切協力しなかった。
精神科医によると「快楽殺人」ではなく、一種の不安を回避する手段だったのではないかという意見もある。
人間の生死を握ることで、心の隙間を埋めていたのかもしれない。
ただ、そんな理由で殺された人たちは、たまったものでないが。
唯一の救いは、他の快楽殺人者のようにじわじわといたぶって殺されたわけではなく、モルヒネの大量投与ということで、殺された人たちが一切苦痛を感じずに死んでいったことくらいであろう。
その殺害数は、警察の発表では215人以上であるが、実際は250人とも言われ、どちらにせよその殺害数は群を抜いている。
最後に行った金銭目的の殺人をしなけば、その犯行が明るみにならなかったかもしれない。
純粋にモルヒネによる殺人だけを繰り返していれば、一体どれだけの人が死んだのだろうか、考えるだけでおぞましい。
もし、この殺害数が本当であれば、個人の殺人記録としては世界のベスト10に入る凄まじい記録である。
ちなみに、本人が告白した殺害者数は508人である。
【評価】 ※個人的見解
・衝撃度 ★★★★★★★★★★
・残虐度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・異常性 ★★★★★★★★☆☆
・特異性 ★★★★★★☆☆☆☆
・殺人数 250人 (本人の証言では508人)
《犯行期間:1975年~1998年》
コメント
コメント一覧 (13)
個人で200人殺害するというのはそう簡単に出来る事ではありません。
仰る通り愚か者なのは間違いありません。
ヒロインの女医もモルヒネ中毒でした
自らモルヒネをうっているシーンがありました
ドラマは観ましたがそうだったんですね。
もう忘れてました。
俺も新聞で読んだり、ニュースで見たりしよるよ。2年前にあった、保育士殺害事件の犯人の男が、裁判で無期懲役が言い渡されたよ。平成は、今年で最後やな。次は、どんな元号になるんやろうか?
4年前の8月からなので、来年でまる5年になりますね。
毎日掲載しているので量は放題になってきています。
今の天皇が即位した時も恩赦がなかったので、今回もないとは思いますが、ない事を祈りたいですね。
幼少時代や同僚からの評判についての詳細が書かれている記事を見つけたので良ければ参考にして下さい
もう既に知っていたらごめんなさい
https://news.ameba.jp/entry/20130502-745
海外の記事では
https://www.biography.com/crime-figure/harold-shipman
ここと同じ事が書かれていました
どうも母親から特別溺愛されて育ったのもあり、学生時代から人を見下して支配することに快感を覚えていたようですね。患者からは評判が良くても同僚からは嫌われていたとか…
別に恥ずかしい事はないです。
かなり初期に作った記事なので、かなりざっくりした内容になってしまいました。
正直、最初の頃の有名な殺人鬼たちは作り直したいと思っています。
他人を見下すというのは何も良い事はありません。
ウェイン・ウィリアムズも周囲の人間が自分より劣っていると考えていました。
自信過剰で傲慢な性格になるので録な人間にならないですね。
親身になってくれた医者が家族以上に感じる事もあるのかもしれないが
どっちにしろ遺族側が騒ぐのは目にみえてるわけで非常に雑だ。
これだけ殺して金銭目的がこれのみというのも不可解で
どういう意図があったのか興味はある。
ただまぁ薬物等々人間としてはとっくに壊れているようだし
特に深い理由はなかったのかもしれない。
いずれにしても、もっと早くこういう(意図が解りやすい)犯行でボロを出していてくれれば、犠牲者がここまで増える事がなかっただろうにと思う。
普通はおかしいですよね。
仮に誰1人身寄りがないとしてもおかしいですよ。
そこなんですよね。
何故最後に金銭目的となったのか、不可解だし不思議です。
仰る通り何の意味もないかもしれませんし、実は金品を奪っていたかもしれませんね。
シップマンは決して裕福ではない家に生まれ、
母親から「あなたは特別な人間だ」と教えられ、
周囲から孤立しながらも学業優秀な子供として育ったようです。
そんな母親は末期の肺癌となりますが、シップマンは献身的に介護したそうです。
その時、往診に訪れた医師が、モルヒネの注射で母親の苦痛を和らげるのを見て、
自分も医師になる事を決意したようです。
彼は孤独を好み、周囲を見下した態度を取っていたようですが、
患者の評判だけは抜群に良かったそうです。
それも幸か不幸か、天賦の才だったように思えます。
恐らくシップマンは母親と共依存的な関係であり、
母親の死によって理性の轡が外されたのではないでしょうか。
頭脳が優れていても、社会性に乏しい人間というのも考え物ですね。
母親の影響は大きいですね。
凶悪犯は良くも悪くも母親の影響を少なからず受けます。
頭の良い人間は周りの人間がバカにみえてしまいます。
驕りと見下し、まあ録な人間になりませんね。